表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
後日談・つないでいるもの  作者: ぽんこつ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/31

つきないもの

*『つないでゆくもの』の後日談の作品になります。ですので『つないでゆくもの』を読んでから、こちらに目を通される事をお勧めします。_(._.)_

*使用している画像・AIの人物画像は作者が作成したものです(商用利用可能な物です)

*「この作品はフィクションです。実在の人物、団体、事件などには一切関係ありません」

翌日から、巫女の使命の企みが始まった。

「神様は人、一人一人の中にいるんだよ、自分自身の魂やご先祖様の願い。それこそが神なんだよ。ご先祖様を思う事は自分を思う事と一緒なように、自分を思う事はご先祖様を思う事。自分と大切な人や物を思って願って、ありがとう、お陰様で幸せだよ、みんな幸せになるよって。空を見上げて、一分でいいから祈って」

香が巫女に伝えた言葉が、様々な人を通して伝播されていく。

先陣を切ったのは冴だ。

YouTubeから冴が呼びかける。

「リスナー、おねがーい。さっきの話ー、『#みんなで祈ろう815』で拡散して、ちゃんとー、話の文面もー、書かなきゃダーメ」

SNSでは『#みんなで祈ろう815』が飛び交い始める。

瑞こと八雲も自身のファンクラブやSNSで発信する。

「…自分と大切な人や物を思って願って、ありがとう、お陰様で幸せだよ、みんな幸せになるよって。空を見上げて、みんなで祈りましょう。難しい事じゃないから、合言葉はみんなで祈ろう。『#みんなで祈ろう815』で趣旨の文面も一緒に拡散してもらえたら嬉しいな、周りの家族や友達、みんなに広めて。当日は私も姉と一緒にお祈りします」

ラジオからは津山勲も、

「大事な友人の八雲ちゃんからのお願いだ、みんな知ってるかもしれないが聞いてくれ…」

真一郎もYouTubeのリスナーとゲーム仲間に声を掛ける。

美樹も自身が書いたイラストと共にインスタグラムのフォロワーに。

鈴は両親に声を掛け、豪華客船で外遊中の親がその輪を広げ、加賀美は自身の交友関係に働きかける。

こうは近所のおじさんや彼氏、友人達に声をかける。

様々な手段を通して…


香と美樹の二人に会えたことで兄はホッとしたのか、帰りの新幹線が岡山を出発するとすぐに眠りに落ちている。舞もそれは同じで気が付くと夢を見ていた。

家族全員で百人一首をしている。舞の手元には手札が山のようにあり独り勝ちの状態だが勝負は決まっていない。まだ場には舞の一番好きな歌が残っている、それを取れなければどんなに札を取ろうが自分の中では負けも同然である。両親や祖母が笑っていて、兄は悔しそうに口を尖らせている。残りの手札は僅かで、舞は祖母が読み上げる声に集中する。

「瀬をはやみ…」

祖母の調子の付いた声に舞の視線は兄の膝の前にある札を捉えた。手を伸ばした瞬間、兄の手が先に手札を攫った。舞はそのまま勢い付いて畳に前のめりに倒れた。

「よし」

自慢気に兄は手札を持ってガッツポーズをしている、舞は一番好きだった歌の手札を取られた事が悔しかった。

夢か…目を開けると窓の外には雲の帽子を被った富士山の裾野が見えていた。

「おはよう」

「あ、お兄ちゃん起きてたんだ」

「さっきね、何か夢でも見てた?」

兄は意味ありげな視線を向ける。

「どして?」

「寝言で、もうだか、ああだか言ってたから」

「嘘だぁ」

兄の肩を軽く押すと肩揺すらせて笑い出した。

「バレたか……でも良かったよ二人に会えたし。美樹さんは変わってなかったけど、香さんは何か雰囲気が大人びた感じがしたな」

「ふーん、女性に鈍感なお兄ちゃんでも分かるんだ」

「はいはい、それは否定しないけど、なんかいいなよな、みんなで祈ろうって、誰しもが自分や大切な人や何かの為にだけ一斉に祈るんだろ?変に堅苦しくないし、強制でもないし、今の世の中さ不安を煽ったり、負の感情を蔓延させるような罵倒や怒声が飛び交う中で、そのような試みをするって、どれだけの人が応じてくれるか分からないけど、その行い自体が人に魂の光を見せるって事なのかもしれない」

行い自体が人に魂の光を見せる。兄の言葉に心が擽られた。

「うん、そうだね、でも結構大掛かりになりそうだよ、瑞さんや冴さん、津山さんとかも呼びかけているみたいだから」

「凄いよね、そうそう俺も健太郎に伝えたけど、社員全員に連絡するって意気込んでたよ」

「私達はどこで祈る?」

「ああ、それは考えてなかったな」

そうだな、折角だから……丁度いい所があるじゃない。

「閃いた!お墓参り行こうよ」

兄は指をパチンと鳴らす、

「ああ、それいいね、そうだなそうしよう、それから思ったんだけどさ、人間一人一人がかけがえのない神を持っている。魂なり心なり受け継いだ血だったり、それが神様なんだってことは、双子の神様がDNAの枷を外して人が目覚めるきっかけを作ったって話していた事にも繋がるよね」

双子の神様はそれが覚醒て言っていていた…人の中の神を覚醒させる…かみ…かくせい……あれ?頭の中に言葉が湧く。それらをスマホに打ち込んで、閃きと合致するか組み合わせて見る。画面に映し出されている文言に息を呑んだ。凄い…これも必然ならここにも因果があるのだろうか…

「どうした?」

「ん?ああ、香ちゃんから出されていたクイズの答えなんだけどさ、やっと分かった…」

「あれか、巫女のみんなの名前の秘密ってやつ?」

「知りたい?」

「あ、そうやって勿体ぶるのだけは舞の悪い癖だな」

「ふーん、そんな事言うなら教えてあげない」

「分かった、ごめん…気になるんだから教えて下さい、女王様」

兄は冗談めかして両手を膝に頭を下げる。

「もう…女王様は関係ないでしょ…答えはね、巫女の皆の名前ね、かおりちゃん、美樹みきちゃん、さえさん、まなさん、すずさん、みずほさん、こうさん、順番に頭文字読んでみて」

「頭文字?」

すると兄もスマホに名前を打ち込んでいるようだ。

「か、み、さ、ま、す、み、こ…かみさますみこ…神様、すみこ……かみ、さます、みこ…神覚ます巫女!すげー、双子の神様のメッセージの通りじゃないか……人の魂の光を見せる。一人一人が神様という魂を持っている。それを覚ます巫女かぁ…」

「でもさ、名前も、みんなの親とかが付ける訳でしょ、これも必然だとしたら、受け継いだ血の中にある何か、例えばDNAとかが作用したとか、それにみんな同い年な訳でしょ、神秘的というか、そう名付ける事さえ決まっていたような気がするんだ。そう考えたら尚更、今のこの時代に行なう意味があるのかもね。もしかしたら…」

香はその意味すら知っているのかもしれない…

「そうだな…でも何が起こるにせよ起こらないにせよ…俺たちも祈ろう」

「そうだね」

あっという間の三日間が終わろうとしている。そうだ、今回の出来事も、以前の旅行記に書き加えて置こう。

車内には女性の声のアナウンスが掛かる。窓の外では、夕暮れの町並みに色とりどりのネオンが踊り、通勤の電車が沢山の人が待つ駅に滑り込んで行く。この中のどれだけの人が空を見上げるのだろう。人の数だけ願いがある。そう言えば、願いのエネルギーを駆使して、お大師様は夕凪島に結界を張った。それだけ人の願いには力があるということなんだ…


数日後――

やがて巫女達の呼びかけは、映画『二十四の瞳・新』の出演者やスタッフにも伝わり、共演者の壬生祐樹みぶ ゆうき三笠久美子みかさ くみこ、津山の盟友である大女優の岩田真由美も声を上げ、じわじわと広まりつつある。

実行日が明日に迫った今日もSNS上では『#みんなで祈ろう815』がトレンドに入っている。

ザザッ、ザザッというフェリーが水面を切り進み白い航跡を生んでいく。なだらかな島影が遠くに見え、空には大小様々な形をしたふわふわな雲が泳いでいる。

「きれい」

今までこんな風に景色を見ながらフェリーに乗っていた事はなかった。当たり前にあるモノに有難さを感じられるようになったから気が付けたのかも。

欄干に手を付いて眺めていたら、急に頭から血の気がサーッと引いて行く、目の前がにわかに暗くなりその場に座りこんだ。

「大丈夫ですか?」

頭の後ろで微かに声がする。

「はい」

立ち上がろうとしても、力が入らないし、頭がクラクラする。

「よければ、買ったばかりですから、キャップ開けてますので」

ぼやけた視野にペットボトルがある。

「ありがとう…」

それを手にして一口飲む、冷えた水が喉を伝わる。暗くなっていた視野も色を取り戻してきて、ゆっくりと何回か深呼吸をする。頭に血が巡る感覚がして柵に捕まりながら立ち上がる。

「大丈夫ですか?」

「ありがとうございます」

肩まで伸びた髪を耳に掛けながら顔を上げた。男は縁のない眼鏡越しの目を細め笑っている。

「いいえ、でもビックリしました、突然座り込まれたので…ほんとに大丈夫ですか?」

「はい…少し眩暈がしただけですから」

まだ少しだけ、ぼんやりする。

「今日も暑いですから、船内で休んだ方が良いですよ」

「そうします」

「それじゃあ…」

爽やかに微笑んでいた男の表情が変わり、何か言いたそうな顔をしている。

「何か?」

「あっ、いや…間違いだったらすいません、もしかして映画の撮影の時に神舞かまいを踊ってた方?松薙香さん、ですか?」

「ええ、そうですけど…」

「やっぱり、いや凄かったですね神舞かまい。毎年、見てるんですけどね、今年のお祭りは島に帰って来れなかったんで見れなかったんですよ、でも運よく映画の撮影で見れて、しかもあなた達の舞は、何んともしなやかで、息もピッタリ、まるで双子のようだったし見惚れてしまいました、今まで見た中で一番でしたよ」

男は興奮気味に話すと、思い出しているのか遠くを見つめながら微笑んでいる。

「ありがとうございます」

「ああ、ごめんなさいね、勝手に喋ってしまって、それじゃあ、お大事に」

軽くお辞儀をして、男は去って行った。

丁度、瀬田港へと向かうフェリーとすれ違う。

この一ヵ月の間は、不思議だけど感慨深い日々になった。出来事も巡り合えた人達も。決して巫女の力があったとしても一人では成し得なかったことばかり。これから試みることもそう。みんなで行うこと自体に意味がある。

ただ、自分で初めて行ってみたいと思う場所へ出向くこの旅は一人で赴いてみる。ちょっとした冒険。殻から飛び出してみるの。舞さんの影響かな。それがどのような物を自分にもたらしてくれるのか。ふと頭に湧いた言葉が導くその場所へ。

いつも間近で見る麻霧山もここからは稜線が見えるだけ。

「行ってきます」

想いを風に乗せて。

お読みくださりありがとうございます_(._.)_

適宜、誤字や表現等変更する場合がございます。予めご了承の程を。

まだまだ文才未熟ですが、もし面白い!と少しでも感じてい頂けましたら、いいねや評価をポチッと押して下さったら、嬉しいですし、喜びます(^^;。モチベーションにも繋がります。よろしくお願いしまし_(._.)_

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ