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蒼龍国奮戦記  作者: こうすけ
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第六話

明けましておめでとうございます。


今年も頑張っていくので宜しくお願いします

蒼龍国 首都:蒼龍府

蒼龍国軍統合本部 統合作戦指揮所


 蒼龍国軍の全戦力を把握、指揮運用できる統合作戦指揮所には祐樹からの突然の連絡を受けた優奈、汐里、紅葉の三人の他、緊急招集を受けて集まった陸海空全幕僚が集まっていた。


「現在のアクシリア王国王都エレスティアの状況をモニターに出しなさい」


 コンソールの女性兵士が優奈の言葉に頷いて端末のマウスを数回動かすと、正面の大型有機ELモニターに軍事偵察衛星から送られたエレスティアの画像が映し出された。


「現在のエレスティアの状況です。インペリウム教皇国軍は空挺作戦で第一城壁を突破、現在は総帥の死守する第二城壁の攻略を行っています。総帥の情報によりますと、敵の第一次攻撃失敗し、膠着状況が続いているとの事です」


 優奈の副官である森宮香澄一等陸佐が祐樹から知らされた情報を整理した資料を淡々と読み上げた。


「現在、総帥率いる大陸調査隊は第二城壁の東門を死守しており、この東門に敵はニ万から三万の兵力を展開させています。これからも王城の城壁から一番近いこの東門を最優先目標としている事が分かります」


 森宮二尉の報告が終わり、その隣で報告を聞いていた優奈は静かに頷くと、座っている幕僚達を見回しながら口を開いた。


「これが、総帥達が置かれている現在の状況です。総帥は、蒼龍国軍に対して派兵を命じられました。我々は迅速に戦力を編成して総帥達の許に送らなければなりません」


 優奈のその言葉に汐里、紅葉、全幕僚が頷く。


「加藤海幕長、現在海軍の出せる戦力の説明をお願いします」

「はっ。現在、沖合で待機している第一航空打撃群に出撃待機命令を発令しています。命令が下れば何時でも出撃出来ます」


 汐里の報告に優奈は頷くと、紅葉に視線を向けた。


「宮本空幕長、空軍の出動準備の報告を……」

「はっ。空軍は第一航空団の第一〇一制空飛行隊に出動待機命令を発令しました。出動命令が下れば何時でも出撃する事が可能です」

「エレスティアまでは増槽を使ったとしても航続距離が足りないわよ?」

「その点は大丈夫です。第一輸送航空隊第四〇一飛行隊のKC-767空中給油機を使用します。これなら、航続距離を伸ばすことも可能です」


 紅葉の言葉に優奈は再び頷いた。


「加藤海幕長、第一航空打撃群に出撃命令を出します。明朝、〇五〇〇までにエレスティアが艦載機の航続距離圏内に入る位置に移動させなさい」

「はっ!」

「宮本空幕長、第一〇一飛行隊は明朝〇三三〇に全機出撃。〇五〇〇に制空権の確保をするように」

「了解しました」

「総帥達を死なせてはいけません。各員、持てる力を総動員して事に当たりなさい!加藤海幕長は総帥の命令に従って第一航空打撃群に合流する様に。以上、解散!」


 優奈の言葉に全員は頷くと、汐里は沖合に待機している第一航空打撃群に作戦行動に入るように告げると、第一航空打撃群と合流する為、第一海軍航空基地に待機しているオスプレイの許に向かった。紅葉は待機している第一〇一飛行隊のパイロットにブリーフィングルームに集結する様に告げると、幕僚達を引き連れて慌ただしく統合作戦指揮所を後にした。



アクリシア王国 王都:エレスティア

第二城壁東門



 日の出まであと数時間という頃合いで、第二城壁を守っている祐樹が率いる親衛軍の兵士達と城の守備兵達に火矢が雨の様に降り注いだ。


「敵襲ぅー!東門に敵襲だ!」

「総員戦闘配置!敵の矢に気を付けろ!」


 仮眠を取っていた兵士達も叩き起こされ、兵士達は敵の火矢に注意しながらそれぞれの持ち場へと就き、銃を構えた。


「〇三〇〇……夜襲には絶妙な時間といったところか?」

「敵も正規軍ですからね……我々の目が利かず睡魔に襲われる時間も分かっているのでしょう」


 火矢を避ける為に身を伏せながら祐樹は時計を見ながらそう言うと、隣で祐樹と同じ様に伏せている刹那がその言葉に答えた。祐樹はその言葉に頷き、火矢の勢いが衰えてから外の状況を見てみると、堅牢な方型の楯を並べて鎧で身を固めた兵士達が長大な梯子を運びながら城壁ににじり寄ってきた。


「総員、敵を絶対に城壁に近付けるな!撃てぇー!」


 怒号にも等しい声が辺りに響き、兵士達は弾かれる様に引き金を引いた。木製の楯では、厚さ十ミリの鉄板を貫通する7.62ミリ弾を防げず貫通し、敵兵が次々と倒れていく。


「弾幕を切らすな!白兵距離に近付けさせれば不利になる!」


 そう叫びながら祐樹も必死で銃撃を続けるが、いくら近代装備で武装していようと二個小隊六十名、門の守備兵を合わせても千名足らずで、五万以上の敵兵を相手にする事は不可能に近く、更に運悪く、門塔に配置されている九六式擲弾銃やM2重機関銃、M134、凡庸機関銃のM240による弾幕によって城門の攻略は不可能と考えたのか、敵は梯子を使って城壁の攻略に集中していた。


「ぐっ!?や、矢が……」

「痛い!痛い!」

「負傷者二名発生!」

「衛生兵!衛生兵!」

「今見てやる!全員、矢は引き抜くな!下手に抜くと返しの所為で傷が広がって一気に出血するぞ」


 戦闘が始まってから一時間以上が経過し、敵弓兵が楯を持った兵士達に守られながら矢が充分に届く距離まで近づくと、射撃を続けている兵士達に矢を放ち始めた所為で、味方からも被害が出始めていた。


「くっそ、これでも食らえっ!」


 祐樹は、ダンプポーチからM26手榴弾を二個取り出し、ピンを抜くとそう叫んで城壁下で楯を使って頭上を守りながら梯子を掛けようとしている兵士達に向かって投げ付けた。手榴弾は投げ付けてからきっかり四秒後に炸裂し、下で作業していた兵士達の絶叫が聞こえてきたが、祐樹は喜ぶ暇も無く、小銃を撃ち続ける。


「た、弾が無い!誰か弾をくれ!」

「こ、こっちも!残弾ゼロ!残弾ゼロ!」

「弾も尽き始めて来たか……刹那、擲弾銃や重機関銃の方の残弾はどうだ?」

「もう直ぐ弾が切れそうです……」


 刹那の言葉を受けて祐樹は顔が顰めた。


―――ドオォーン


 突然、城門が爆発し、破城鎚からの攻撃を防ぐ為に城門を押さえていた城門の守備兵達が吹き飛んだ。


「爆発!?門塔、大丈夫か!?状況を報告しろ!」

『こちら右門塔です。被害はありません』

『こちら左門塔、同じく被害はありません』

「了解。引き続き戦闘を続行せよ。しかし、今の攻撃は一体何だ……?」

「ま、マスターあれを見て下さい!」


 驚いた表情の刹那が指差している空を見上げるとそこには、空に浮いている大型の戦列艦が三隻、先込め式の大砲を地上に向けながら第二城壁に近づいて来ている姿があった。


「航空支援か……」


 空中に浮かぶ戦列艦を見ながらそう呟いていると、鎧を敵の返り血で汚したエルヴィエラが祐樹達に向かって走ってきた。


「ユウキ殿、第二城壁の防衛戦は破綻しました。直ぐに第三城壁に撤退して下さい。ここは私達が引き受けます!」

「いや、俺達も最後までここで戦う」

「それはいけません!貴方達は直ぐに第三城壁に――」


 最後まで戦うと言った祐樹に対してエルヴィエラは第三城壁に撤退するようにと更に言い募ろうとしたが、凄まじい音を響かせながら上空を通過した“何か”によってその言葉は遮られた。


 エルヴィエラ達の上空を通り過ぎた“何か”は、まるで意志を持っているかの様に悠々と進んでいた戦列艦三隻に向かうと、そのまま戦列艦に突き刺さった。


 エルヴィエラ達が知る由も無いが、戦列艦に突き刺さった“何か”は、蒼龍国本土から全速で飛来した第一〇一制空飛行隊のF-22から放たれた九九式中距離対空誘導弾だった。

対艦、対地巡航ミサイルの迎撃も重要視されて製作された九九式中距離対空誘導弾は木造の背列艦の横腹を食い破ると、内部に置かれていた大砲の黒色火薬を誘爆させ、戦列艦を地上へと叩き落とした。


「マスター、制空隊からの連絡が入りました」


 刹那が祐樹の耳許に近づいて小声でそう告げられ、その報告に祐樹は静かに頷き、呆然として空を見上げているエルヴィエラに断りを入れてその場を離れると、通信兵から受話器を受け取った。


『総帥!片桐由梨とその仲間たちが、ホットなミサイルのお届けにまいりましたぁー!』


 無線機から陽気な声でそう告げたのは、第一航空団第一〇一制空飛行隊隊長の片桐由梨一等空佐だった。


「良いタイミングだ、由梨。引き続き制空権確保を頼む」

「はい、お任せ下さい。もう直ぐしたら第一航空打撃群の戦闘攻撃隊も到着するはずです」


 由梨と話を交わしていると、第一航空打撃群から発艦したF/A-18E、F-35Cが戦闘空域に到着し、精密爆撃によって城壁外にいた敵本陣や待機部隊を押し潰し、対地誘導弾を投下し終えた機体は悠々と母艦へと飛び去った。


「ユウキ殿はあの者たちについて何か知らないか……?」

「いや、俺も奴等が何者なのかは分からないな……でも、奴らの攻撃のお陰で敵の戦力は半分以下になった。このまま一気に決着を付けよう」

「あ、あぁ、そうだな。全員、討ってでるぞ!我に続けぇー!」

「総員、突撃ぃ!」


 エルヴィエラと祐樹の言葉を受け、守備兵と親衛軍の兵士達は破壊された城門から編成を整えて出撃すると、爆撃によって指揮系統が混乱している敵兵に襲い掛かった。


「絶対に一人で戦うな!複数で敵を囲みながら戦え!」


 城壁攻略を行っていた敵軍は指揮官を失った事で戦意を失ってちりぢりに四散する烏合の衆と成り果て、反撃から一時間が経過しようとしていた時には、戦闘は既に散発的な掃討戦へと移行し、精強を誇っていたエレスティア攻略遠征軍は壊滅した。




「ユウキには本当に世話になったな……」


 アネットは降伏した敵兵を警戒しながら生存者を守備兵達が集めている光景を眺めながら祐樹に対してそう呟いた。


「いや、俺達も最後の方は危なかったからな……あいつ等が来なかったら如何なっていた事か……」


 祐樹はそう言うと空を見上げて、上空を旋回しながら空中警戒待機に就いているF-22とF/A-18Eの編隊を見た。


「確かに……しかし、奴等は一体何者だ……?」


 二人で暫く空を見ながら話していると、城の中から騎士団員が一人出て来てアネットの許へ近づいて来た。


「如何した……?」

「正体不明の飛行物体が王城に向けて接近中です!様子から見るに中庭に降りるのだと思われます!」

「分かった。私も直ぐに行く。ユウキ、済まないが私はこれから直ぐに王城に戻る事になった」

「あぁ、俺達も自分の故郷がこの侵攻で襲われてないか心配だからな」

「そうか……では、また機会があれば会うとしよう」


 アネットはそう言うと城に向かって歩き出し、祐樹は集合している刹那達の許へと向かった。




「刹那、損害状況は分かったか?」

「はい、マスター。こちらが報告書になります」


 刹那の言葉に頷き、祐樹は手渡された報告書に目を落とした。



【被害報告書】

・負傷者 二十九名

 重傷者 十四名

 軽傷者 十五名

・戦死者 六名



「流石に無傷で、とは無理だったか……」

「はい。しかし、六十名でよくやったと思います」

「そうだな……よし、撤収準備が済み次第Assy(集結地点)に向かうぞ」

「了解しました。直ぐ各員に撤収準備をさせる様に通達します」


 それから十分後、全ての撤収準備を終えた祐樹達は予定通り王城から十キロ離れた砂浜でLCACを使って輸送艦「おおすみ」に移乗し、蒼龍国へと帰路に就いた。


今月はセンターや英検、漢検があるので、次回は2月10日になります。


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