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さがすもの

*『つないでゆくもの』の後日談の作品になります。ですので『つないでゆくもの』を読んでから、こちらに目を通される事をお勧めします。_(._.)_

*使用している画像・AIの人物画像は作者が作成したものです(商用利用可能な物です)

*「この作品はフィクションです。実在の人物、団体、事件などには一切関係ありません」

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)


7月31日月曜日

みんなの期待に応えたように青い空が広がっている。海もいつものように穏やかで、ソワソワしているのは島の人達の方かもしれない。

このところの夕凪島で一番の話題と言えば、俳優の久留生一生くりゅう かずお三笠久美子みかさ くみこに因んだもの。二人は映画の撮影の為に島に滞在している。夕凪島は様々な映画やドラマのロケ地になっていて、その度に島の中で、その時々の作品に出演した俳優、女優の話題で持ちきりとなる。お店にも何人かのサインが飾ってあるが、香自身は、あまり興味が無いので誰のものなのか覚えていない。

朝から美樹、真一郎、理央、万葉かずは、加奈と瀬田港の東側の埠頭にあるヘリポートにいる。自分達以外にも多くのギャラリーが到着を待ちわびている状況で、皆のお目当ては女優の杵築八雲。彼女が島に来ること自体は知っていたのだけれど、今日、ヘリの乗って来るという噂があると情報源の真一郎がもたらした。確かに有名人がヘリを利用して島に来ることはある。数年前には国民的アイドルグループがヘリで島を訪れ颯爽と現れたらしい。らしいというのは母から聞いた話なので実際に目にした訳ではない。

「何時にくるん?」

理央が手を翳しながら空を見上げている。

「え?たぶん9時じゃないのかな…」

自信なさげに真一郎は首を傾げている。

「まだ30分以上あるやん」

「いや、だから……噂だから…」

美樹の突っ込みに、真一郎は、おどおどしている。

「おい、あれじゃないん」

万葉が空を指さした。

その方向に、小さな黒い点が青空に映えている。

「私、八雲ちゃん好きなんよな」

加奈は嬉しそうに笑っている。加奈は杵築八雲のファンクラブに入るほど熱心な推し活をしている。芸能界に興味のない香も八雲の可憐で少し陰のある、同じ年とは思えない演技や雰囲気は好きで、そうでもなければ、一時間も前から早起きをしてここに来たりしていない。

ブンブンブン、プロペラの音が徐々に大きくなってくる。少しずつ高度を落とし、着陸態勢に入ったようだ。ヒュンヒュンとプロペラの音が変わり、ヘリの近くに外国の大きな高級車が止まった。ヘリコプターの扉が開き初老の白髪頭の男性が出てくると、湧き上がりそうな歓声がため息に変わる。男性はヘリの扉の下に、どこから出したのか簡易な階段を置くと、数歩下がってお辞儀をしている。すると中から紺色のワンピースに身を包んだ女性が日傘をさして、その階段を下りて出て来た。歓声がどよめきに変わる。

「杵築八雲やないやん」

香が真一郎を見ると、美樹、理央、万葉、加奈の視線の集中砲火を浴びている。

「いや、だから噂だって……」

「折角、早起きしたんに……」

美樹が口を尖らせ膨れている。

「だから…噂だって…ん?ヘリじゃなくて、フェリーかも?」

「はあ?」

一同が声を上げて、首を捻っている真一郎を、呆れて見つめた。


ヘリポートの一角に人だかりが見える。何かしら?

「加賀美、何なのこの人達、ワタクシのお出迎え?」

「いや、それほど人気がおありになるほど有名ではございません、お嬢様」

「何、クビね!」

「お嬢様…各申す私は、お父上様とお母上様から…」

「ごめん、悪かった…」

その人だかりの中に彼女達を見つけた。

「お、お嬢様どちらに…お待ちください」

目当ての二人は、周りにいる男女と何やら会話をしていたが、構わず声を掛ける。

「ごきげんよう、あなたが松薙香さんね」

目の前の香は不思議そうに首を傾げ、隣の女性を見ている。

「そして、あなたが、跡部美樹さんね」

美樹も同じような表情をしている。

「ワタクシは水内鈴みのうち りん

挿絵(By みてみん)

鈴が手を差し出すと、ゆっくり手を出してきた香、美樹の順で握手をする。

「着いて来てお二人さん」

鈴は身を翻し車の方へ歩き出す。

「ん?」

振り向くと、二人は突っ立ったままだ。もう、遠慮しちゃって…可愛い。鈴は手招きをする。二人は顔を見合わせて近くの男女に何か話し、こちらに向かって歩き出した。

「もう、遠慮しちゃって、二人とも可愛いんだから、さあ、車に乗って」

加賀美がロールスロイスの後部ドアを開けて待っている。

「どうぞ、先に乗って頂戴」

香、美樹の順番でキョロキョロしながら乗り込む、その際「お邪魔します」と言っているのが、もう可愛い!

最後部の席に並んで座った二人のテーブルを挟んだ反対側に腰掛けた。

加賀美が後部座席のドアを閉め、運転席に座る。

「お嬢様、どちらに?」

「んーそうね、ホテルでいいかしら、お話があるから。それからルームサービス忘れないように」

「かしこまりました。香様、美樹様、御用がございますれば、ご遠慮なく、この加賀美めにお申し付けください」

ゆっくりと車が走り出す、目の前の二人のこちらを窺う視線に、小さく手を振り返すと、苦笑いをしている。ホントに可愛いわ。


自身の頭でいくら考えても、三人が見た記事。未来の記事の出現の理由が分からない。鏡の前で法衣の最終チェックをする。乱れている箇所はない、ゆっくり息を吐き呼吸を整える、今日は午前中、二件の法要がある。時計は8時半を指していた。少し早いが出掛けるとしますか、玄関の引き戸を開けると熱気が身を包む。蝉の声の中に人の気配がする。施錠を済ませ階段を下り本堂の方に目を遣ると、ノースリーブの上着にミニスカートという出で立ちの若い女性が、本堂の前で檻の中の動物のように行ったり来たりしている。時に首を捻り、空を見上げ、ポケットから何かを取り出すと口に咥えて、また同じ動作を繰り返している。何だろう?気にはなったが、約束の時間があるので、背を向けて歩き始めると、

「やっぱり!」

若い女性の大きな声が境内に響く、振り向くとこちらへ走って来て、

「お坊さん、おはよう」

「おはようございま……す」

追い抜きざまに挨拶をしてペタペタと駆けて行く。その元気さに可笑しくて思わず笑う、すると女性は急に立ち止まりこっちを向いて、

「お坊さん、磐座さん、いないよ」

一言、言い残し駆け出した。格好からは似つかわしくない単語が出たのに驚きつつ、まだまだだな、格好は関係ないでしょう、龍応は自身の後頭部を叩いて歩き出す。

今日は青空が広がり、遠く四国の山々の輪郭もくっきり見える。世良風子せら ふうこが来るまでには帰って来れるだろう。

参道の階段を一歩下り出した時、

「磐座さん、いないよ」

先程の女性の言葉が頭を過る。この寺、というより麻霧山に磐座があったのは、遥か昔の御代だ。彼女は何故あんな事を言ったのだろうか?

お読みくださりありがとうございます_(._.)_

適宜、誤字や表現等変更する場合がございます。予めご了承の程を。

まだまだ文才未熟ですが、もし面白い!と少しでも感じてい頂けましたら、いいねや評価をポチッと押して下さったら、嬉しいですし、喜びます(^^;。モチベーションにも繋がります。よろしくお願いしまし_(._.)_

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