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狂人独白


犬猫や子供でさえ、学習するというのに、物事を学んでいないように見える人物がいる。何故学ばないのかと嘆いてみせるものもいるが、私に言わせてもらえば理由は明白である。学習する気がないから、必要性を感じないから、学習しないのだ。

そもそも犬猫や子供が物事を学ぶのはどういう時だろうか?それは。己の利か損がある時である。わかりやすく言えば、そうすると褒められるか、怒られる場合に学ぶのである。誰だって褒められたいし怒られたくない。ペットの躾は異種間コミュニケーションだけあって意思疎通が上手くいかなければ失敗する。いや、人間相手でもそうなのだろうが。

人は変化を厭うものだ。変化で良い事が起こることもあれば悪い事が起こる事もあるが、言い方は悪いが煩わしさを避けては通れない。変化に適応するというのは面倒くさいのだ。良い方向の変化でもそうなのだから、特にメリットの感じない変化を積極的に求めるわけがない。それまでどうにかなってきたのだから、これからもそのままでいいと考える。その是非までは私には何とも言えないが、まあ、学習を求める者にとってはよくない事なのだろう。

基本的に、余程特殊な事情がなければ学べないなんて事は有り得ない。学習能力そのものがいかれてるなんて事はそうそうない。全く学習というものが出来なければ普通に暮らす事すら困難なはずだ。学習というのは、記憶や知識による行動選択だ。思想だって学習から生まれるものだろう。価値観とは己の得た知識で作られるものである。大体己に都合がいい事とすごく都合の悪い事は覚えているはずだ。どうでもいい事は忘れるだろう。己にとっての話だ。どちらかと言えば好き嫌いの分類に近いし、善悪善し悪しの話ではない。どうでもいいのに覚えているのは、それこそ頻繁に目にするものくらいだろう。でなければ記憶に残らない。

人の気持ちというやつは、変えようとして変えられるものではない。だから、基本的にはその気のないものに口で何を言っても無駄だ。動かそうと思うなら強烈なメリットかデメリットを用意するしかない。まあ、メリットもデメリットもその人の価値観によって違ったりするから、狙って用意するのも難しいかもしれないが。

犬猫が怒られたことを学習すると言ったが、叱られてもやめない犬猫もいる。何故か。怒られたと思っていないからである。例えば。吠え癖のある犬は、吠えれば構ってもらえると認識している場合がある。残念ながら人間でも似たような事態が起こり得るようだが、それは閑話休題。価値観の共有とは、そういう事である。

意思の疎通ができなくとも、価値観が共有されておらずとも、学習そのものは行われる。それがもう片方にとって望む結果でないというだけだ。相手の世界の中心は相手なのだから仕方ない。全てが都合よくいく事等有り得ないのだ。

言葉が通じることと話が通じることは違う。言葉は通じているはずなのに話の通じないものもいるし、逆に、言葉が通じずとも意思疎通のできるものもいる。要は、相手の話を聞こう、理解しようという気があるのか、ということだ。わかろうという気のないものに何を話しても意味はない。

話せばわかる、というのは詭弁だ。いや、詭弁というのもまた違うかもしれない。そんな事を言うのは独善者だ。己の考えを至上とする傲慢な人間だ。世には話しあいでは解決できない問題もある。その最たるものが利害の対立だ。それは、善悪ではない。言っては悪いが、最終的に勝ったものが"正しい"のだ。これは正しいものが勝つという意味ではない。勝ったものが正しいという事になるという意味だ。

意見の押し付け、思考の放棄、いずれにせよ良い事ではないだろう。少なくとも私はそう思う。ただ、全ての人間が己の意見を持ち主張する、というのが混沌を引き起こす事になりかねないというのも確かだろう。適当に他者に迎合する者の存在は、"平和"にとって必要なものである。もっとも、その結果生まれるのがユートピアなのか、ディストピアなのかはわからないが。私としては、そもそもユートピアというものが存在し得るのか、という事を歌が痛いが。人の価値観は全てが同一ではないのだから、誰もが幸せになることなど出来まい。




壁にでも話してろよ

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