第四話
更新日を間違えてしまってすみません!
アクシリア王国 王都:エレスティア
女王護衛隊列
女王の護衛をしながら各町を経由してアクシリア王国の王都であるエレスティアを目指して進み始めてから三日後に王都エレスティアに到着したが、祐樹達の車輛がそのまま入ってしまうと騒ぎになりかねないので少し木材を使って馬車に偽装してからエレスティアへと入った。
「王都だけあって大きいな……これまで立ち寄った街や都市とは全然規模が違う」
「それはそうだろう。この王都エレスティアはバレンシア大陸でも五本の指に入る大都市だからな」
王都エレスティアの大きさに驚いている祐樹にアネットは得意気な表情でエレスティアについての説明を行った。
王都エレスティアはその広大な土地を三重の城壁で取り囲み、外側から平民、貴族、王族と住む場所が分かれている。またエレスティアは交易港としても有名で、海に面している西側の港は貿易港として栄えているとの事だった。
「それに、色々な種族もいるみたいだが、みんな元気が無いな……」
大通りには人だけでは無く、獣人、エルフ、サキュバス等の様々な種族で溢れているが、その表情には元気がみられず、市場にも殆ど商品が並んでいなかった。
「様々な種族との共存は我が国の国是だからな。しかし、今回の戦争で貿易船も来なくなり、物資は軍に優先的に配備されるから国民に物資が行き届かないのだ」
「成程……」
アネットと会話しながらも馬車の後をついてエレスティアの中心に建てられている王城に向けて歩みを進め、王城へと続く巨大な城門へと辿り着いた。
「これで、俺達の依頼は完了だな」
「あぁ、報酬は準備が出来たら渡すことに成ると思うが……」
「団長、陛下が呼んでおられます」
「分かった、直ぐに行く。ユウキ、済まないがもう暫くここに待ってもらえないか?」
「いいぞ。こっちも急ぎの用事は無いからな」
祐樹の言葉にアネットは頷くと、足早にヒルデガードの乗る馬車へと駆け寄り、二、三言葉を交わしたら再び祐樹達の許に戻って来た。
「それで、陛下は何て言っていた?」
「それが……今日はもう遅いからユウキさへ良かったら、部下達と王城に泊らないかと言う事だ。城の客室を二室用意したらしい。約束の報酬は明日渡すことになる」
「本当にいいのか?王城に泊って……?」
アネットの言葉に祐樹は驚きを含んだ声で尋ねた。
「勿論だ。ユウキには何かと世話になったからな。ちょっとした恩返しだと思ってくれ」
「そうか。それなら、お言葉に甘えさせてもらおう」
そう言った祐樹達はアネット達と共に城門を潜り、ヒルデガードの乗る馬車を護衛する騎士たちと別れると、アネットの案内によって客室へと通された。
「ここがユウキ達に泊ってもらう部屋になる。何か欲しいものがあったら、外にいる従者に申しつけてくれ」
アネットはそう言うと、明日の朝に迎えに来る事を告げて客室を後にした。
「しかし、まさか女王の乗った馬車を助ける事に成るとは……」
ソファーに座りそう呟いた祐樹に対して、その隣にいた刹那も意外な展開になった事に苦笑していた。
「でも、これで女王の我々に対する好感は上がっているはずです。国交を結ぶ時も少しは上手くいくと思います」
「そうだな。さて、明日も早そうだから寝るとするか」
祐樹がそう言うと、警備の者を除いた兵士達は一か所の壁に小銃を立てかけると装備を解いてベッドに横になったが、ベッドの数が足りないので外にいる従者に頼んで毛布を追加してもらい、ソファーでも寝る事になった。
アクシリア王国 王都:エレスティア
王城 客間
翌日、早い時間から起きた祐樹達は解いていた装備を再び身に付けて準備を整えて、アネットが呼びに来るのを待っていると、ドアが開き騎士甲冑に身を包んでいるアネットが姿を現した。
「ユウキ、待たせたな。陛下の支度が済んだので呼びに来たぞ」
「あぁ、分かった。刹那、行くぞ」
「はい、マスター」
祐樹は刹那を伴ってアネットの後をついて行くと、ドアの前に第一近衛騎士団の女性騎士が二人立っている一室に案内され中に入ると、昨日の薄い青色のドレスでは無く、青を基調としているが、宝石の散りばめられたドレスを身に纏っているヒルデガードの姿があった。
入室し、アネットが頭を下げるのを見て、祐樹と刹那もそれに倣って頭を下げた。
「頭を上げて下さい。本来なら頭を下げるのは私の方です。あそこで貴方達に助けて頂け無かったら、私もアネットもここにはいなかったでしょう」
ヒルデガードはそう言うと祐樹にソファーに座るように促し、祐樹も断る理由も無かったのでその言葉に素直に従いソファーに座った。因みに刹那はソファーには座らず、祐樹の後ろに黙って立っている。
「いえいえ、自分達はただ当然の事をしただけです」
「そう謙遜しなくても良いですよ。では、お約束の報酬をお渡ししましょう」
ヒルデガードがそう告げてアネットに目配せすると、アネットは侍女からジャラジャラと金属音のする革袋を受け取り、祐樹に手渡した。
ヒルデガードに断りを入れてから革袋の中身を確認すると、白金貨五枚、金貨十枚、銀貨二十枚が入っていた。
「こんなに頂いて宜しいのですか?」
まさかこれだけの大金を貰えると思ってもいなかった祐樹は驚きの表情のままヒルデガードに尋ねた。
「構いません。貴方達はそれだけの働きをしてくれました。これ位は安いものです」
「そうですか……では、頂きます」
祐樹はそう言って革袋を受け取ると、後ろに立っている刹那に手渡した。
「では、我々はこれで失礼します」
「あっ、ちょっと待って下さるかしら」
祐樹がそう言ってソファーから立ち上がって部屋を後にしようとすると、ヒルデガードがそれを引きとめた。
「何ですか?」
「貴方達さへ良ければ、特別騎士団としてこの国に仕えませんか?」
「騎士団として……」
「えぇ、報酬も弾みますし、身分も相当の身分を用意させます。悪い話では無いと思うのですが、如何でしょうか?」
「陛下のお誘いは嬉しいのですが、お……」
――ドオォーン!
ヒルデガードの突然の申し出に驚いた祐樹だったが、その誘いを断ろうと祐樹が口を開いた時、轟音と共に大きな衝撃が王城を襲った。
「な、何事だ!?衛兵!衛兵!」
突然の事態にアネットが状況を確認する為に衛兵を呼ぶと、衛兵が一人慌てて室内に飛び込んできた。
「今の衝撃は何か!?状況を説明しろ」
「報告します!我が王都に向かってインペリウム教皇国軍の空中艦隊が襲来!空中艦隊は第一城壁の城門を破壊、敵兵が第一城壁内に降り、民達に対して攻撃を加えています。敵の数はおよそ五万から六万。現在、第一城壁守備兵と第二城壁守備兵が協力して民の退避を行いながら交戦中であります!」
「いきなり王都を狙って来たか……守備隊に通達、第一城壁は放棄、第二城壁に防衛線を張る。第一、二近衛騎士団にも出撃命令を出せ、門を閉める用意も急がせろ」
「はっ!」
アネットの指示を受け、報告した衛兵は直ぐに室内を後にしたが、それと入れ替わるように別な衛兵が飛び込んできた。
「緊急の報告でございます!国境線に集結していたインペリウム教皇国軍が我が領土に侵攻を開始!国境線の守備隊四万は全滅、国境線近くのアルジェ、ラバトの両砦、守備隊の二万も壊滅。現在、教皇国軍はバスティア要塞を攻略中であります!」
王都に対する侵攻だけでは無く、王国領に対しての同時侵攻によって境界線に配置している守備隊や砦、そして、防衛の要であるバスティア要塞までもが攻撃を受けている事を衛兵からの報告で知り、ヒルデガードとアネットの顔は絶望で染まった。
「わ、分かりました。下がりなさい」
「はっ!」
衛兵が部屋から退出した事を確認すると、ヒルデガードは自分の隣に立っているアネットに視線を向けて口を開いた。
「アネット、王国全土にいる兵を移動させる事は可能ですか?」
電撃侵攻のショックから未だ立ち直れないでいるヒルデガードがアネットに対してそう尋ねると、アネットは悲壮な顔のまま首を横に振った。
「不可能でしょう。既に王都は攻撃を受けましたので、各方面に使いを出す余裕はありません。それに、各地も教皇国軍に備え警戒しなければなりません。もし、増援が呼べたとしても、間に合わない可能性が高いでしょう」
「そう…ですか……」
「それよりも陛下は直ぐに特別室に避難して下さい。ここも危険です」
「分かりました。アネットは直ぐに近衛騎士団の指揮を取って下さい。それと、ユウキさん、お願いがあります。この国を…いえ、この国の民を助けて下さい」
ヒルデガードの消え入るような声での依頼に祐樹は少しの間考え、結論を出すとヒルデガードの目を見て頷いた。
「分かりました。微力ながら我々も出来る限りのことはやりましょう」
「有難うございます、ユウキさん」
「さっ、陛下お早く」
祐樹の言葉にヒルデガードは頭を下げると衛兵に連れられて部屋を後にすると特別室へ向かった。祐樹も親衛軍の兵士達が待機している客室へと足早に向かった。
「良かったのですかマスター?この国を助ける様な事をして……」
廊下を歩き、客室へ向かっている途中に後ろを歩いている刹那がそう祐樹に尋ねた。
「俺も助けるかどうか悩んだが、この国の何の罪も無い人達を見殺しにする事は出来ないからな……全く俺は損な性格だよ」
「ふふ、でもそれがマスターの良い所でもあります」
苦笑してそう言う祐樹に対して刹那は微笑みながらそう答えた。
「全員集合!」
客室に到着するなり刹那が号令を掛けると、祐樹の命令を待っていた兵士達が素早く祐樹の目の前に整列した。
「全員聞け!これより我々はアクシリア王国ヒルデガード・カヤ・トランセル女王の要請を受けて王都エレスティアの防衛戦に参加する。現在、守備隊が第二城壁で防衛線を展開中で、我々もそこに合流する。それと、第一分隊、第二分隊は各車両に積まれている弾薬と重機関銃などの重火器を三脚と一緒に持って来い。全員、五分以内に装備を整えて行くぞ!」
祐樹がそう告げると、兵士達は素早く壁に立て掛けていた小銃を手に取り、弾倉を取り付け、初弾を薬室に送り込むまでの全ての準備を終えると、祐樹を先頭にして防衛線が構築されている第二城壁の城門に向かった。
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次回の更新は12月31日です。