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異世界召喚系

女子の必需品

作者: ひつじかい

 とある高校の2年A組26名は、授業中に突如室内で発生した謎の光によって、見知らぬ場所へと転移した。

「おお! 成功だ!」

 其処は、闘技場をイメージさせる場所であり、彼等は円柱形の試合場に立っていた。

 試合場の床には、ゲーム等で目にする大きな魔法陣らしき物。

 辺りには、西洋の鎧を身に付けた謎の人々。

 そして、先程声を上げた者は、観客席に居た。

「異世界より来たれし、選ばれし勇者達よ! 我等××王国は、其方等を歓迎するぞ!」

 何言ってんだ、このおっさん?

 ほぼ全員が、心の中でそう突っ込む。

「早速、どのような力を持っているか、確認だ!」


 ステータス鑑定とやらで、攻撃系・補助系・回復系に分けられて行く。

「これは……」

 しかし、最後の一人が鑑定された時、鑑定者が眉を顰めた。

「どうした?」

 観客席から、先程の偉そうな男が声をかける。

「陛下。この者の力は、魔王軍との戦いに役に立ちません」

「何だと!?」

 陛下と呼ばれた男の機嫌が、一気に悪化した。

 癇癪持ちなのだろう、怒りに顔を赤くさせ、鎧男達に命じる。

「その役立たずを、虎の餌にしろ!」

 これに驚いたのは、虎の餌にされる事になった女子だけでは無い。

 彼女はスクールカーストで底辺に位置していたが、だからと言って、知り合いが虎の餌にされそうになって無反応で居られるほど、皆、共感能力は低く無かった。

 それに、ただでさえ勝手に召喚されて、魔王軍との戦いをさせられそうだと言うのに、曲がりなりにもクラスメートを殺すなんて、こんな奴等の為に命をかけたくないと殆どの生徒は思った。

「助けて!」

「ウケルw 虎の餌とか、お似合いだよね~w」

 彼女を虐めていたグループのリーダーが、ただ一人嗤う。

「何、言ってんの? キモ……」

「はあ?! 何であたしが!? まじおこだよ!」

「誰か助けて! 女子! 私の力は絶対に役に立つから!」

 再び助けを呼ぶ声に、虐めのリーダーはせせら笑った。

「頭大丈夫? 役に立たないって言われたじゃんw あんたなんかの力なんて要らないっつーのw」


「だって、女性用品召喚だもん!」


 その叫びに、女子全員フリーズする。

 恥ずかしさ故では無い。リアルガチ必須と気付いたからだ。

 一方、男子の一部は赤面し、一部は不思議そうな顔をした。

「王様! あの子必要ですから! 絶対、必要ですから!」

 国王は、勇者達がそれほどまでに必要とするならと、渋々連行を止めさせる。

「女性用品って何?」

 言葉の意味を知らない男子の一人が、何でも知ってそうなクラスの秀才男子に尋ねる。

「生理用品だよ」

「そんなの必要か?」

 思いの外良く通った言葉に、一人の女子がオクターブ低い声で言った。

「はあ? 必要に決まってんだろ」

「済みませんでしたー!」

 『力』がある者を怒らせたらヤバい。殺気を感じた男子は、即座に土下座せんばかりの勢いで謝罪した。

「あんた達、何必死になってんの? ウケルんだけどw そんなのその辺で買えば良いじゃん」

 虐めのリーダーは、一人楽観視してそんな事を言い放った。

「異世界に、日本製並みの生理用品があると思ってんの?」

「は? そんなん、普通にあるっしょ」

 そう言うと、彼女は、国王の側に居る身分の高そうな女性に尋ねた。

「この国ではセロリん時、何使ってんの?」

「隠語で通じる訳無いでしょう」

「チッ。生理の時、何使ってんの?」

「殿方がいらっしゃる場所で……。異世界人は野蛮ですわ」

 それを聞いたクラスの大半は、野蛮なのは人を虎の餌にする方だと言う突っ込みを飲み込んだ。

 手招くので、一人の女子が観客席に飛び乗って耳打ちを受けた。


「で、どうだった?」

 戻って来た彼女に、女子が群がる。

「古布を詰めるんだって」

「ガチで?!」

「うん。魔王軍との戦いの所為で物資不足なんだって」

「あ、じゃあ、普段はもっと別の?」

 女子Aが尋ねる。

「うん。良い布詰めるんだって」

「どっちにしろ、布を詰めるのね。吸収性は?」

「古布の方? まあ、どっちでも、現代日本製に勝るとは思えないよ」

「それな」

 女子Bが同意する。



「とりま、うちらは日本製使うから、お前だけ古布詰めてろよ」

 先程、虐めのリーダーに「キモ」と言った女子が、彼女に冷たく言い放った。

「はあ?! 何であんたに勝手に決められなきゃなんねーの?」

「お前が言ったんだろ? 要らないって」

 二人は睨み合う。

「フン! 言われなくても、キモオタ菌が伝染るから要らないっつーの! ……日本に戻ったら、覚えてろよ」



 さて、生理中は免疫力が落ち、菌に感染しやすくなるそうだ。

 そして、経血には、細菌・病原菌が含まれているらしい。

 つまり、下手に詰め物を使用するのは命の危険があると言う事だ。

 タンポンをご使用の際は、用法を守ってご使用ください。



 数週間後、運悪く菌が繁殖してしまった虐めのリーダーは、病原菌を殺せる回復魔法によって一命を取り留め、無事回復した。

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― 新着の感想 ―
[一言] 切実すぎる…… というか、男性はともかく女性の召喚ってこういうとこがあるから本当は一筋縄じゃいかないんですよね…… どうせなら一緒に痛み止も…… いや、そっちは回復魔法でなんとかなるのか!…
[良い点] 勇者召喚の新しい切り口(笑) [一言] これは切実ですなー。 女性にとっての必需品だもの。 クラスメートの共感能力にいじめられっ子は感謝し、いじめっ子は愕然としたことでしょう。 心の中のツ…
[一言] 自分、男なので生理のことはよくわからんのですが、とりあえずこれだけは―― 病原菌を「殺せる」「回復」魔法ってすごいね。
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