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蒼龍国奮戦記  作者: こうすけ
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第二話

蒼龍国 首都:蒼龍府

蒼龍国軍統合本部 総帥執務室



 国名が「蒼龍国」と決まって三ケ月が経過し、この間に祐樹は軍事偵察衛星とGPS衛星の打ち上げ、ICBM発射基地の設置、本土以外の島の要塞化や空軍基地の設置等を行って蒼龍国は強力な軍事国家となっていた。


「マスター、海軍艦艇の改装状況の報告書と弾薬生産の報告書をお持ちしました」

「あぁ、有難う刹那」


 刹那から報告書を手渡され、蒼龍国海軍の艦艇の改装状況について記されている報告書に目を通し始めた。


「予定より早く改装工事は行われている様だな……」

「はい、ドック責任者の大谷莉子技術中将が工員を総動員して昼夜兼行で改装を行っていますから」


 蒼龍国海軍では、祐樹が召喚した大和型戦艦、長門型戦艦、金剛型戦艦等を筆頭とした旧日本海軍艦艇は軍港の乾ドックで機関や対空、対艦兵装、電子装備の近代化改装が急ピッチで行われていた。


「しかし、赤城等の旧日本海軍の空母のアングルトデッキ化と武装強化に時間が掛かっているそうですが、それも今月以内には終了すると大谷技術中将から報告を受けました」

「そうか。それなら戦力化も早く出来そうだな」


 祐樹はそう言うと、目を通していた艦艇の改装状況の資料を置き、もう一つの弾薬の生産状況を記した資料に目を通し始めた。


「弾薬工廠で生産されている各弾薬の生産と、食糧生産も軌道に乗ったか……」

「はい、小銃弾から誘導弾まで全ての弾薬は生産ラインが軌道に乗りました。食料も順調に生産されており、心配はいりません」

「そうか……なら、そろそろ動きだす頃合いだな……刹那、各軍の幕僚長に招集を掛けてくれ」

「分かりました。場所は第一会議室で宜しいですか?」

「あぁ、構わない」


 祐樹の言葉に刹那は静かに頷くと、足早に総帥執務室を後にした。



第一会議室



 招集が掛けられてから数十分後、第一会議室には陸軍幕僚長である優奈、海軍幕僚長の汐里、空軍幕僚長の紅葉と幕僚達が席に就いていたが、扉が開き、刹那を伴った祐樹が姿を現すと一斉に立ち上がり敬礼を行う。


「ご苦労。座ってくれ」


 第一会議室内に刹那を伴って入室した祐樹は優奈達に着席する様に促し、祐樹は全員が座るのを確認してから口を開いた。


「さて、先ずは急な招集にも拘らず全員集まってくれた事に感謝する。今日集まってもらったのは、これからの行動を伝える為だ。我が国の兵器や弾薬の生産も軌道に乗り、国としても形になったので、俺は一週間後、親衛軍二個小隊を連れて大陸に行く事にした。その間を……優奈、君に任せたい」

「わ、私ですか!?」


 祐樹の突然の言葉に、同席していた幕僚達から騒めきが起こり、指名された本人である優奈はまさか自分が指名されると思っていなかったので、突然の指名に驚きの声を上げた。


「総帥、質問宜しいでしょうか……?」


 祐樹の突然の発表に驚きを隠せない各軍の出席者だったが、その中で普段通りの落ち着いた口調で汐里が手を上げた。


「何だ……?」

「本来、総帥がいない間は副総帥である更衣副総帥が引き継ぐと思うのですが、そうならないと言う事は、更衣副総帥も御同行なさるのですか?」

「その通りだ。刹那は、俺の補佐として一緒に大陸に行く事になっている。と言う事だ、やってくれるか……?」


 祐樹から指名を受けて本当に自分で良いのかと悩んでいた優奈だったが、決心したように顔を上げ、静かに頷いた。


「分かりました。ここの事はお任せ下さい」

「紅葉と汐里も協力して優奈を補佐する様に。俺が無事に帰るまでここの事は任せたぞ」

「了解しました」


 優奈の言葉に祐樹は満足そうに頷くと、他の周りの幕僚達にも三人に協力する様に告げて、会議は終了となった。



蒼龍国 首都:蒼龍府

蒼龍国空軍 第一空軍基地



 祐樹が大陸調査に行く事を告げてから一週間が経ち、蒼龍国の首都蒼龍府にある第一空軍基地にはV-22やCH-53Eがローターを回し、離陸の時を待っていた。


「それじゃあ優奈、後の事は任せたぞ」

「はっ、お任せ下さい」


 優奈にそう告げて後を任せると、祐樹は刹那を伴ってV-22に乗り込み、それを見計らい物資を満載した数十機の輸送ヘリコプターが離陸し上空で編隊を組み終えると、大陸へと向かった。


 大陸に向かった部隊は刹那が親衛軍の中から選抜した精鋭二個小隊六十名と、八二式指揮通信車一輛、九六式装輪装甲車五輛、ハンヴィー(M134搭載型)四輛、七三式中型トラック八輛の計十五輛で編成されおり、これらの装備は全てCH-53EやV-22を使用して大陸に運ばれていた。


「マスター、先ずはどうするのですか?」

「取り敢えず、海岸に物資と車輛を降ろして点呼を取ってから街道に従って進んで、街を目指そう」

「了解しました」


 刹那とそう話している内に、編隊は海岸近くに接近しており、車輛を吊り下げているCH-53Eは降下してV-22で先に到着していた隊員達によって車輛に取り付けられている金具を取り外す作業が開始されていた。


『総帥、本機も着陸します』


 機長が静かにそう告げると、祐樹が乗るV-22の含めた数機が降下を始め海岸に着陸すると、後部ランプが開き、その中から素早く親衛隊員が辺りに展開し警戒しつつ物資を機体から降ろしていた。


「刹那、物資の積み替えの作業は後どれ位で終わりそうだ?」

「はっ、後二十分ほどで完了すると思います」

「そうか……なるべく早く終わらせるようにしてくれ。こんな所をこの世界の住人に見られたら厄介だからな」

「了解しました」


 祐樹の言葉に刹那は頷き、物資を車輛に移し替えている隊員達の許に近寄ると物資の積み替えを早く終わらせるように指示を出し、祐樹自身も物資を移し替える作業を手伝い、当初の予定よりも十分早く物資の積み替えが完了すると、祐樹達を輸送したヘリは再び編隊を組み直し、基地へと戻って行った。


「第一小隊整列完了!」

「同じく、第二小隊整列完了しました!」


 物資の積み替え作業が終了すると部隊は小隊ごとに整列、点呼を取り全員がいる事を確認すると祐樹の命令を待っていた。


 祐樹の目の前には、蒼龍国陸軍兵が着用している迷彩服三型に防弾チョッキ三型、八八式鉄帽という出で立ちでは無く、黒を基調とした軍服を身に纏い、小銃も六四式小銃では無く、HK417(16インチモデル)を持つ兵士達の姿があった。


 この整列している部隊が蒼龍国総帥親衛軍である。簡単に言うなら、ナチスの武装SSの様な組織で、祐樹にしか指揮権が無く、所属している兵士は刹那が選抜した祐樹信奉者によって固められている。


「全員、祐樹総帥に対して捧ぇー銃!」


 刹那の号令で整列していた兵士達は一斉に銃を構え、視線を祐樹に向けた。


「全員直れ。これより我々は大陸の探索へ出発する……無いとは思うが、現地住人に対する暴力や略奪は絶対に許さない!銃火器の使用も俺か、各隊長の許可が無い限り発砲は禁ずる。以上、全員乗車!」

「第一分隊集合!」

「第二分隊集合!」


 祐樹の言葉と同時に綺麗に整列していた兵士達は分隊ごとに集結し、指定されていた車輛に乗り込み始めた。


 祐樹自身も自分の乗る八二式指揮通信車に向かうとそこには、後部ハッチを開けて祐樹を待っている刹那の姿があった。


「どうぞ、マスター。お気を付けてお乗りください」

「有難う、刹那」

「いいえ、これもマスターの為ですから」


 祐樹の言葉に刹那は微笑みながらそう言うと、祐樹が車内に入ったのを確認し、自身もその後に続いて車内へと入った。


「マスター、各分隊の準備が完了しました。御命令があれば何時でも出発できます」

「了解……全車、出発!」


 祐樹の言葉で、兵士達を乗せ待機していた車輛は素早く車列を組むと衛星で確認された森の中にある村に向かって進み始めた。



蒼龍国 首都:蒼龍府

蒼龍国軍統合本部 陸軍幕僚長執務室



「予定通りなら、総帥達は大陸の調査を開始した時間ね……」


 書類に目を通していた優奈は不意に時計を見てそう呟いた。


「そうね、何にも連絡が無い所を見ると無事に出発したみたい」

「それにしても汐里はよく、刹那副総帥まで総帥について行くって分かったわね」


 優奈の呟きに答えた汐里に対して紅葉がそう言うと、汐里は書類に目を通したまま口を開いた。


「別に、あの刹那副総裁の事だから絶対に総帥について行くと思っただけよ」

「確かに、何処に行くにしても刹那副総帥は総帥について行くからそう考えられるのも当然か……」


 汐里のその言葉に紅葉は納得したように何度も頷いた。そんな二人の話に黙々と書類に目を通していた優奈も一区切りつけて参加する。


「でも確かに、私達も総帥に忠誠を誓っているけど親衛軍の総帥に対する忠誠度は別格ですからね」

「親衛軍は刹那副総帥直々に選抜しているからね……親衛軍が編成されて司令官に刹那副総帥が任命された日の夜に刹那副総帥の部屋に行ってみた?ベッドの上で飛び跳ねて凄い喜びようだったわよ」

「「あぁ~それ、私も見た」」


 この談笑は暫く続き、談笑を終えると、再び三人送られてきた書類に目を通し始め、黙々と執務を済ませるのだった。



バレンシア大陸 暗闇の森

蒼龍国軍大陸調査隊



 海岸を出発して約四時間が経過し、祐樹が乗る八二式指揮通信車では折り畳み式のテーブルを出し、偵察衛星が撮影した衛星写真を基に作成された地図を見ながら行動予定を話し合っていた。


「現在の地点から一番近いのはこの村だと思われます。この調子で行けば、明日には到着出来るかと……」


 刹那が地図の上を指でなぞり、自分達の現在位置と向かおうとしている村の位置を祐樹に告げる。


「そうなると、一日は森の中で夜を明かさないといけないな……そろそろ日も暮れるしここら辺で野営の準備をした方が良いか……刹那、各車輛に停車するように通達。今日はここで野営しよう」

「了解しました。各車輛に通達、全車輛停車せよ。今日はここで野営する」

『『『『『了解』』』』』


 刹那が無線機を掴みそう告げると、各車輛は脇道に逸れて停車し降車すると、テント設営や夕食の準備に取り掛かり始めた。


「刹那、周囲の警戒はどうなっている?」

「はっ、二人一組の編成で周辺警戒に当たらせています。何かあれば直ぐに連絡が入る事に成っています」

「そうか、警戒部隊にはもう一度注意する様に言っておいてくれ。それと、夕食後に行動予定を隊長陣に話すから招集を頼む」

「分かりました。それはそうとマスター、この世界には車が存在しないのに使用しても良かったのですか……?」


 刹那の心配の言葉に祐樹も同意する様に頷いた。


「刹那の心配も分からなくは無い。俺も最初はその事を考えたからな。でも、いざとなったら機動力が必要になる。それに何か言われたら魔法具と答えるさ」

「そうですか。では隊長陣には夕食後、本部テントに集合するように伝えておきます」

「あぁ、頼んだ。それじゃあ、夕食にするとするか……」

「はい、マスター」


 そう言うと、祐樹と刹那は夕食を配っている野外炊具一号へ向かい、夕食を受け取ると兵士達と共に夕食を摂るのだった。


 夕食後、本部テントには刹那から招集命令を受けた隊長陣が集合していた。


「皆集まってもらって済まないな。明日は夜が明け次第この場所を出発し、一番近い村へと向かう。出発前にも言ったが、現地住民とのトラブルは避けるように」

『『『『『了解しました』』』』』


 その後、幾つかの諸連絡をすると解散となり、警戒する部隊を除いて祐樹達は明日に備えて眠りに就くのだった。



翌日

バレンシア大陸 暗闇の森



 昨日の夜に言った通り祐樹達は夜明けと同時に野営地を出発、再び車列を組んで村へ続く道を進んでいた。


「刹那、村まで後どの位で到着しそうだ?」

「そうですね……何も問題が起こらなければ後一時間程で到着すると思われます」


 祐樹の言葉に、地図を見ながら現在位置と目標の村までの距離を測っている刹那は車内に置かれている時計を見てそう答えた。


「予定よりも早いな……昨日の予想ではもう少し掛かりそうだったが……」

「車列のスピードを上げたからでしょう。到着する前には、スピードを落とした方が良さそうですね」


 刹那の言葉に祐樹も頷いた。その時、正面を走っているハンヴィーから連絡が入り、祐樹が無線機を手に取った。


「俺だ。何かあったのか?」

『総帥、目標の村と思われる地点から黒煙が上がっています。それも一や二つでは無く多数です』

「何だと……?」


 祐樹は兵士の言葉を受けてキューポラに立ち、報告された村のある方向を見ると確かに黒煙が上がっていた。


「マスター、本当に火事ではないのですか?」

「火事にしては規模が大きすぎる…….一号車、車列から離れて村の状況を確認してくれ。全車輛、これよりスピードを上げて村へと向かう。警戒を怠るな」

『『『『『『了解』』』』』』


 一号車がスピードを上げて車列から離れた事を確認した祐樹は、念の為に自分の装備の確認作業に入った。



『き、緊急連絡!総帥、応答願います!』


 暫くすると先行していた一号車からからの通信が入ったが、その緊迫した声に祐樹は驚きつつ無線を手に取った。


「俺だ。一体何があった?」

『総帥、む、村が…村が全滅しています……』

「な、何……?もっと詳しく報告しろ」

『はっ、村は何者かに襲われたらしく、見える範囲で生き残っている者は誰もいません』

「……分かった。俺達も後十分程で到着する。とにかく警戒を怠るな」

『了解しました』

「全員聞いたな。車列のスピードを上げろ。それと、村を襲った連中と戦闘になる可能性がある各自戦闘用意を整えろ」


 祐樹が無線で全車輛にそう告げると車輛はスピードをさらに上げ、一号車のいる村へと向かった。

九六式装輪装甲車をCH-53Eで輸送するのは少し無理がありますが、大目に見て下さい。


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