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蒼龍国奮戦記  作者: こうすけ
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第十話

昨日は卒業式や友達との打ち上げ等があって、更新が出来ず申し訳ありませんでした

第一統合打撃群 旗艦:戦艦「大和」

「大和」上甲板


「ようこそお越し下さいました。祐樹総帥、刹那副総帥、ヒルデガード陛下。私は、戦艦『大和』艦長の篠原真夜一等海佐であります」


 戦艦『大和』艦長である篠原真夜一等海佐が甲板に上がって来た祐樹達に対してそう告げて敬礼を行った。


「出迎えご苦労。ところで、宮原司令は如何した……?」

「はっ。宮原司令は現在、昼食会準備の陣頭指揮を執っておられます。昼食会までは暫く時間がありますので、私が、この大和の案内をさせていただきます」

「そうか。俺も、改装が終わった『大和』を見るのは初めてだからな。宜しく頼む」

「了解しました。では、こちらへどうぞ」


 祐樹のその言葉に篠原は頷いて祐樹やヒルデガードの前に出ると、甲板を歩き『大和』の案内を始めた。



 速射砲・機関砲群や艦橋に備え付けられたSPY-1Dレーダー等外から見える兵装を案内すると篠原は最後に、前部に二基搭載されている「大和」最大の自慢である45口径51センチ連装砲へと案内した。


「では最後になりますが、こちらが、この『大和』の自慢で、象徴でもある45口径51センチ連装砲になります」

「す、凄い……これが大砲だと言うのですか……」


 この世界の砲は、直撃させるだけで破壊範囲も狭く、船体を破壊して撃沈させると言うよりも設備や乗員を破壊、殺傷させて航行能力を喪失させる事を目的としているので、艦を沈める事を前提としている「大和」の主砲の大きさにアクリシア王国側は恐怖感を抱いていた。


「これが、51センチ砲か……真夜、主砲と射撃統制システムの連動は如何だ?」

「はい、これまで行った射撃訓練では、最大射程で九割が初弾命中を記録しており、残り一割も次弾で命中を記録しております」


 驚いているアクリシア王国の面々を後目に、祐樹は篠原に主砲の命中精度の事を尋ね、篠原から伝えられるその結果に満足そうに頷いていると、篠原の胸ポケットに入れられていた携帯が音を立てた。


「―――私だ。……そうか、分かった。総帥、昼食会の準備が整ったので、士官室にご案内致します」


 篠原はそう告げて祐樹達を艦内へ案内すると、昼食会の準備が整っている士官室へと向かった。



「大和」第一士官室



「お待ちしておりました。祐樹総帥、刹那副総帥、ヒルデガード陛下。第一統合打撃群司令官の宮原一真中将であります。昼食会の準備とは言え、お出迎え出来なかった事をお許し下さい」


 祐樹達が篠原に連れられて案内された士官室に入室すると、中で待機していた男性将官―――第一統合打撃群司令官である宮原一真中将が祐樹達に敬礼を行った。


「気にする事は無い。昼食会の準備が忙しかったのだろう。礼を言わなければならないのはこっちの方だ」


 敬礼する宮原に対して祐樹はそう言って答礼すると、昼食会の準備の為に今まで頑張っていた宮原に労いの言葉を掛けた。


「勿体なきお言葉です。さぁ、席にお掛けになって下さい。食事にしましょう」


 宮原の言葉に祐樹達は頷くと、蒼龍国側とアクリシア王国側に別れて対面する形で席に着いた。


「この艦の武装でも驚きましたが、これが船の中なのですね……」


 ヒルデガードが驚きの声を上げるのも、ヒルデガード達が知る船とは木造船であり、外洋航海を目的としているだけで、居住性などは二の次で生活環境は最悪であった為、「大和」の様に生活環境が綺麗に整っている船は初めての経験だった。


「陛下、お食事の際はお気を付け下さいませ。船乗りの食事は不味いと相場は決まっておりますので……」

「はははっ、安心して下さい。『大和』の食事はあなた方も満足出来ると思いますよ」

「ふんっ、お前達の言葉は信用出来ん。ダディス宰相のお言葉通り、船の食事は昔から不味いと相場は決まっておる」


 食事が運ばれて来る前にヒルデガードの隣に座るダディスがそう耳打ちするのを見て、宮原が笑いながらそう告げ、ダディスの隣に座るゲイルズ公爵が尊大な言い方で宮原に悪態を吐いた時、前菜を乗せた台車を押している給仕の女性士官が入室した。


「前菜の牛肉のカルパッチョになります」


 容姿端麗な女性士官達は、簡単に料理の説明をしながら一人一人の前に前菜の盛られた皿の配膳を終えると、祐樹に一礼して士官室を後にした。


「ま、まさか、この料理は、この船の中で調理したのか?」

「こ、これ程の料理が船の中で出来るとは……」


 先程まで食事を船の中で摂る事に悪態をついていた貴族達も、配膳された前菜を目の前にして驚きの声を上げていた。


 そう言うのも船の中での食事とは、固く焼かれたパンやビスケット、塩漬けされた肉などのイメージが強くここでの食事もそれに準じた物が出されると思っていたが、実際には牛肉と新鮮な色とりどりの野菜が皿に丁寧に盛り付けられている前菜が出されたからだった。


「さぁ、お食べ下さい。味も美味しいですよ」


 宮原からそう促され、ヒルデガード達は順番に並べられているナイフとフォークを手に取り、前菜を口へと運んだ。


「美味しいです!こんな美味しい料理は宮廷でも食べた事がありません」

「陛下のお気に召した様で、我々としても嬉しい限りです。作っているシェフたちも陛下の言葉を貰ったら喜ぶでしょう」


 ヒルデガードは料理の美味しさに驚きの声を上げ、先程まで、船で食事を摂る事に嫌悪感を露わにしていた貴族達も料理の美味しさに言葉を失い、祐樹はそんな光景に笑みを浮かべながら、ヒルデガードの言葉に答えていた。


「さぁ、昼食は始まったばかりです。この後も料理をお楽しみ下さい」


 宮原がそう言い、前菜で驚いていたアクリシア王国側だったが、次々と運ばれて来る料理に次第に驚く事も無くなり、料理に舌鼓みを打って楽しみ、昼食会は両国とも平和的なムードで終了し、祐樹達は再び長官艇に乗り込んで王城へと戻った。



アクリシア王国 王都:エレスティア

王城 客間



「ふぅ、何とか昼食会が成功してくれて良かった。しかし、女王派の貴族との昼食会で無かったのが悔やまれるな……」

「はい。女王派の貴族の方々で昼食会を行えば、我々の今後の行動も幾分は、やり易くなったのですが……」


 客間のソファーに座り、昼食会が無事に成功した事に対する安堵と、昼食会の相手が女王派の貴族では無く、宰相派の貴族だった事に対する後悔の声を漏らし、その祐樹の言葉に刹那も首肯した。


 祐樹達の当初の目論見では、ヒルデガードを含めた女王派の貴族達と昼食会を行い、同盟締結をよりスムーズに行おうと考えていたのだが、実際には、昼食会に参加したのはダディス・ロ・キースを長とする宰相派の貴族だった為、祐樹達の考えは破綻してしまったのだった。


「多分、同盟締結の交渉の席には、女王派では無くて宰相派の貴族がつく事になるだろう。こちらも充分警戒して交渉に挑むとしよう。ところで小夜、俺達が贈った物資はあの後どうなっているか分かるか?」


 祐樹は刹那の隣に静かに立っていた小夜に視線を向けてそう尋ねると、小夜は静かに頷いて数枚のプリントを祐樹に差し出した。


「我々が贈った物資は、宰相であるダディス・ロ・キースが全て管理し、国民に配給する事に表向きはなっていますが、実際は、商人に横流しを行っている様です」

「横流しか……」

「はい。これでは、物資は国民に届きません」

「つまり、我々がどれ程アクリシア王国に物資の支援をしようと、あのジジイがいる限り物資が国民に届く事は無いと言う事か……」


 小夜から手渡されたプリントの束に目を通しながら、小夜の説明を聞いていた祐樹はそう呟き、深い溜息を吐くと、「主様……」と小夜が口を開いた。


「どうした、小夜?」

「主様、執行部にあの男の暗殺許可を出して下さい。必ずやアクシリア王国に気付かれる事無くあの男を闇に葬って見せます」


 祐樹の目の前に進み出てそう言う小夜は静かな笑みを顔に浮かべていたが、光の消えたその瞳は笑っていなかった。


「駄目だ。小夜達執行部の実力は認めているが、万が一という事がある。執行部は時期が来るまで情報収集に専念してくれ。いいな?」

「は、はい。主様……」


 小夜の頭を優しく撫でながら祐樹がそう言うと、小夜は瞳に光を取り戻し、顔を赤く染めながら頷いた。


「しかし、あのジジイも何をして来るか分からないからな……汐里、第一統合打撃群の警備状況はどうなっている?」

「はっ、保安部が第一種警戒態勢で艦艇の警備に当たっています。しかし人手が足りないので、乗員の中からも特別警備隊を編成して警備に当たらせています」

「そうか。奴等が艦艇を襲う可能性もある。警戒を怠らない様に言っておいてくれ」

「了解しました」



王城 宰相室



「う~む、蒼龍国があれ程の海軍を保有していたとは……」


 宰相室で椅子に座りながらその様に唸るアクリシア王国宰相ダディス・ロ・キースは新興国家だという理由で見下していた蒼龍国に対して思考を巡らせていた。


「宰相、クーデター計画を大幅に見直しますか……?」

「うむ。確かに見直さなければなるまい。となるとやはり、蒼龍国の者もクーデターに参加させたいな……」


 ゲイルズ公爵の言葉にダディスも頷いた。


「あれ程の規模の軍隊だ、あの若造が国王の座に就いていて快く思わない輩も少なからずいるだろう。ゲイルズ、貴様の配下を使って我々の方に取り込むのだ」

「分かりました。早速、配下に実行させましょう」


 ゲイルズの言葉にダディスも満足そうに頷いた時、ドアがノックされた。


「何だ?」

『ガルダス商会のガルダス様が宰相との面会を求めておりますが……』

「おぉ、ガルダスか。入室させなさい」

『はっ』


 ダディスがそう告げるとドアが開き、顎や腹周りがはち切れんばかりに丸みを帯びた商人風の男が入室して来た。


「宰相閣下、ゲイルズ公爵におかれましては、御機嫌麗しく」

「うむ。ガルダス殿も相変わらず元気そうで何よりだ。で、今日は何の御用かな?」

「はい。この度の宰相閣下が管理なさる物資の件は、我がガルダス紹介にご贔屓を賜りますようにとお願いに参った次第で御座います」

「ほぅ、お願いか……」


 ガルダスの申し出にダディスは眉を釣り上げると、思案する表情になりガルダスに視線を向けた。


 そのダディスの視線の意を汲んだガルダスは小さいが、高級感が漂っている木箱をダディスに差し出した。


 差し出されたその木箱をダディスは受け取り、そのずっしりとした木箱の中身の感覚に満足したように頷いた。


「分かった。物資の件はガルダス商店に任せるとしよう」


 ダディスがそう告げるとガルダスは恭しく頭を下げた。


「有難うございます。では、収益の半分は宰相閣下に……」

「うむ。それでは宜しく頼む」


 そう言って鷹揚に頷いたダディスの姿を確認したガルダスは、もう一度ダディスに対して頭を下げると、宰相室を後にした。

ご意見ご感想お待ちしています。


次回の更新は3月10日です。

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