04 駐屯地司令との会談
恋愛を面倒だと感じたら、人間終わりですよね~
明朝食事(なお前日の夕食と同様に乾パンに缶詰だ)後、俺は城塞都市へ、シャルルッテを含む大尉たちは駐屯地に出発する。
「いろいろ世話になって、すまんな少尉。それと駐屯地に戻ったら一度警務隊の方に来てくれ」
シャルルッテを同乗させた大尉がいう。
「少尉、この度はありがとうございました。それと道中お気をつけて」
シャルルッテが小さく手を振りながらにいう。硬い寝台だったが、特に問題なく寝られたようだ。
「いえ役に立ててなにより。それとシャルルッテも色々気をつけて! 大尉、了解です。最短で明後日になると思いますが一度お伺いしますよ」
と挨拶してそれぞれの方向に出発する。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
急いで城塞都市に戻った俺は部下や驢馬たちと合流し、無事に物資を駐屯地に運び今回の輸送の任務を終える。上官に輸送任務の完了報告に加えて、ゴーレム馬の徴用があったことを報告する。そういえばゴーレム馬も返してもらわないと。それで大尉に使いを出したところ、三日後の休日の午後の半鐘まで待ってくれとのことだ。まあ尋問等で忙しいだろうしな。
次の二日間も輸送任務に従事し、休日になる。約束の時間に充分余裕を持って、駐屯地の中央近くの警務隊の建物に行き、大尉を呼んでもらう。下士官に案内されるが、なぜか建物を出る。向かった先は隣の駐屯地司令の建物だった。
「ローゼンベルク少尉をお連れしました」
部屋の前で下士官が声を掛け、入室が許可される。下士官が扉を開け、俺は入室する。下士官は一礼して扉を閉めて立ち去る。駐屯地司令のピュイヴェール少将、クリシュナー大尉それとシャルルッテがいる。
「紹介はいらんな。まあ座れ」
「はっ、失礼します」
俺の着席に合わせて、少将の当番兵が香茶を出してくれる。ああ、さすがに良い茶葉を使っている。
「少尉、今回の話し合いはだ、主に三つの題目だ。つまり謝辞と口止めと今後の方針の相談だな」
少将はあいさつもそこそこに話を始める。
「まずは少尉に感謝する。話を聞く限り少尉が偶然に城塞都市の門に居合わせなければ、このシャルルッテの身はどうなっていたか判らんな」
そういって少将は座ったまま、礼をする。
「まあまだ確証は得られてないのだが、本人の弁によると侯爵の次男だそうだ。なので政治的な判断により、この功績は公にできないかも知れん」
少将の言葉に、静かにお茶を飲んでいたシャルルッテが、カップを置いてしゃべり始める。
「わたくしは、あの様な卑劣な手段が他でも行われていないのかの調査を、それとこのようなことを二度と引き起こさないようにと、お願いいたします」
「その辺は今後の交渉しだいだな」
そういって少将は今後の侯爵との妥協案を説明してくれた。それは馬車に同乗していた精神魔法使いの魔術師の引き渡しと侯爵次男の領地での抑留とのことだ。併せてこの侯爵の件とシャルルッテの身分についての口外禁止を命じられた。
「口外禁止は了解です。それで残りの題目の今後の方針とは?」
「そうそう、それが一番の重要なんだが…」
少将は若干面倒くさげにいう。
「少尉、このシャルルッテと関係を続けるつもりか?」
「もちろんです」
「正直、面倒くさいと思うがな…、姫と付き合うのは」
「ちょっ!? わたくしとの付き合いは面倒なのですか?」
シャルルッテはかなり心外な様子だ。
「好きになった女性がたまたま姫だったのです。それがあきらめる理由にはなりません」
「まあ!?」
シャルルッテはにまにましている。
「シャルルッテは成人している。つまり建前上は自由に恋愛が可能だ。だが本音をいえば、おまえたちの関係を認めることで、私が王の不興を買いたくない。ついてはだ、おまえたち休暇を取って王都へ行ってこい」
「はあ、はい? あっ、いえ、了解です」
「あまり了解していないようだな。まあ行けば判る。ああ、それとゴレーム驢馬2匹に缶詰を積んでとゴーレム馬で行ってこい、たぶん役立つだろう」