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智子のルビー(北海道編)  作者: ゆずさくら


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12/21

仕掛け

 笹川(ささかわ)智子(ともこ)は運送会社の事務として働いていた。

 出勤して昼が過ぎ、いつもの業務が淡々と続けられていた。

 スマホの音がすると、同じ事務所にいる佐藤(さとう)が先に気づいた。

智子(モコ)ちゃん、あなたのスマホじゃない?」

「えっ? なんか鳴りました?」

 智子は慌てて机に置いていたスマホを確認する。

 IDを交換していたことも忘れていた人からのメッセージだった。

 読んでみると仕事を中断しなければならない話で、智子はすぐに佐藤の顔を見つめた。

「えっ、なんで私の顔を見つめ返すの?」

「見せていいか悩みますが、以前のことがあるので見せちゃいます。誰にも言わないでくださいね」

「そ、そんな深刻な内容、困るんだけど」

 智子は警戒させ過ぎてしまったと思った。

涼子(りょうこ)社長が、免許持ってこっち来いって」

「何それ」

 佐藤は近づいてきて、智子のスマホを覗きこむ。

「本当だ、今すぐって。じゃあさ、一応、業務か聞いてみたら」

 智子は素早くスマホに入力して返信する。

「『業務よ。だけど他の人には言わないで出てきて』って」

「言っちゃったじゃない。というか聞いちゃったじゃない」

 智子は手を合わせて頼み込む。

「黙っててください」

「ほら、早く行かないと」

 智子は、軽く支度をするとすぐに事務所を出た。

 涼子とメッセージアプリのIDを交換したのはいつだったか。

 殺人があった時は、まるで私が犯人のように一方的に言われ話す間もなかった。

 社長のスマホを引き継いでいるなら、社長のIDのはず。

 車を運転しながら、そんなことを考えていた。

 社長がいるビルにくると、次のメッセージが入っていた。

 智子はそれを読んだ。

『この場所の駐車場にきて、車を止め、外で次のメッセージを待っていて』

「外で!?」

 智子は思わず声に出していた。

 雲が多い、風も出てきた。

 防寒対策はできているとはいえ、外で待つのはきつい。

 これが業務なの?

 智子はもやもやしてきた。

 社長の殺害も疑われ、あんまり変な命令をされるようなら、辞めてしまおうかとも考えるが、こんな地方ですぐに就職など出来ないのは理解している。

「やるしかない」

 智子は言われた駐車場に車を止めた。

 見るとそこには涼子の車も止まっているように見えた。

 何度も見たわけではないが、確かこの白いヨーロッパ製のSUVだ。

 次に言われることを考えながら、車の外で待っていた。

 何度もメッセージアプリの画面更新を行なった後、涼子からのメッセージが入った。

『駐車場にいるわね。今から私がいくから騒がないで。質問はなし。私の車に隠れて』

 何から、隠れるのか、どこに隠れるのかわからない。

 とりあえず、通りから見られないように涼子のものと思われる白いSUVに影に回り込む。

『あなたの車は?』

 あります、とだけ答えると、怒りのメッセージが返ってくる。

『何いろのどんな車よ!』

 緑色の軽自動車だと返す。

『借りるわよ。鍵を用意して』

 口で言えばいいのに、と思いながらも自分車の鍵を取り外し、車を貸せるように準備した。

 智子が身を潜めて待っていると、現社長である涼子が駐車場に入ってきた。

 彼女はそのまま自分の白いSUVに乗り込むと、助手席側のドアを開けた。

「こっちの車に乗って、私の家に向かって」

「えっ? どういうことですか?」

「静かに。私は少し時間を空けてからあなたの車で出かける」

 そう言うと助手席から涼子が降りてくる。

 智子は車の鍵を渡す。

「万一、見られているとまずいから、こっちから乗り込んで」

 言われるまま助手席から乗り込むと、車の中を移動して運転席に座った。

 外車に乗るのは初めてだ。

 付いているキーを回してエンジンをスタートする。

 智子はワイパーを操作しようとして、ウィンカーが動いて慌ててしまう。

 とにかく言われた通りに車を神河(かみかわ)社長宅まで運転していかなければ。

 車が通りに出ると、すぐに信号で止まった。

 智子はナビを操作して、自宅へのルート案内をスタートさせた。

 ウィンカーの操作がたどたどしいものの、智子はなんとか社長宅にたどり着いた。

 家の門は開いていて、智子はそのまま中に入れた。

 この後のことを聞いていないから、普段置いているだろう場所に車をおさめると涼子にメッセージを入れた。

『車の鍵に、家の鍵がついてるから、しばらく家にいて頂戴。迎えに来てほしい時にはメッセージを入れるから、それまでくつろいでいて。飲み物は好きにしていいから』

 智子は、どうにでもなれという気持ちで車を下り、神河社長宅に入った。

 言われるまま社長宅で時間を潰しているとメッセージが入った。

 また同じ駐車場に戻ってこいという連絡だった。

 智子はまた同じ駐車場に車を戻し、涼子と会った。

「ありがとう。またなんかあったらお願いするわ」

「えっ……」

「いいでしょう? 特別手当は付けるわ」

 ただ車を運転して、社長宅でくつろいで、車を戻した。

 それだけで勤務とみなされた上に特別手当が出るならいいか。

 そう考えて頭を下げた。

「ありがとうございます」

 涼子に鍵を返して別れた。

 スマホで時刻を確認すると、もう勤務時間は終わっている。

 智子が家に帰ろうとすると、スマホが鳴った。

 画面を見ると佐藤と山村(やまむら)のグループメッセージが入っていた。

『飲もうよ』

『いつものところね』

 智子は参加する旨のメッセージを入れると、車を飲み屋がある近くの駐車場へと

向かった。

 車を止め、三日月に入ると山村が手を上げた。

「こっちこっち」

 智子は佐藤の隣に座った。

「何があったの?」

「佐藤さん、言っちゃったの?」

「ごめん」

 佐藤は手を合わせて頭を下げた。

「絶対に言わないでよ」

 智子はことの顛末を二人に話した。

 すると、山村が神妙な顔をして言った。

「もしかしたら、警察から監視されてるのかも。それを逃れるためだとすると、智子(もこ)ちゃんも共犯になっちゃうかも」

「……真面目に言ってます?」

 山村は頷いた。

本当に(・・・)言わない方がいい」

 智子は唾を飲み込んだ。

 以降、飲み会はいつものように山村のドジ話などで楽しい時間を過ごした。

 山村、佐藤はいつものようにアルコールを飲んでいた為、代行運転を頼んでいた。

 代行運転を頼まない智子も、代行の人と一緒に二人が駐車場に向かうのに合わせ、付いていった。

 駐車場に向かう道をあるいていると、智子の前を歩く山村の頭に、白い猫が現れた。

 これは他の人には見えない、智子の中のルビーのサインだった。

『近くに吸血鬼がいる。いや、眷属か。どちらにしても注意して。バレたり、巻き込まれたら……』

 (ルビー)の言葉を聞くと智子は周囲を見回した。

 ルビーもそうだったが、高いところに行きたがる吸血鬼は多く、智子はまず高いところを探した。

 そこに視線はない。

 佐藤が智子を振り返って声をかける。

「社長もさ、代行さんに頼めばいいのにね」

 智子の周囲の探査が中断してしまう。

「そ、そうですよね。ちゃんとお金払うつもりがあるなら、そうすればいいのに」

「なんの話ですか? 商売になりそうなら呼んでください」

「うちの社長がね」

 佐藤が代行運転の女性に話しかける。

「自分で運転したくないなら、代行運転頼めばいいのにって話」

「佐藤さんの勤め先って、確か神河運輸ですよね。社長は今、奥さんだし。だとしたら、うちには(・・・・)頼みにくいんじゃないですか?」

「リョウコウ社さんに!? なんで」

 佐藤の車を運転する女性とペアになる男性ドライバーが割り込む。

「まぁ、こんなところで話すことじゃないんで。忘れてください」

 気になる話ではあったが、智子はそれどころではない。

 智子は駐車場に着くと、ルビーの能力(ちから)が体に湧き上がってきた。

 相当警戒している。

「じゃあ、またね」

「良い週末を」

「気をつけて」

「代行さんだから平気よ」

 山村と佐藤はそれぞれ自分の車の助手席にのり、代行運転の人と自宅へと帰っていった。

 四台の車が去っていき、急に駐車場の広さを感じる。

 緊張感がピークに達したとき、背後から肩を叩かれた。

「!」

 弾かれたようにジャンプすると、体を反転させた。

「智子!?」

「アーニャ!」

「こんなに驚くとは思わなかった」

 だとすれば…… 智子は慌てて周囲を見回す。

「ほら、忘れ物よ…… もっと早く気づけば良かったんだけど」

 アーニャの真白い手には智子のスマホケースが握られていた。

 時間があると癖でつけたり外したりしてしまうのだ。

 智子はゆっくりと近づいてそのケースに手を伸ばした。

「イヴァンナ!!」

 智子は最大級の警戒心を持って振り返った。

 神社では先に帰らせることが出来たが、この状態からアーニャの血を吸って帰らせても間に合わない……

 駐車場の端、雪の壁の向こうから、こちらを見ている人影が見えた。

 金髪の東欧女性。

「イヴァンナ!」

 アーニャが駆け出した。

 すると突然壁の向こうにいた女性の姿が消えてしまった。

「えっ!?」

 智子はアーニャの先を進んで確認する。

 消えた先と思われる方向には誰もいない。

 智子の右肩に何か乗ったような感覚がする。

 視線を向けると、白い猫がそこに見えた。

『吸血鬼の気配がなくなった。アーニャに見られたからかもしれないな』

「……」

 その晩はそれ以上の事は起こらなかった。




 最初に涼子の車を運転した日以降も、智子は連日、車の運転を頼まれた。

 レンタカーを借りることや、日に二回も呼び出されることも。

 涼子からのメッセージ内容は複雑になり、なかなか警察を(あざむ)けなくなっているのだと智子は感じた。

 ある日の夕方、事務所にいた智子に涼子から連絡が入った。

『勤務外の手当もつけるから、手伝って』

 佐藤が智子の表情を見て言った。

「また? こんな時間だよ?」

 事務所の壁に掛けてある時計を見ながら言った。

 都度、佐藤に告げている訳ではないが、表情でバレているようだった。

「けど…… 行ってきます」

 涼子は言われた通り車に乗って事務所を出ると、指定の駐車場に停めると、今回もレンタカーを借りて涼子の指定の店の前に行く。

 陽は落ちていて、周囲は暗かった。

 そこで涼子を乗せると、車はあるビルの前で止めさせられた。

 涼子は車を下りてビルに入っていく。

 智子はそのまま車を再発進させる。

 警察の車と思われる車が、智子をつけるべきかその場で止まるのか、決断ができないように、智子は素早く先の角を二回曲がって、ビルの裏で車を止める。

 智子の運転するレンタカーは、速度で追跡を振りきる勢いで直進した。

 警察の車はレンタカーを必死に追いかける。

 だが、ビルの裏で止まったのはフェイクで、涼子はそのまま道を渡り、さらに奥の駐車場に停めてあった自分の車に乗り込んでいたのだ。

 智子は市内をぐるりと一周させると、レンタカー店に直行した。

 つけてきた車がレンタカー店のすぐ先でハザードをつけて止まっていた。

 また涼子にまかれた(・・・・)ことに腹をたているに違いない。

 智子はチラリとその車を見ると、駐車場に停めてある自分の車に乗り込んだ。

 エンジンをかけると車のダッシュボードの上に白い猫が現れた。

『吸血鬼が行動している』

「えっ?」

『私に力を頂戴』

 頷くと、智子は体の感覚を失っていく。

 車は走り出していて、ハンドルは操作されている。

 体がルビーに乗っ取られているのだ。

 うっすら残った意思に見えたのは、建物の屋根から屋根を飛び移っている眷属達だった。

 智子は言った。

『あれはメルヴィンの眷属?』

「そうよ。やつもどこかで俯瞰している」

 智子の体を使ってルビーがそう言った。

 同じ体の中で智子は話しかける。

『メルヴィンは眷属を使って何をしようとしてるの?』

「それをこれから調べようっていうのよ」

 常に凍っているような道を、車で飛ばすことは出来ない。

 智子はルビーに無茶な運転をやめさせるように、意識を送る。

 眷属たちも、車で追いかけなければ追いつけないが、本物の吸血鬼の能力までは出せない。それに、人目を気にして大通りを避けるルートをとる為、屋根を飛び移っているのに遠回りになるのだ。

 この軽のオフロード車でも十分追跡することが可能ではある。

「もう少し、人気(ひとけ)がなくなったら車を置いて、私も屋根に上がるわよ」

 ルビーは考える。

 街中で何をしようとしているのか。

 メルヴィンが殺そうとしているのは、私のはずだ。

 メルヴィンはあの娘たちを手足として使っているだけであって、完全な吸血鬼を増やそうとはしていない。

 だから彼女たちが街中ですることとすれば……

 メルヴィンを維持するための吸血だろうか。

 いや、それならば個々に、あたかも人同士の接触のように振る舞うだろう。

 適切な量ならば、相手は死なないし、記憶も残らない。

 こうやって派手に複数で行動するということはない。

 これは、やはり……

 ルビーが途中まで思いついたことを、智子が読み取った。

『狩り!? どう言うこと、狩りって』

「言葉の通りだ」

 ルビーはそう言うとエンジンを切った。

 車はいつの間にか駐車場に止まっている。

『あの白いSUVって……』

 ルビーは智子の問いに答えない。

 智子も、ルビーの感覚から得た情報から、何が始まろうとしているのかを予想していた。

「しばらく眠って」

 ルビーはそう言うと、智子の体を完全に支配した。

 背の高さも、肌の色も、瞳の色もルビーそのものに変わった。

 それでも完璧ではないため、人間の弱さもあるが、限りなく最高に吸血鬼の性能が引き出せる状態になった。

「先手必勝ね」

 メルヴィンの眷属たちは、とあるホテルを中心として周りを囲むように位置していた。

 ルビーは体勢を低くすると、凍った路面を蹴り、飛んだ。

 一つ目の着地で十五メートルほどの屋根上につくと、眷属たちの一人の位置を目視で認知した。

 次の跳躍でその眷属の背後をとった。

『殺さないで!』

 深く深く閉じ込めたはずの智子の意思が体を縛る。

 殺さないならば、メルヴィンの命令が実行出来ないように力を奪い去り、帰れるだけの力を残す。それしかない。

 眷属の再生がどの程度できるのか。ルビーはそれを見極めようと、加減した蹴りを繰り出した。

 その眷属はルビーの蹴りを避けきれなかった。

 食らった蹴りをガードした腕の骨が砕け、だらりと下げている。

「死にたくなければ帰れ」

 眷属の顔には、恐怖が浮かんでいた。

 大晦日の夜、神社の裏山で対決した時は、眷属たちはルビーを複数で囲っていたため、同時攻撃ができた。

 ここでは圧倒的な能力(スペック)が違う吸血鬼ルビーと、一体一で戦わねばならない。

 状況が違いすぎるのだ。

「なぜお前たちが社長(りょうこ)を狙う?」

 声にならない叫びのような呻き声を発しながら、体をよじる。

 答えがないまま、眷属は隣の建物へジャンプした。

 屋根から屋根に、飛び移りながら逃げていく。

 答えを求めるなら、追って捕まえることも出来たが、残りの連中に『涼子』を殺されてはまずい。

 ルビーはホテルに入ろうとしている別の眷属を見つけると、建物の屋上から飛び出した。

 翼もない体が、滑るように空を移動する。

 ほぼ何も感じないが、智子は思った。

 まるで空気に足をつき、蹴っているような感覚だ。

 音もなく宙を移動するルビーに、狙われている眷属が気がついた時には遅かった。

「なっ!」

 逃げ去っていた眷属と同じように腕をやられた。

 片腕だけではなく、両腕に力が入らない。

 再生は始まっているが、簡単に治るダメージではなかった。

「チッ!」

 ルビーは舌打ちした。

 彼女がその眷属を仕留めている間に、ホテルと隣接する建物を壁を交互に蹴りながら、ホテルの屋上に回り込む、別の眷属に気づいたのだ。

 慌てて同じようにビルを蹴りながら屋上に回り込む。

 ただ、ルビーは壁を蹴る回数が少なく、したがって、より短時間で屋上へ到達できる。

 眷属はすでに屋上の扉に手を差し込み、デッドボルトを切断しようとしていた。

『この()たちが扉を開ける時、こうやって切断するのだ』

 眷属のその様子が、智子の記憶に刻まれた。

 だが、眷属は扉を開ける前に、ルビーに追いつかれた。

 眷属の女は、ルビーが伸ばした両手で、扉に強く叩きつけられる。

「ぐっ……」

 肩から先、手首や肘があらぬ方向に変形している。

 人間であったなら絶叫するか、気絶しているだろう。

 眷属は、肩を抑えながら屋上から飛び降りた。

『また逃げられた』

「逃がしているのよ」

 ルビーが言った声に重なるように、ガラスの割れる音がした。

 全く迷わずに、ルビーはビルから飛び降りる。

 翼もない体が空気を切り裂き、弧を描きながら、割れたガラスへと滑空していく。

「誰!」

 部屋の奥で『涼子(りょうこ)』の声が聞こえた。

 ルビーは壁に拳を叩き込むと、その向こう側にいた眷属の腕を掴んだ。

「お前はこっちだ」

 強引に引っ張ると、壁が崩れた。

 あちこちに傷を負った眷属を、入ってきた窓から近くの建物の屋根を狙って放り投げる。

 これだけの体重の物体を放り投げると、ルビーの体の負担も大きい。

 ちぎれそうな肩の筋肉が、内部で再生していく。

「!」

 突然、背後から首を絞められた。

 迂闊だった、とルビーは思った。

 これは五人目の眷属だ。すでにこの部屋に入っていたのだ。

 四人目の眷属の気配と、五人目の眷属を明確に区別出来なかったせいだ。

 だが、この体勢はまずい。

 このまま首をもがれたら、流石に再生するのに相当な時間がかかってしまう。

 そんなことになれば、涼子は……

『この前みたいに、強く血の支配を!』

 智子は強く思うが、そんなことが何度もできる訳もなかった。

 ルビーは一か八か、首が絞まったまま床を強く蹴って窓から飛び出した。

「何事ですか!」

 と、部屋の外から声がした。

 眷属がガラスを破壊したり、ルビーが壁を崩した音を聞いて人がやってきていたのだ。

 部屋の扉を叩きながら、ホテルマンが大声で訊ねる。

「大丈夫ですか!?」

 涼子は声に反応し、自らの胸を手で抑えながら、部屋の扉へ向かった。




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