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後日談(2)【ローワン視点】

【親愛なるローワン兄様へ。


 急いで手紙を返してくれて、ありがとうございました。


 ローワン兄様の言葉に背中を押され、わたくしは想いを告げることを選びました。全てを失う覚悟でいましたが、フィセリオ様もわたくしを愛してくれるようになっていました。


 わたくしに、前へ進み、未来を選び取る勇気を授けてくださってありがとうございました。まだまだ未熟で頼りないかもしれませんが、いつかローワン兄様が安心して頼れる存在になってみせます。どうか見ていてください。


 わたくしは公爵夫人となりましたが、ローワン兄様の妹であることに変わりはありません。一人で無理はしないで、ちゃんと周りを頼ってくださいね。わたくしはそれだけが心配です。】


──知っていた。


 フィセリオが白磁のペンを依頼しに来たときに、彼がウィステルを想ってくれるようになったことに気づいた。ウィステルから想いを告げれば、きっと悪いようにはならないことにも。


 けれどローワンは、「想いを告げれば大丈夫だ」と背中は押さなかった。


 自らの心で選べなければ、その場は良くても未来は危うい。だからローワンはウィステルに、覚悟を持って選択することの重要性だけを差し出した。少し酷だったかもしれないが、きっとウィステルなら大丈夫だと信じていた。


「父様、母様──」


 ローワンは手にしていた小さな花束を、二人の墓前へと供える。ラティマー領らしい乾いた風が吹き抜けると、花の淡い香りが溶けて鼻先を掠めた。


 ローワンはその香りに導かれるように、風の吹いてきた方向を見上げる。遠くに見えるラティマー領とキャスバート領を隔てる山の稜線は、深い青の空を切り取るように横に長く連なっている。壁のようにそびえるあの山の向こうで、今日もウィステルは頑張っているのだろう。


「ウィステルは自分で選んで、歩き始めたよ。俺もやっと、少し安心できそうだ。どうか俺たちを見守っててくれ」


 微かな寂しさと、それ以上の誇らしさ。そろそろ妹離れしなくてはと、ふっと苦笑が漏れた。じわりと胸の奥から湧き上がる思いを大切にしまい込むように、ローワンはそっと目を閉じた。

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