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蒼龍国奮戦記  作者: こうすけ
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第三十四話

アクリシア王国領ダルティア

ダルティア沖 第一海兵遠征団


 第二航空打撃群による制空権奪還が達成された翌日、第一海兵遠征団を乗せた「ワスプ」級強襲揚陸艦、「ワスプ」と「エセックス」を編入させた第二水上打撃群がダルティア沖へと到着し、三時間にわたる艦砲射撃が行われてから二隻の強襲揚陸艦から発進した六隻のLCAC-1級エア・クッション型揚陸艇やAAVAAVP7A1 LAM、EFVが教皇国軍と神の使いし軍団が砂浜に配置した大砲や野砲、榴弾砲のによる激しい砲撃を受けながらも海上を邁進していた。


『上陸まであと一分』

「全機、システムの最終チェックを行え。戦場のど真ん中で立ち往生だけは勘弁だからな」

『『『『『了解』』』』』


 海岸に向かうLCACの二隻に四機ずつ搭載された戦術人型機動兵器「キャンサー」の第一機甲歩兵小隊長、笠井義信二尉の命令によってキャンサーに乗るパイロットたちは武器システムやレーダーシステムの最終チェックを行う。


「しかし、敵の歓迎も激しいですね」

「あぁ…艦砲射撃で大半は吹き飛んだと思ったが……」

『あまり効果はなさそう…ですね』

「上陸後は激しい戦闘が予想される。武器システムのチェックは念入りにやっておけ」

『了解です』


 砂浜に展開している敵部隊の攻撃によっていくつもの水柱を上げる海面の映像を正面のメインモニターで見ていた二番機に乗るアレックス・バーネス一曹の言葉に、笠井も第二水上打撃群による艦砲射撃の効果があまり出ていないことを不安に思った。


「任務の確認をもう一度するぞ。我々は敵陣地の側面に上陸、そのまま歩兵部隊、装甲部隊と協力して敵陣地に向けて前進する。この戦いは我々の初陣でもあり、このキャンサーの実用性を示すいい機会だ、多くの戦果を出せ」

『第一機甲歩兵小隊に通達、上陸まで三十秒』


 操縦室からの報告を聞き流しながら上陸の瞬間を待つ笠井たちの上空を、「ワスプ」、「エセックス」から発艦したAH-1Zヴァイパーが敵火点制圧のために砂浜に向かう。


『EFV八号車が撃沈!』

『アムトラック十二号車に命中弾!撃沈を確認!』

『クソッ!水上打撃群の連中は何をしていた!?砂浜は砲撃したはずだろ!?』


 砂浜に近付くにつれて敵の砲撃も激しくなり砂浜に近付いていた上陸部隊にも被害が出始め、ヘルメット下に装着されているヘッドセットからは味方車輌に乗る兵士たちの怒号が流れていた。


『着岸!援護射撃開始!』


 LCACが砂浜へと乗り上げる衝撃を感じると同時にLCACに搭載されたM2重機関銃、Mk19自動擲弾銃による援護射撃が開始され、一足早く攻撃を開始していたAH-1Zヴァイパーの攻撃と合わさり砂浜は硝煙と砂埃で満たされた。


『上陸開始!繰り返す、上陸を開始せよ!』

「行くぞ!」


 LCACのスカートが完全に地面に接地し前部のランプが開かれたのを確認し、笠井が操るキャンサーはブッシュマスターⅢを改造した三十五ミリ小銃を撃ちながら砂浜への上陸を果たした。


「行けぇ!絶対に止まるな!」

「三名負傷!三名負傷!」

「小隊ごとに行動!隊列を崩すな!」

「二時方向に敵機関銃陣地!」


 第一機甲歩兵小隊と同じように砂浜に乗り上げたLCACから天井部の銃架にM2重機関銃やMk19自動擲弾銃を搭載したM1151と人員輸送モジュールで待機していた兵士たちが上陸し、砂浜に展開した。


「水瀬、二時方向の機関銃陣地を制圧しろ!歩兵部隊の前進の邪魔だ」

『了解!』


 MG42機関銃と簡易銃架に乗せたMG131機関銃を撃ちまくり歩兵部隊の前進を阻んでいた機関銃陣地に対して、指示を受けたキャンサー三番機パイロットの水瀬瞳一等陸士はモニターで陣地の位置を確認して三十五ミリ小銃の銃口を向けると引き金を引き、陣地に大量の三十五ミリ弾が降り注いだ。


「敵陣地の制圧を確認。歩兵部隊は前進せよ」

『支援に感謝する』

『司令部から第一機甲歩兵小隊、第二機甲歩兵小隊は敵防衛線正面を攻撃。敵陣地を突破せよ』

「了解。第二機甲歩兵小隊は第一機甲歩兵小隊に続け」

『了解』


 二個目の弾倉を撃ち尽くした笠井は弾倉を交換し終えると、別なLCACに乗って砂浜に上陸した第二機甲歩兵小隊と共に抵抗を続ける防衛線正面に向かって射撃しながら前進を始めた。


『後続部隊も無事に上陸を始めたようだですね』

「余所見をするなバーネス一曹。敵の魔導兵器がいつ出てくるか分から―――『一時方向から敵魔導兵器!』お出でなさったぞ!」


 報告された方向にカメラが向けられ、コックピットのメインモニターにはスマートな人型に近いキャンサーとは違いずんぐりとした卵型の魔導兵器が五体近付いているのが確認された。


「卵みたいな機体だな……全機へ、第一撃は中距離多目的誘導弾で行う。誘導弾の着弾と同時に銃撃。敵の武装である魔砲には注意しろ」


 部下や第二機甲歩兵小隊に指示を出しながら笠井もタッチパネルを操作し、腰部に左右一基ずつ搭載されている中距離多目的誘導弾を選択した。


「発射!」


 笠井の号令によって八機のキャンサーから一発ずつ多目的誘導弾が接近する魔道兵器に向けて発射された。


『魔導兵器三体に命中。二体は引き続き接近してきます』


 胴体や頭部に中距離多目的誘導弾を受けた三体の魔導兵器が黒煙を上げ火花を散らしながら膝から崩れ落ちるように倒れるが、前を進んでいた三体が盾になり後ろを進んでいた二体は一瞬だけ動揺する素振りを見せたがすぐに魔砲を構えて前進を再開した。


「撃ち方始め!絶対に歩兵部隊に近づけるな!」

『隊長、敵魔導兵器後方に重装騎兵と重装歩兵を確認!』

「第二機甲歩兵小隊は後方の敵部隊を掃討せよ」

『了解』


 魔道兵器の武装である魔砲から青色の魔力弾が撃ち出され、キャンサーの周りに着弾する中で笠井たちが乗るキャンサーも三十五ミリ小銃を撃ちまくり魔導兵器に多数の三十五ミリ弾が命中し、その何発かがコックピットを撃ち抜き魔道兵器を沈黙させた。


「我々も重装騎兵と重装歩兵の掃討を開始する」

『『『了解』』』


 笠井は接近していた魔道兵器二体が沈黙するのを確認すると、いくつかの小集団に分かれて雄叫びを上げながらキャンサーや後ろの歩兵部隊に迫る重厚な鉄の装甲で馬を覆った重装騎兵と方型の鉄楯を構える重装歩兵に三十五ミリ弾を浴びせる。


「ぎゃあぁぁぁぁ」

「隊長ぉ!ラースが!」

「馬の足を止めるな!どんなに犠牲が出ようと敵の所まで駆け抜―――」

「た、隊長ぉおお!?」


 普通の歩兵や騎兵よりも装甲を厚くした重装騎兵や重装歩兵だったが、キャンサーの小銃から撃ち出される三十五ミリ弾を防ぐことは出来ず直撃を受けた兵士は肉塊へと変えられ鮮血や肉の破片が周囲に飛び散る。


『―――隊長!十時方向から魔道兵器が……!』

「何っ!?」


 敵歩兵部隊の掃討を行っていた笠井に四番機に乗るリーヴス陸曹長が警告し、笠井が警告された方向を見ると三体の魔導兵器が魔砲を構えて自分たちに向けて魔力弾を発射しようとする光景がモニターに映し出されていた。


「クソッ!間に合え……!」


 不意を突かれる形の攻撃に笠井は舌打ちして小銃を構え直して魔導兵器を撃とうとした瞬間、突如飛来した中距離多目的誘導弾によって胴体が爆発した。


『笠井、油断し過ぎじゃないか?』

「古賀か……助かったぞ」


 笠井たちを狙っていた魔導兵器を破壊したのは笠井たちの後に上陸した第四機甲歩兵小隊の小隊長で笠井の同期でもある古賀和久二尉だった。


『貸しにしとくぞ。あとで何か奢れよ』

「分かったよ。お前たちも上陸したのか」

『あぁ。すでにキャンサーもお前たち含めて一個中隊が上陸した』

「そうか…ならさっさと終わらせるとしよう」

『あぁ』


 第四機甲歩兵小隊と合流し三個機甲歩兵小隊となり迎撃に出てくる敵兵士や魔導兵器を破壊しながら敵主力の陣地が見える位置まで来ると、敵の野営陣地から大量の黒煙が上がったのを確認することが出来た。


「ダルティア基地も反撃を始めたようだな」

『こちら司令部。ダルティア基地からも反撃部隊が出撃した。全部隊、側面からの攻撃を開始せよ』

「了解。全機、行くぞ!」


 司令部からの通信を受けた笠井がそう告げ、三十五ミリ小銃を撃ちながら前進を開始する機甲歩兵小隊と同じように戦車や装甲車も砲撃、銃撃を行いながら正面と側面からの攻撃に動揺する敵陣地に攻め込んだ。




 


『最終弾ちゃーく!今ッ!』

「全部隊行くぞ!これまでの借りを利子を付けて返済してやれ!」

「「「「「おぉー!」」」」」


 反撃部隊指揮官の言葉に全兵士が力強く答え、これまで基地で待機していた一〇式戦車や九六式装輪装甲車、M1128ストライカーMGSなどの装甲車輌が海兵遠征団からの攻撃によって混乱する敵陣地に出撃し、その上空を誘導弾を搭載したF-15EやA-10が敵陣地に向かって通り過ぎた。


「敵の魔導兵器は図体はでかいが装甲は装甲車並みだ!魔導兵器が出現したら慌てず戦車の支援を待て!」

『二時方向から敵魔導兵器!数三!』

「第二戦車小隊、対処せよ。外すなよ」

『了解』


 魔砲を構えて反撃部隊に接近する魔導兵器に右翼を進んでいた一〇式戦車四輌の砲塔が一斉に回頭し砲身が接近する魔導兵器に向けられると瞬間、砲身から発射されたAPFSDS弾は寸分違わず魔導兵器の胴体に命中し、コックピットを貫いて穴をあけた。


「敵は浮足立っている!敵防衛線をこのまま突破、海兵遠征団との合流を目指す!」

『『『『『了解!』』』』』


 迎撃に出た魔導兵器が一瞬にして無力化された光景を見た教皇国軍兵は一気に恐慌状態に突入し、武器を捨てて逃げ始めた兵士たちを追撃するように戦闘車輌を先頭に押し立てて反撃部隊が敵防衛線を突破した。


「逃げる敵には構うな!このまま敵本陣を―――っ!?喰らったか!?」

「砲塔に一発喰らいました!ですが、戦闘に支障ありません!」

「よし!目標、十一時方向の敵戦車!今のお返しをしてやれ!」

「了解!」


 車長の命令に従い砲手はタッチパネルを操作して四十四口径百二十ミリ滑腔砲内にAPFSDS弾が装填されると指示を受けた目標―――塹壕にダグインしていたパンター戦車に照準を合わせる。


「照準よし!」

「撃てぇ!」


 砲手の言葉に間髪を入れず車長がそう叫び、砲身から放たれたAPFSDS弾は初弾でパンター戦車の砲塔を貫通すると搭載していた弾薬に誘爆し、砲塔を吹き飛ばして車体を炎上させた。


「よくやった!このまま敵本陣に―――『三時方向から魔導兵器……!』―――違う!あれはキャンサーだ!全部隊に通達、三時方向から接近するのは味方の戦術人型機動兵器だ!攻撃するな!繰り返す、接近するのは味方だ。攻撃するな!」


 敵防衛線を突破し側面からの攻撃を行っていたキャンサーを擁する海兵遠征団と合流した反撃部隊は、敵司令部を中心にして神の使いし軍団の戦車や火砲を集中的に配備した採取防衛線を突破し敵司令部を占領し、ダルティア基地に襲来した敵強襲軍の壊滅させたのだった。


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