7/7
特訓場
次の日…。
吉法師は、父の織田信秀に連れられて那古野城へ入った。
那古野城とは1532年、吉法師の父信秀が今川氏豊から柳之丸を奪って、称した城である。
「どうしました?お父上。」
「いや、実はな…噂で聞いたんだが、黒英団を追い払ったそうじゃないか。」
「は、はい。」
信秀はハハッと笑う。
昨日追い払ったばかりなのに噂がもう広がっているのか…と、吉法師は思う。
「そこでだ。もうそろそろ吉法師、この信秀に仕えてみないか?」
「仕える…?」
信秀から発された言葉に、吉法師は岩のように固まってしまった。
「咲くんと、日吉丸くんも大歓迎だぞ。」
固まった岩からハッと、我に返る。
と思ったら急に慌て始めた。
「し、しかし、日吉丸はまだ9歳。咲も10歳。危ないんじゃ…。」
ほとんど早口で聞き取れなかったが、信秀は吉法師の肩に手を置き、なだめてから立ち上がった。
「え…どこ行くのですか?」
「ニ之丸だ。吉法師も行くぞ。」
そう言われて吉法師も立ち上がり、信秀について行った。