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02 避難小屋にて

ちょっとチョロインすぎますかね~

 一度、状況を確認してみよう。魔物除けが施されている避難小屋に入ることができたから、魔物の心配はない。西の城塞都市の領主の伯爵の関係者と思われる「おっさん」と大尉との現在の状況が判らないので、これには引き続き留意が必要。


 この「おっさん」による犯罪に巻き込まれたのは俺の知り合いで、そこそこ仲が良いシャルルッテ。でも駐屯地の兵隊のシャルルッテが都市で犯罪に合った理由は判らない。そしてそのシャルルッテは精神的には判らないものの、肉体的な損傷はない。だが媚薬を飲まされて発情的な状態になっていると。


 大丈夫だ問題ない。最後がちょっと問題だけど。あれ?シャルルッテが発情状態にはあるのは聞いたけど、どうしたいかはまだ聞いてなかったな。これは要確認だな。


 俺はしゃがみ込んだ状態での再起動を果たし、シャルルッテに再び話かける。


「その媚薬ってか、発情の状態というのは、がまんできない感じなのかな?」


 シャルルッテはうなずいて肯定する。


「ええっと、しばらくの間、俺が外で時間をつぶすてっのもありじゃない?」


 シャルルッテは首を左右に振り否定する。


「と…、とりあえず、小屋に入ろうか。歩ける?」


 シャルルッテは再度首を振り、俺の首筋に抱きついてきた。あ~いや、うん、とりあえず運ぶか。少し持ちやすい位置に調整し、横抱きにして小屋に入り、板張りの寝台に運ぶ。最初から寝台かよとか思うが、椅子なんて物は小屋にないんだよ。そしてヤバい…、良い感じに薄暗い。シャルルッテを慎重に寝台に座らせる。俺の首に回されていたシャルルッテの手を外し、そのまま手を握り、視線を合わせる。


「少しだけ確認させてくれないか?」


 シャルルッテは「なに?」って感じで少し首をかしげた後、うなずく。かわいいな、おい、いくつだよ? いや去年の新兵だから16歳だろうけど。


「ええっと、まずだ。シャルルッテ16歳だったよな? 兵役に就いてるってことは成人しているってことで良いんだよな?」


 シャルルッテは少し粘度が増した感じの視線で、うなずく。ああ、聞くまでもないことだったな。


「じゃあ、次だ。さっきも聞いたがその媚薬ってか、発情の状態というのは、やっぱりがまんできないのかな?」


 シャルルッテははげしく首を振る。握った手に力をこめてくる。


「じゃあ最後に、俺は駐屯地でシャルルッテにわざわざ声を掛ける位に惹かれてる。ぶっちゃけ好きだ。シャ…」


 シャルルッテは「好きだ」の時点でまた俺の首に手をまわして抱きついてくる。


「ああいや、もうちょっとだけだから、話を聞いてくれ。シャルルッテも俺のこと、嫌いじゃないんで良い?」

「す…、き…」


 ああ、この超絶な接近状態でのささやく様な「すき」は威力ありますね。


「なんで?」

「たすけて、くれた」


 ああ馬車に乗せられた際に、ずっと意識を失っていた訳ではないのか。そして、これはもういいだろう。媚薬という状態異常な女性に対してことに及ぶのは、褒められたことではない。ないが、正直シャルルッテがかわいくてがまんできない。


 俺は、シャルルッテの目を真正面から見つめる。一瞬きょとんとした顔をしたシャルルッテはすぐに目を閉じる。まさに二人の唇が触れたその時、避難小屋のドアが音を立てて開かれた。


「なにをしている不埒もの!!」

「ああ、大尉お早いお着きで」


 俺は、シャルルッテの肩をつかんだまま、顔だけを大尉に向ける。


「貴様! 即刻、姫さまを離さんか~!」


 大尉はサーベルを抜刀し俺に向け構えながらいい放つ。


「姫さま?」


 俺は肩をつかんだまま、シャルルッテをのぞき込みたずねる。


「う…ん」


 シャルルッテはなぜか恥ずかしそうだ。ああ衆人環視下で抱き合っていれば恥ずかしくもなるか。


「ああすみません、大尉さん。シャルルッテが状態異常みたいなんですが、異常回復薬とかありません?」

「なんだと!?姫さま、本当ですか?」


 俺は寝台から立ち上り、大尉にシャルルッテの紅潮した顔を見せる。シャルルッテはいやいやし、俺の腹に抱きついて顔を隠してしまう。


「姫さん、この状況だとさすがに続けるの無理だぞ」


 シャルルッテは再びいやいやする。


「大尉、姫さんは続けてほしいみたいだけど?」

「そのような『間違い』を、我々が許すと思うか? アンニャすまない、回復薬を頼む!」


 大尉の後から小屋に入って来ていた軍曹は、開きっ放しのドアから飛び出していく。


「姫さま、少尉に悪いようにはしないので、ここは我々に任せてください」


 シャルルッテは、俺を見上げ「どうする?」という感じで首をかしげる。

俺がシャルルッテへうなずき返すと、シャルルッテは俺を離す。俺はシャルルッテから離れ、大尉に場所をゆずる。大尉が納刀してシャルルッテに抱きつく。


「ああ、姫さま、ご無事で良かった」


 ほどなくして軍曹が衛生鞄を持って来た。状態異常回復の魔石を鞄から取り出し、まだ大尉に抱き着かれてる姫さまの首筋にあてる。これでシャルルッテは正気になるはずだが、。


 シャルルッテはしばらく目を閉じたまま後、おもむろに語り出す。


「少尉、まずはお救い頂きありがとうございます」


 シャルルッテは俺に向けて軽くおじぎをする。


「少尉のご協力がなければ、この身はどうなっていたか判りません。よって少尉の功績が第一です。ですよね、 大尉?」

「はい、ですが姫さま…」


 シャルルッテは大尉の発言を遮って続ける。なぜか恥ずかしそうだ。


「それでですね…、少尉。私のあなたに対する気持ちはですね。…、魔法が解けた今も変わりません…」


 シャルルッテは更に消え入りそうな声でいう。


「ですので、今後に…、さまざまな…、説得を…、頑張りましょう」

「おう、おう」



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