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03 避難小屋にて その2

 結局避難小屋の泊るのはシャルルッテと俺、大尉と軍曹、大尉の部下他2名、合計6名となった。大尉の部下2名は馬だが食糧は携帯してないそうなので、ゴーレム馬に積んでいた試作の缶詰の食糧を供出する。


「食糧まで提供してもらって、すまんな少尉。それにしてもこのスープは悪くないな」


 大尉は乾パンと野菜のスープという簡素な夕食をたべながらいう。


「まだ保存期限の試験中なんですがね。それよりもあの馬車はどうなったんです?」

「少尉に離脱してもらった後、ほどなく馬で部下が到着してな。今はその部下が奴らを拘束してそのままあの場所で野営している」


 ああそれで、大尉たちは大した遅れなく小屋に着いたのか。


「でも伯爵の関係者と問題起こして大丈夫なんですか?」

「何をいっている!? あの不埒者の罪は、誘拐・監禁・魔法の不正使用と明白ではないか。それをよりにもよって姫さまに対して犯すとは言語道断だ…」


「いや伯爵関連の問題はお任せしますよ。そしてその姫なんですが、シャルルッテのことですよね? というかシャルルッテも食べてばかりじゃなくてなんかいってよ!」


 大尉と俺とシャルルッテで一つの寝台をテーブルとして食事をしていたが、会話に参加せずちまちまと食べていたシャルルッテが、私に振るの?って顔をした後、発言する。


「ごちそうさまです、少尉。このスープ本当に美味しいです」

「ありがとう。それで?」

「まあ少尉はそこまでわたくしに興味がありますの?」


 シャルルッテは少しわざとらしく身悶えする。


「それでは食後のお茶の…、いえお湯の際にでも説明しますね」

「いや、大した茶葉ではありませんが、香茶くらい用意するよ」


 シャルルッテの食事の終わりを見計らって、俺は香茶を用意する。予備のカップが二つしかないので、シャルルッテと大尉と俺の分のみだ。


「ふぅ、美味しいです。いつでも香茶をたしなむなんて、少尉は案外貴族的なんですね?」


 シャルルッテが香茶を一口飲んだ後にいう。


「士官学校時代の同室の者が、まあ貴族で。そのときに香茶を仕込まれたんだよ。いや俺の話ではなくて、以前にシャルルッテはガイヤルド伯爵の家系と聞いたけど?」


 峠で魔物に襲われていたシャルルッテを助け、その後も何度か駐屯地で会ったという方が正確だが…、そして俺は、伯爵家の娘は普通『姫』とは呼ばないよな~と考えながらたずねる。


「わたくしは、少尉のことも知りたいですが、まあ、お約束した通り、わたくしのことを先にしましょう。確かに母がガイヤルド伯爵の娘になります。ただ、わたくしの父がアウストロ・キリン・ド・ロプンチア王なのです」


「お、おう、王…。あ~。もしかしてシャルルッテには敬語で話さないとダメかな?」


 俺は、確かに『姫』だと思いながらさらにたずねる。


「いえ、ここは宮廷ではありませんので、今まで通りでかまいません。それでわたくしが王の娘だと判っても、少尉のお気持ちは変わりませんか?」


 シャルルッテが少し口調を改めて、真剣な様子でいう。


「正直おどろいた。でも俺の気持ちは変わらないよ」

「うれしい」


「オホン!」


大尉はわざとらしく咳払いをする。


「ああ、大尉。いらっしゃいましたよね」


「真面目な話、シャルルッテ姫は成人しておられる。なので正式な手順さえ踏んでいれば私がどうこういうことではない。しかし姫は救出された直後、なおかつ精神魔法の影響下でのできごととあっては認めることはできんな」


「ですよね~。まあ一つずつ進めていくますよ。それで良いよね、ルッテ?」


「はい、マルル!」


「そのほうら…、いや姫さま、愛称で呼び合うなどと勝手に関係進めて…、いやこれはひがみかも知れんが…」


「えっ大尉、男性から好かれないのですか?」


 俺は、思わず大尉の整った顔を眺めてしまう。まあちょっと性格はきつそうな感じはするな~とも思う。


「いえ大尉は、男性の選別が厳しいだけなのです。色々な方から誘われているみたいなんですけど…」


 シャルルッテがほがらかな口調でいう。


「なっ…、姫さま…、いえ、そのようなことは…。いや、私のことは良いのです。それより少尉、明日の予定だが」


「はい、なんでしょう。大尉」


 俺は少し真面目に返答する。あまりからかい過ぎて大尉を敵に回しては下策だからな。


「引き続き同行頂いて、駐屯地へ行くことは可能か?」


「いえ、輸送任務がありますから城塞都市に戻らないと…、ああ、ゴーレム馬を引き続きお貸ししますよ」


「なに同行が必要なのではないのか?」


「えっ? ああ私がいいましたね。すみませんあれは方便です。馬は輜重隊の備品ですから監督責任がありますから」


「ああそうか。いやすまない、ご協力感謝する」


「いえいえ、この程度の協力ならいくらでも。なにせ大尉には今後ともお引き立て願わねばなりませんので」


 俺はシャルルッテに目くばせする。シャルルッテはさすがに貴族で、上手く応じてくれる。


「大丈夫ですわ、少尉。大尉は公明正大な方ですもの」

「ああ、いや、うん、できる限りの協力はしよう」


 大尉は若干仕方なさげいった。





第12話に合わせる形で

『駐屯地すぐ外で迷子状態になっていたシャルルッテ』→『峠で魔物に襲われていたシャルルッテを助けた』に改訂しました

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