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蒼龍国奮戦記  作者: こうすけ
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第二十四話

私情で、更新が遅くなってしまい申し訳ありません。

ガリシア平原

蒼龍国派遣軍ガリシア基地



 先日行われた反攻作戦によって手に入れたインペリウム教皇国軍の砦を拡張、簡易強化したガリシア基地の作戦司令部テントでは、真田と広瀬、各参謀が作戦台に置かれた敵、味方の情報が書き込まれた地形図を見ていた。


「次の攻略目標はバスティア要塞になりますね……」

「そうね。でも要塞までは少なくても五つの城塞都市が存在するし、アクリシア王国民の事も考えて空爆は控えなければならないし厳しい戦いになるかもしれないわね……」

「偵察衛星を使用して撮影したバスティア要塞の写真です」


 広瀬がそう言うと、作戦幕僚が真田の前に様々な情報が書き込まれた数枚の衛星写真を差し出した。


「画像分析を行ったところ、バスティア要塞はアクリシア王国軍が使用していた時よりも面積は三倍に拡張されています。さらに、要塞の各所に12.8センチ高射砲、10.5センチ高射砲、8.8センチ高射砲、37ミリ機関砲、20ミリ機関砲が設置されており、戦闘ヘリにとって十分に脅威となります」

「……対戦車兵器の存在は分からないのかしら?」

「残念ながらそこまでは解析できませんでしたが、要塞付近には多数のトーチカや塹壕が確認されています」


 司令部要員が写真を基にしながら地形図に新たに判明した敵軍の防衛線を書き込み、そこから今後の侵攻作戦の案を考え始めた。


「やはり、城塞都市を開放しつつバスティア要塞を目指す作戦で行きますか……?」

「街道沿いに行くとすればそうなるわね……でも、敵もそれは予測して防衛線を敷いている……これでは、こちらの負傷者も増えるわね……」


 街道に沿うようにして数十ヶ所に書き込まれている敵防衛線を示す赤い記号を眺めながら、真田は呟くと、作戦参謀が意見具申を行った。


「城塞都市郊外と、街道から外れている地点に限定して敵戦略拠点の爆撃を空軍に要請しましょう。街道の敵は装甲師団を先頭にして侵攻すれば多少は負傷者を減らせると思います」

「そうね……ダルティア基地の空軍に一週間後に空爆支援を行うように要請しなさい」

「了解しました」


 その後も数時間かけて様々な侵攻計画を考え、ようやく侵攻作戦の概略が完成して今日の会議を終了しようとした時、兵士が一人慌てて司令部テントに飛び込んで来た。


「ほ、報告します!対地レーダーが、ガリシア基地に向かって来るミサイルらしき物体を探知しました!」

「ミサイルらしき物体……まさか、V2!?」


 兵士からの報告を受けた真田は、敵が保有していると考えられる武器と自分の頭の中に入っている武器を照らし合わせた結果、ナチス・ドイツ国防軍の兵器で弾道ミサイルの元祖ともいえる兵器の名前が思い浮かんだ。


「間違いなくV2だと思われます。現在、地上部隊は退避、地対空ミサイル部隊が迎撃準備中です!」

「V2発射場の特定は……?」

「偵察衛星を使用して、特定されています」

「その情報を沖合に展開している第一統合打撃艦隊に送信しなさい。艦艇のトマホークで発射場を攻撃してもらいましょう。私達は迎撃に専念しなさい!」

「了解!」


 真田からの指示を受けた兵士や幕僚は直ぐに行動を開始し、迎撃に失敗した時に備えて基地に待機していた部隊と共にガリシア基地から後方に退避した。




 ガリシア基地の対空陣地に設置されている〇三式中距離地対空誘導弾十二基を束ねる対空戦闘指揮所では、指揮官である清水孝治二等陸佐がレーダーに表示される情報を静かに見つめていた。


「目標情報入りました!敵発射場より発射された敵誘導弾を確認!数十」

「中SAM発射用意!」


 清水の命令に従い、射撃管制員がガリシア基地に接近するV2の諸元を入力し、発射準備を整える。


「中SAM発射用意よし!」

「発射!」


 清水の声が指揮所に響き、命令を受けた射撃管制員が発射ボタンを押すのと同時に外に設置されている〇三式中距離空対空誘導弾の発射装置から十発の中距離空対空誘導弾が白煙を吹きながら発射され、陣地に近づくV2へと向かった。


「目標命中まで十秒…九…八…七…六…五…四…三…二……今!」


レーダースクリーンを注視していた電測員が、発射された空対空誘導弾とV2の命中時間を正確に計り、命中したことを告げた。


「敵ロケット弾、八発を撃墜!残り二発は、依然として本基地に接近中!」

「短距離地対空誘導弾発射用意!VADS-1改射撃用意!」


 清水の言葉に従い、指揮所に詰めている射撃管制員や電測員が慌ただしく動き、外に配置されている短距離地対空誘導弾の地対空誘導弾を搭載しているランチャーが空めがけて鎌首をもたげた。


「短距離地対空誘導弾発射用意よし!」

「発射!」


 清水の言葉を受けて射撃管制員が発射ボタンを押すと、二基のランチャーから二発ずつ合計四発の地対空誘導弾が発射された。


「目標命中まで五秒…四…三…二……今!目標誘導弾の全弾撃墜を確認!」

「警戒を怠るな!引き続き警戒を厳とせよ!」


 V2の第一波の全弾を撃墜し、安堵の表情が出る兵士達を一喝した清水は、真田の命令によって情報が送られた沖合にいる第一統合打撃群の攻撃が成功する事を祈っていた。




バレンシア大陸沖合

第一統合打撃群 旗艦:戦艦「大和」



「司令、派遣陸軍の真田大将から支援要請が入りました」

「支援要請……?珍しいな」


 戦艦「大和」艦長である篠原真夜一等海佐の言葉を受けて、艦橋にある司令席に座っていた宮原一真中将が篠原から支援要請の内容が書かれた紙を意外な表情で受け取り、その内容に目を通すと一瞬にしてその表情を変えた。


「参謀長、全戦艦に対してトマホーク発射準備を命令!各空母にもスーパーホーネット一個飛行隊を出して、座標を爆撃する様に伝えろ」

「はっ!」


 宮原から支援要請が書かれた紙を渡され、それに目を通していた第一統合打撃群参謀長、藤堂涼子少将も表情を変えて宮原の言葉に頷くと、艦隊通信を開いた。


「全戦艦に通達!派遣陸軍からの支援要請により、トマホーク発射用意!各空母もスーパーホーネット一個飛行隊の発進準備!これは訓練ではない!繰り返す、これは訓練ではない!」


 藤堂の突然の言葉に「大和」艦内でも動揺する声が上がったが、放送の後に甲高い警報音が館内に響き渡ると、乗員達も実戦だという事を認識し、それぞれの持ち場へと急ぐ。


「それにしても、敵が陸軍に向けてV2を発射するとは……少し驚きでしたね」

「そうだな……敵もV2を使用してきたとなると少しばかり戦いが厳しくなりそうだ」

「司令、全艦のトマホーク発射準備が完了しました。いつでも命令をどうぞ」


 艦橋の窓から空を眺めながら


「神の使いし軍団とやらに蒼龍国海軍の力も見せてやろう。トマホーク発射!」

「全艦、トマホーク発射」


 宮原の命令を藤堂が復唱すると「大和」以下、第一統合打撃群に所属している全戦艦のVLSが開き、五発のトマホークが連続して発射されると、陸軍から送られた敵のV2発射台が設置されている座標に向かうのと同時に各空母から爆装したスーパーホーネットが蒸気カタパルトによって射出され、艦隊上空で編隊を形成すると爆撃目標へと向かった。




V2発射台設置場所

神の使いし軍団 V2運用部隊



「第二射の発射準備を急げ!第一射で敵に相当な被害を与えたはずだ!引き続き徹底して敵の部隊に打撃を与えろ!」


 大佐の階級章を付けた指揮官の言葉に従って、兵士達が素早く発射台にV2ロケットを移し終えると、液体燃料の注入を開始し、第二射の発射が行われようとしていた。


「敵もまさか我が軍がこんな兵器を運用しているとは、考えていないだろう」

「そうだな。今頃どこから攻撃を受けているのか分からなくて、混乱しているに違いない」


 今回のこの攻撃では、V2ロケット四十発を敵の新たな拠点となった砦に向けて集中して発射し、敵軍を壊滅させることになっていた。


「おい、そこ!無駄口を叩く前に少しでも発射時間が短くなるように努力をしないか!」

「「は、はっ!」」


 指揮官の怒号に笑いながら話していた二人の兵士は、慌ててV2ロケットにどこか不備がないか点検する作業に戻った。


「あとどの位で第二射の発射が可能か?」

「あと……一時間ほどで発射は可能だと思われます。大佐、次の第二射は半分の五発で行うのはどうでしょうか……?」

「何……?それは、何か考えがあっての事だろうな?」


 当初の作戦計画とは違う発射方法を告げた副官を睨み付けながらそう告げた指揮官に対して、副官は頷いた。


「第一射の発射から第二射発射の間隔が長すぎます。これでは、敵に猶予を与えてしまいますので、五発ずつ三十分おきに発射すれば少しは発射間隔を短くできると思われます」

「ふむ……貴官の言う事も一理あるな……よし、貴官の言う通りに二回に分けて攻撃を行うとしよう」

「ありがとうございます!では、発射準備に取り掛からせます!」


 指揮官の言葉に笑顔を見せた副官は、発射準備を整えている兵士達に向かって発射する順番の割り振りを行い始めた。


「これで、私の評価も上がるに違いない。そうすれば―――おい!どこの部隊のV2を勝手に発射した!?」

「い、いえ、どこの部隊も発射しておりません」


 作戦の成功を信じて疑わない指揮官は、基地へ英雄として帰り称賛の言葉を想像していたが、突然鳴り響いたジェット音にどこかの部隊が勝手にV2を発射したのだと思い怒声を上げたが、副官を含めた全ての兵士が否定の言葉を口にした。


「何だと!?だが、この音はジェット音では―――」


 副官の言葉に再び怒声を上げようとした指揮官だったが、上空から突っ込んできた“何が”発射準備を整えて指揮官の発射命令を持っていたV2に命中し、命中したことで起こった大爆発に吹き飛ばされた。


「な、何が起こった……」

「て、敵襲です!敵の攻撃で発射準備が整っていたV2が全弾破壊されました!」

「敵襲だと!?」


 爆発に吹き飛ばされたせいで、まだ少し視界がはっきりとしていないが、指揮官が辺りを見渡すと発射台に乗せられて発射するだけになっていたV2の全てが破壊され、瓦礫となった発射台の下にはV2発射の準備を整えていた兵士達の死体が転がっていた。


 指揮官たちは知る由もないがV2を襲ったのは、第一統合打撃群の戦艦から発射されたトマホークだった。トマホークは指定された座標情報とGPS衛星からの情報を使用しながら寸分も狂う事無く目標へと命中したのだった。


「V2は発射台を含めて壊滅しました。撤退のご指示を!」

「……撤退だ。現時点で、ここから撤た―――『敵機だ!敵機襲来!』―――敵機だと!?」


 副官に促されて撤退の命令を副官に指示しようとしたとき、再び攻撃が来ないか上空を警戒していた兵士の一人が、編隊を組みながらこちらに向かって来る多数の航空機の姿を発見した。


「撤退だ!総員、ここから退避しろ!敵の爆撃に巻き込まれるぞ!」

「総員退避!退避ぃー!」


 敵の意図に気が付いた指揮官と副官は、呆然と空を見上げて編隊を眺めている兵士達に叫び、それを聞いて我に返った兵士達も慌てて逃げ始めた。




第一統合打撃群 F/A-18E編隊



「隊長機より全機に告ぐ。我々の任務は、敵ロケット弾発射台の完全破壊だ。生き残っている兵士達には構うな」

『『『『『了解!』』』』』

「全機、投下せよ!」


 隊長の命令と同時に、四十機のF/A-18Eから一機につき十発のMk.83が、トマホークが着弾した事で瓦礫の山となって黒煙を上げている発射台に四百発のMk.83が降り注ぎ、完全に発射台は跡形も無く吹き飛ばされた。


「指定された目標の完全破壊を確認。これより母艦に帰還します」

『了解。任務ご苦労』


 発射台や予備のV2が完全に破壊された事を確認した編隊は、母艦へ作戦が成功した事と帰還することを告げて、空域を後にした。


 敵の発射台と予備の破壊に成功の報告と、空軍からの支援要請の承認の連絡を受けた真田は、祐樹の承認も得て一週間後の午前零時に侵攻作戦「ファイア・ストーム」を発動することを決定し、蒼龍国陸空軍は準備に取り掛かった。


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