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いつも俺のベッドにいる、隣の暁月さん  作者: はみ
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「おかえり、翔奏(かなた)くん」

「……は?」


 桐宮(きりみや)翔奏はその日、ベッドにいる美少女に出会った。

 黒く長い髪を靡かせて、それはきれいな、まるでよくできた人形かと思うくらいの所作でベッドの上に座っていた。

 月に照らされたその姿は、


 ――一瞬、見惚れてしまうほど、きれいだった。


「っ、誰だ!」


 だが翔奏はすぐに正気を取り戻し、不審者かと警戒して大声を出して柔道の構えをする。格闘技なんてやったことないが、付け焼き刃でできるはずだ。

 なにせ、翔奏は普通なのだから(・・・・・・・・・・)


「――暁月瑞葉(あかつきみずは)

「みず……え?」


 だから、彼女が突然に名を名乗った時は、当たり前だが動揺した。そして困惑する。

 いや、確かに「誰だ」とは言ったが、まさかいきなり自己紹介をするとは思わなかった。そんな舐めている空き巣がどこにいるのか、と。

 だがフリーズしている翔奏に、瑞葉と名乗った美少女はさらなる追い打ちをかけてくる。


「ちなみに私、強盗じゃないからね?」

「……嘘でしょ」

「ほんとだよ。失礼だな、きみは」


 てっきり空き巣かと思って、あっちが飛びかかってくるとばかり……。だから、柔道の構えもしたのだけれど。

 とは言うが、実際彼女の服装を見れば強盗ではないことなどすぐに分かる。

 なぜなら。


「……なんで、パジャマ?」


 その美少女は、ピンク色のうさぎのコスプレのようなゆったりとした()()()()を着ていたからだった。


「ああ、これ?」


 そう言ってその美少女はパジャマの襟をつかみ、見せるように軽く引っ張る。


「翔奏くんのためにわざわざ着たんだよ、大変だったんだから」


 まったく、と悪態をつく彼女に、ますます翔奏は困惑する。

 翔奏くんのため? 一体、どういうことだ? 俺はこの美少女とはなんの面識もないはずなのに。一方的に彼女が知っていたとしても、あまりにも距離感がバグっているとは思うが。

 唖然と美少女を見ている翔奏に、彼女は「うーん」と考えるような顔をする。


「……まあ、座りなよ」

「いやいやいや」


 その言葉に、翔奏は大きく首と手を振る。


「そこ、俺のベッドなんだけど」


 そう、その美少女が座っている青いシーツのベッドは、翔奏のベッドだった。翔奏の所有物、という言い方は傲慢かもしれないが、少なくとも彼女の所有物ではない。

 だがそんなことなど気にしていないように、我が物顔で座っている美少女は、かわいらしく首をちょこんと傾げる。


「知ってるけど……」

「じゃあなんで自分の物面してるんだ」

「寝心地がいいから!」

「ええ……」


 ド正論をかましたつもりだったのだが、あいにく彼女にはまったく届いていないらしかった。そもそも寝心地がいいからって、どんな理由なんだ?


 そんなことで頭を悩ませていると、美少女は翔奏の顔を覗き込むように下から見る。もちろんベッドから。

 だがその動きすらも、かわいく、思わず目を奪われる。ストレートの髪を横に垂らしてこちらを覗く、その姿も。所作の一つ一つが、すべてかわいい。


 全く、どういうことだ。こんなにきれいで、かわいい美少女がいるとは。不法侵入された形跡もないし、なにか親の厄介事でも押し付けられてしまったんじゃ……。

 そんな色々な憶測を飛び交わせていたとき。


「翔奏くん」

「……っ!」


 そのはっきりとした声色に、翔奏は思わずそちらを見る。

 黒い髪を靡かせながらベッドに座っている、きれいな、かわいい美少女が、目に映った。その周りには、どこか非日常感(・・・・)が漂っているように見えた。

 閉じられていたその紅い瞳が、ゆっくりと開かれる。

 そしてその(くれない)は、翔奏を正面から見据える。


「これからよろしく、ね?」

「…………」


 少し小首を傾げたその美貌さに言葉を失ったのか、その言葉になにも言えなくなったのか、それは言わないでおこう。

 ただ、一つだけ言えることがあるとすれば。


「……はい?」


 そこから、彼女――暁月瑞葉との付き合いが始まったということだ。


 そして――――あれから、五年。


 翔奏を特別へと誘ってくれたその少女は――、


 ――――もう、いない。




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ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

こんにちは、はみです。


よければ、下の☆☆☆☆☆に★★★★★をつけて頂ければ、すごく嬉しいです。

それでは、また。

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