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蒼龍国奮戦記  作者: こうすけ
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第三十八話

アクリシア王国 王都:エレスティア

第二城壁東城門前



 救出部隊である第二課が中庭へ降下している頃、第二城壁東城門前では第一混成旅団と第三親衛師団から抽出された一個大隊とM1128ストライカーMGS、ガンポート付きの厚さ五ミリの鉄板とセラミックプレート、キャブ上にM2重機関銃を搭載するなどガントラックに改造されたM1078、M1151装甲強化型ハンヴィーが出撃の時を待っていた。


「城壁上に数千といったところか……兵士の数が多いな」

「敵もここが弱点だと分かっていますからね……そろそろ時間です」

「救出部隊は各車輌に搭乗!」


 東城門を双眼鏡で覗いていた遠原は東城壁上にいる敵兵士の数が他の城壁よりも増強されたことを確認すると出撃命令を待つ一個大隊に命令を下し、命令を受けた兵士たちは一斉にハンヴィーやガントラックに乗り込んだ。


「戦車、城門を狙え!援護班は射撃用意!」


 遠原が続けて命令を下すと待機していた二輌のM1A2SEPV3エイブラムスが砲塔を旋回させると応急修理を行った東城門に砲身を向け、突入する車輌部隊を掩護するための部隊は城壁に小銃やM2重機関銃の銃口を向けた。


「第二課が救出目標と合流!」

「砲撃始め!門を破壊せよ!」


 通信兵から王城内にいる救出部隊である第二課が救出目標である女王派貴族や駐留部隊と合流した報告を受けてそう告げると、城門に砲口を向け待機していた二輌の戦車が砲撃を開始した。


「て、敵襲ぅ!東城門に敵襲だ!」

「迎え撃つ準備を急げ!敵が城壁を上がる前に迎え撃つ準備を―――グアッ!?」

「早く武器を持て!敵がすぐに―――グハッ!?」


 突然の城門に向けての砲撃に城壁上で警戒していた守備兵たちは迎撃準備を整えようと慌ただしく動き始めるが、そんな彼らを襲ったのは車輌部隊の援護を行う部隊からの弾丸の雨だった。


「車輌部隊は突入!一人残さず連れて帰ってこい!」

『了解。全車輌行くぞ!』


 遠原の言葉を受けた車輌部隊は、掩護射撃を受けながらM1128ストライカーMGSを先頭に戦車の砲撃によって破壊された城門を突破して第二課や駐留部隊の回収地点である王城城門に向かった。


「ここまでは順調だが、最後まで成功するのか……」

「それは彼らの実力を信じるしかないな」


 破壊された東城門を抜けて王城へと向かう車列を見送る遠原の呟きに隣で見ていたウッドフォードはそう答えると、最後尾にいるガントラックが見えなくなるまで車列を見つめていた。




「不気味なほど静かだな……銃座から誰か見えるか?」


 M1151装甲強化型ハンヴィーの助手席に座りながら第二城壁内に住む住民の姿が見えない町の様子を不気味に感じた車輌部隊指揮官、ジョセフ・ダグラス三佐は銃座に立つ兵士にそう尋ねた。


「誰も見えません!敵も街の住人も……不気味です」

「あぁ、同感だ。城門まであとどれくらいだ?」

「あと十五分ほどです」

「このまま何も起きなければいいがな……」


 そんなダグラスの願いは、先頭を進んでいるM1128からの無線連絡によって打ち砕かれることになった。


『こちらMGS一号車、敵が進路上にバリケードを作っています!』

「突破しろ!攻撃を許可する!」

『了解!』


 土嚢を積んで簡易的なバリケードを構築して車輌の進行を妨害する守備兵たちに向けて、先頭を進むM1128の搭載するM68A2百五ミリ砲からM393A3粘着榴弾が発射され、バリケードを吹き飛ばすと、隠れていた守備兵が一斉に姿を現した。


「全車輌、攻撃開始!ただし、一般市民もいるから建物に向かっての銃撃はするな!」

『『『『『了解』』』』』


 ダグラスの命令によって各車輌の銃座に搭載されているM2重機関銃や兵士たちの持つSCAR-Lの銃撃が開始され、車輌の進行を妨害しようとした守備兵たちに多数の銃弾が浴びせられた。


「クソッ!建物を撃てないことがこんなに厄介とは……」


 装甲強化型ハンヴィーの窓からSCAR-Lを出して車輌を銃撃する守備兵を撃ち殺していたダグラスだが、家屋にいる一般市民の事を考えて大規模な攻撃が出来ないことに苛立ちを見せていた。


「三佐、敵の攻撃が激しいです!別の道を行った方が……」

「そう思うが、別の道に入らせることが敵の狙いかもしれん!このまま予定通りの通って―――っ!?今の爆発音は何だ!?」


 後部座席でダグラスと同じようにSCAR-Lで反撃する部下の提案に答えた瞬間、先頭から爆発音が響いた。


「MGS一号車、何があった!?」

『う…うぅ…じ、地雷を踏みました……』

「無事なのか!?被害を知らせ!」

『運転手が重症です。自分と砲手も負傷しました……』

「分かった。ガントラック一号車、MGS一号車の乗員を移乗させろ。MGS一号車は破壊。他の車輌はMGS二号車を先頭にして緊急ルートで城門に向かう!」

『『『『『了解!』』』』』


 予定されていた王城へ続くルートにはまだ地雷が敷設されている危険性があると判断したダグラスは、MGS二号車を先頭にして緊急時に予定されていたもう一方の王城へ続くルートへと進むように告げた。


『クソッ!どこもかしこも敵だらけだ!』

『敵の銃撃が激しい!城門に着く前にお陀仏になっちまう!』

『三名負傷!三名負傷した!』

『一名戦死!即死だ!頭を撃ち抜かれた!』

「泣き言は聞きたくない!つべこべ言う前にスピードを出せ!」


 悲鳴にも近い通信のやり取りを無線機で行う兵士たちをダグラスは一喝すると、車列にスピードを上げるように指示を出した。


『こちら救出部隊、城門に到着。車輌部隊はまだか?城内守備兵が集まってきている!』

「こちら車輌部隊指揮官のダグラス三佐だ。敵のせいで少し遠回りをしているが、あと十五分ほどで到着する。それまで堪えてくれ」

『出来るだけ早く頼む。こちらも長くは持たない……』

「了解」


 城内にいる救出部隊からの連絡を受けたダグラスはそう告げて通信を終えると、再び窓からSCAR-Hの銃身を出して攻撃してくる守備兵を倒すことに専念するのだった。




 中庭でMH-47Gに女王派貴族を搭乗させて王城を脱出させた救出部隊と駐留部隊は、中庭から城門に移動すると、城門一帯を確保して城内守備兵の攻撃に備えて簡易的な防衛線を構築していた。


「回収する車輌部隊はあと十五分で到着する!それまで持ち堪えろ!」

「右から敵が来るぞ!」

「撃て、撃て、撃て!敵を近づけるな!」


 城門一帯を確保し防衛線を構築してから数分後、態勢を整えた城内守備兵が城門付近に集まり救出部隊や駐留部隊と交戦が開始された。


「この城から誰一人として生きて帰すな!」

「一人残らず討ち取れぇええ!」


 城内の守備兵は犠牲者が増えることも気にせずに叫び声を上げながら銃剣を付けた小銃を構えて突撃するが、第二課の隊員や駐留部隊の兵士による射撃によって鮮血を撒き散らしながら絶命する。


「まだ来るのか!?」

「撃て!これ以上敵を接近させるな!手榴弾を持っている兵士は投げろ!」

「二名負傷!衛生兵!衛生兵!」

「負傷者は中央に運べ!車輌部隊が到着したら先に負傷者を乗せる!」


 犠牲者を増やしながらも突撃を続ける守備兵の姿に悪態をつく駐留部隊の兵士たちは自分のダンプポーチからMK3手榴弾を取り出すと、安全ピンを抜いて突撃する守備兵の集団に向かって投げた。


「ぎゃぁああああ!」

「腕が…俺の腕がぁあああ!」


 守備兵たちの近くで爆発したMK3手榴弾は危害半径が小さいながらも十分にその効果を発揮し、突撃していた守備兵たちの足を止めることに成功した。


「敵の足が止まった今がチャンスだ!撃ちまくれ!」


 第二課の隊員や駐留部隊の兵士たちは、それぞれの持つMK416や八九式小銃に装着されている三十発装填の弾倉を撃ち尽くす勢いで弾をばら撒いた。


「一尉、そろそろ弾薬が尽きます!」

「駐留部隊の方は……?」

「こちらもギリギリだ。籠城戦で相当量の弾薬を消費していたからな……」


 部下からの報告と是枝の言葉に、予想以上の攻撃に負傷者の数が増えてじりじりと追い詰められていることに宮崎は焦っていた。


「車輌部隊はまだなのか……」


 計画では車輌部隊の到着と同時に開かれる城門に宮崎が視線を向けた瞬間、城門が重い音を立てて開き始めた。


『待たせたな!たった今、到着した!』

「車輌部隊が到着した!負傷者を急いで車輌に乗せろ!」


 開かれた城門の先に車輌部隊を確認した宮崎がそう告げると、腕に赤十字の腕章を付けた衛生兵たちが担架に寝かせられた負傷兵たちをガントラックに乗せ始めた。


「全員、互いをフォローしながら下がれ!」

「車輌部隊は後退する味方を援護!敵を近づけさせるな!」


 小銃を撃ち続けながら後退を開始する第二課や駐留部隊の姿を見た守備兵たちが好機だと思い再び突撃を行うが、車輌から降車した兵士たちの小銃や車両に搭載されているM2重機関銃の援護射撃によって犠牲を増やすだけだった。


「一人も残すな!急いで乗車しろ!各班長は班員を確認しろ!」

『一班確認!』

『二班確認!』


 車輌部隊からの援護射撃を受けながら第二課の隊員は班ごとに車輌に乗車し班長は全班員がいることを確認すると、無線で宮崎に全員がいることを報告する。


『救出部隊の乗車を確認!駐留部隊は……?』

『こちらも確認した』

『任務成功!これより離脱する!』


 第二課と駐留部隊の乗車完了の報告を受けたダグラスはそう叫ぶと、全車輌は車列を襲おうとする守備兵に銃撃を続けながら離脱を開始した。


「三佐!敵が来る時よりも多い!」

「撃ち続けろ!何としてでも生きて帰るぞ!」


 銃座でM2重機関銃を撃ち続けていた兵士の悲鳴にも近い報告を聞いたダグラスは、兵士を一喝すると車列にスピードを上げるように命令した。


『正面にバリケード!砲撃でも突破は難しいと思われます!』

「クソッ!砲撃して突破口を作れ!何としてでも突破する!」

『バリケードに野砲を確認!』

「何っ!?二号車、回避だ!回避しろ!」


 先頭を進むMSG二号車から野砲の存在を知らせれたダグラスが慌てて回避を告げた瞬間、数発のミサイルがバリケードに着弾した。


『こちらキャバルリー1。これより車輌部隊を掩護する!』

「キャバルリー1、こちら車輌部隊指揮官のダグラスだ。援護に感謝する。しっかり守ってくれよ」

『任せときな』

「全車輌へ通達。上空を心強いガーディアンがついてくれた。あとは全速力で東城門まで突っ走るぞ!」

『『『『『了解!』』』』』


 助手席の窓から上空を飛ぶキャバルリー1―――AH-64Dアパッチ・ロングボウの姿を確認したダグラスは無線で各車輌にそう告げると、さらにスピードを上げて東城門まで走り味方の勢力圏内へと離脱した。


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