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僕にできること

作者: Tsunaki



僕らはずっと一緒。

そう信じて疑わなかった。




「寒っ!!」

昇降口からでた途端、(ユウ)は大声で叫んだ。

まぁ無理もない。

今日のお昼頃から降りだした雪は、帰る頃には吹雪いていて、気温はマイナスになっているのだから。

青いマフラーに口元を埋めて、優が歩き出す。

僕はその後ろ姿を急いで追いかけた。



僕と優は、一卵性の双子だ。同じ顔をして、中身は正反対の僕らだったけど、どこの兄弟よりも仲が良かった。

高校生になっても色違いのマフラーをする程に。

部活はそれぞれ違うものに入って楽しんだ。

優が活躍した話を聞くのは楽しかったし、僕が活躍した時も、優は楽しそうに話を聞いてくれた。

でも、最近優の様子が変だ。

僕と話さなくなった。

目も合わさなくなった。

僕の方を、見なくなった。そして時々、悲しそうに顔を歪めるように、なった。喧嘩をした訳でも、怒らせた訳でもないのに、ある日突然…

僕は凄く悲しかったけど、どうする事も出来ない。

だから今日も、無言で優の後ろ姿を追うしかないんだ。




サクサクサク…と、優が積もった雪を踏みしめる音が、吹雪の音に混じって聞こえる。

風になびく青いマフラーと、自分の赤いマフラーを見比べて少し懐かしい気持ちになった。

実は、このマフラーは、優がくれたものなのだ。

クリスマスプレゼントに優がこれをくれた時、僕は本当にビックリした。それは僕が優にあげたのと、色違いの同じものだったんだ。

同時に包みを解いたあと、2人で大笑いした。

「どんだけだよ!」

「わざわざ遠い方の店で買ったのに!」

「マジかよ、俺も!」

正反対な性格で、同じ事を考えていた。

双子として生まれてこれた事が嬉しかった。

優だけは、ずっと味方だと思っていたから。



どうして優が変わったのか、僕には全然分からない。

聞いてみたところで、無視されてしまう。

何が優を変えてしまったんだろう。

その時、前を歩いていた優が足を止めた。

横断歩道の少し前、電柱が立っている所で視線を落とす。

優が見詰める先には、まるでドライフラワーの様になってしまった花がある。

一目で分かる、交通事故で誰か亡くなったんだと。

「…んで…」

ポツリと優が呟く。

動かない優に近づいて、言葉を待った。

顔を歪めて、今度はハッキリと、

「なんでだよ、(シュウ)!」

怒りさえ滲むような表情で僕の名前を呼んだ。

本当に久しぶりに呼ばれた名前に、何故か僕は胸がざわつく。

そのまま歩いて行ってしまう優に手を伸ばしたとき、僕は見た。

雪で霞む中、明るく浮かぶライト。

迫り来るトラック。

その轟音は、吹雪に掻き消されて、届かない。

まるで無声映画のように、音もなく、形を成していく。




あの時と、同じだ。




「優!!!」

伸ばした手で優の腕を掴む。

思い切り優を引き寄せた瞬間、目の前をトラックが通りすぎていく。

後ろに倒れ込んだ優は、暫く呆然としていた。

だけど突然立ち上がって叫ぶ。

「おい秀!!秀!どこだよ!?秀!!」



隣にいる僕を、見る事もなく。





あの日もそう、吹雪だった。

優は部活でいなくて、部活のなかった僕は、1人家に向かっていた。

横断歩道を渡りきったところにある洋菓子店で優のぶんもエクレアを買おうと思って足を踏み出した瞬間、吹雪の中、姿を表したトラックにはねられた。

僕の注意力散漫が招いた事故。




僕はその時、死んだんだ。



「しゅ…う…」

崩れ落ちた優が肩を震わせる。

ゆっくり触れた肩は、とても暖かかった。

「ごめん、ごめん秀…。俺が一緒に帰ってれば…!」

あぁそうか、優はこうして、ずっと苦しんできたのか…

僕が死んだ、1年前の事故からずっと…

悪くもないのに自分を責めて、泣くこともなく。

悪いのは、僕なのに…

「優…」

僕の声はもう届かない。

手を伸ばしてももう触れられない。

さっき優を助けられたのは、神様がくれた最後のチャンスだったんだろう。

優を苦しめ続けてきた僕が、最後に何かしてあげられるように、と。

体が軽くなるのを感じながら、僕はうずくまる優を抱き締めた。

触れられないけど分かる、その温もり…

「ごめんね、優…。ありがとう…」

顔をあげた優が、呟いた。「ありがとう…秀…ありがとう、ごめん…ありがとう…!」

ぼろぼろと涙を溢す優から離れると、

光が体を包んでいくのが分かった―――










「優、帰んねぇの?」

友達の声に、俺は顔をあげる。

何時もと反対の道に向かう俺を、不思議に思ったんだろう。

極力避けて通っていたその道は、俺の片割れが事故にあった道だった。

吹雪の日だった。

俺が部活の自主練にでないで、いつもみたいに2人で帰っていれば、秀は死ななかっただろうか、と、今でも考えてしまう。

でも、それを秀が怨んでいるだろうか、なんていう考えは、少し前に消えていた。

秀の声が聞こえたあの日、確かに『ごめん』って聞こえたから。

秀の温もりを感じたようなあの時、『ありがとう』って伝わってきたから。

バカにされるかもしれない。

幽霊なんて、と笑うかもしれない。

でも俺には分かる。

秀が助けてくれたんだって。

俺たちは、双子だもんな?秀。












グダグダすいませんm(__)m



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