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後日談・つないでいるもの  作者: ぽんこつ


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たいするもの

*『つないでゆくもの』の後日談の作品になります。ですので『つないでゆくもの』を読んでから、こちらに目を通される事をお勧めします。_(._.)_

*使用している画像・AIの人物画像は作者が作成したものです(商用利用可能な物です)

*「この作品はフィクションです。実在の人物、団体、事件などには一切関係ありません」

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)


「あなたは?」

龍応の声の先には、黒い百合の花束を片手に持った壮年のシルバーヘアの男性が木を支えに突っ立ている。

「この墓の主、そのものだ」

「二人とも後ろへ」

龍応のただならぬ物言いに、目の前の人物が何者なのか、不安と共に興味が湧く。

「ふーむ、君はお付きの五人の下僕の末裔だな」

「それが、どうした」

「ほお、浄化を施したのか、これで我が墓に参ろうと崇める者が増えてくれるだろうか」

クックックッ…男性は薄気味の悪い笑い声を上げる。

「下らぬ。あなたを崇める者が果たしているのやら」

「うむ、それは一理ある。我の存在に気付けし者は、そうはいない憐れなるかな」

「何をしにここへ」

「自身の墓に参ってはいけないのかね…」

この墓の主…自身の墓…どういうこと?

「そこの二人は…大巫女ではないが…」

「関係ないただの客人だ」

「いや?近くにいるな…」

その男の背後から香と美樹が歩いて来ていた。どうして?ここに?ん?よく見ると美樹じゃなくて冴だった。どうして冴さんなんだろう?

「呪いも効かぬとは…」

男は振り返りもせずに、肩を揺らしている。香と冴は自分達に気が付くと目を丸くしていた。そして、男と数メートル挟んで対峙した。

「呪いでも願いでも祈りの力には変わりない…中和することぐらい私達にもできるの…それに………あなたですね…その昔…過ちを犯したのは」

あの時に着ていた、香の白いワンピースの裾を風が膨らませて抜けて行く。

「過ち?あれは本人が望んだ事…お前も見ただろ?」

「いいえ、あなたがそのように仕向けただけでしょ、あなたは騙し、姉の願いを裏切ったの」

「だから、どうする?私に復讐しに来たのか?いいだろう、憎き姉を殺めた相手は目の前におるぞ…ハハハ」

え?いつの話?…もしかして双子の神様が生きていたころの話?ということは、目の前にいる男…ポケットの中のスマホのが振動する。出たいけど二人の会話が気になるし…

「…」

「何も出来まい…出来得る筈もない、巫女風情で…我は神だ。あの天に座す神とは違う!人としてこの世界を人間の手に取り戻す。奴らのゲームでいて良いのか?奴らは運命と称して箱庭の人間を弄んでいる。そことの繋がりを絶ち、人間が自立する世を我が作ろうというのだ。世を統べる者なり、跪け」

「それは違うでしょ…あなたは世界を思うようにしたいだけ…何を話しても無駄です。そもそも神なんていないのですから…確かにその昔、私達を導く存在から、私みたいな者を通して智慧を授かっていました。自然の一部、地球の一部として歩み始めた人類は幾度となく過ちを繰り返し、その度に僅かに生き延びた人々が導く存在によって生きながらえてきたのです。何故にお見捨てにならかったのか…それは人間に託した思いがあるから…遥か彼方の六つ連の星より来た、私達を作りたもうた天の存在は、自身たちの星が滅んで後、同じような緑と水の惑星を見つけられ、人類を創生したの、その先駆けが私達、日本人だったの。地球を愛し、己を愛し、全てに魂が宿るとあらゆるモノを敬える人の先駆けとして。でも、人は驕り、争いを好み、いつの頃からか感謝する事すら忘れていく生き物になってしまった。あなたの言う個人の観点で人の世に戻すというのはエゴでしかないの。神とは本来、人間一人一人が持っているモノなのですから。それは信じる心、感謝する心、代々受け継がれてきた想いや願い、それを持てるのは地球上で人類だけなの、だから慢心することなく地球の一部だと理解して皆が生きてゆけば、天が望もうが望まなくても、人、一人一人の世になるんだから。だから今、一人一人が自分を信じ、取り巻く全てに感謝して生きていくことが大切なの…だから、私はあなたを許します、悔い改める気は元から無いようですが…そのような者であっても。許します。ただ、あなたは長い間…やり過ぎました。その因果が訪れるでしょう」

「ふん、よくもまあ、お喋りなお嬢さんだ事で…お前こそ因果によって消える存在ではないのかね…フフフ、まあ、よき思い出とでもしとこうではないか」

冴が香の袖を引っ張ている…何かの合図?

「いえ、もう思い出す事も出来ないでしょう…もうあなたの魂以外、今の世にはいないのですから…子供たちは遥か時空を遡り、輪廻へと戻ってるのですから、これで手足となる者もいないし、これがどういう意味を成すか分かりますか?」

「奴らが消えたとて、何ほどの事やあらん。私が再び呼び寄せれば済む。ん?まさか?……いや、ありえん。至高の神たる一人の私が輪廻の仕組みに戻るとでも言うのか?」

「分からいのですね…神と名乗るお方でも…所詮あなたは神になったつもりの人…どれだけ輪廻を自由に、そして人に憑依したところで時間は操れても因果はもう決まっていたのですよ…姉を手に掛けた瞬間に…せめて姉の願いを聞いてくれれば…」

「何を言っている?」

「そしてもう一つ。双神の魂が天に戻った時点で、あなたの因果は決まったの。人の世の神が輪廻に戻ったのどういうことか分からないのですか?あなたが殺して手にした筈の力はもうないって事…唯一の道である磐座は私達が取り戻しました。今生のあなたは輪廻してきた存在。もうその時点であなたの運命は決まっているのです。どんなに足搔こうともあなたは人として生を全うするだけ」

「いや、それはない。現に私はあの時代から三人の子孫を呼び寄せたのだぞ…」

「ええ、それはいつ?双神が天に帰る前の事でしょ?それに、呼び寄せた事によって、あの御代で血縁が絶えていた事に気が付かなかったのですね」

「ん?」

「本来血筋が続くはずだった、あなたの家系も、三人の兄弟を今の世に呼び寄せた時点で、あなたの血縁は終わっているのです。まだ分からないのですか?」

「まさか…」

男は急に焦りだし、人差し指を額に当て何やら呟いている。

「なるほど、狙い我でなく、かの兄弟と磐座であったか…フフフ、そして今の世に存在してはいけないのは我という事か……しかし…我に一類の望み有り」

男は香の元へ駆け出した。

「逃げて!」

風子が叫ぶ、香は微動だにしない。どこからともなく龍一郎と京一郎が香の前に立ち塞がる。男が手に持ったナイフを突き刺すが京一郎の手刀でナイフは落ちそのまま香に食らいつこうとするも余裕で龍一郎に取り押さえられた。項垂れる男に、香はしゃがんで問い掛ける。

「せめて謝罪は出来ませんか?」

「誰に?あいつにか?お前に?……………冗談だろ」

パシン!香の手が男の頬を叩いた。驚いたのか男は叩かれたまま動かない。

「諭しても言う事を聞かなければ、悪いことをしたのならば、愛を持って親は子の頬を張るのです。叱るのです、痛みを教える為に、そして抱き締めるの…叩く親が辛いと分かる時が来ればいいでしょうが……今は、そういう世の中でもありません…もう会う事は無いでしょう。二人とも離して差し上げてください」

男は項垂れたまま地面に倒れ込んだ。笑っているのか泣いているのか肩だけが揺れている。

スーッと立ち上がる香に、冴が微笑みかける。何か話しているのだろうか?

香と冴は石組みの塚に歩み寄ると手を合わせた。その場に居た大人たちもそれに倣う。

「行きましょう」

香はにこやかに皆を見渡し、冴と手を繋いで歩き始めた。男はうめき声と共に肩を揺らし天を仰いで横たわっている。さすがに薄気味悪く目を逸らした。

「香さんって、神様なのかしら…ううん神様は私達自身の内にあるってことなのよね」

隣を歩く風子はチラッとこっちを見て微笑む。

「そうですね…妹みたいな感覚で接していたけど、さっきの話をしている時の香ちゃんは年下とか思えなかった」

「ほんとに」

木漏れ日が照らす風子の顔は晴れやかに見える。

一人一人の人間が神様なんだという香の話は舞には思いもよらぬ発想だった。人が神というのは舞の中では違和感があったから。ご先祖様に対する感謝の意で神社が存在するという理屈なら舞自身も考えていたけど、それが神社の本質に近く、香の言っている事とも重なる。神社に祀られている人が神様である所以も分かる。

駐車したスペース迄戻ると、

「お話があります」

香は全員を前に、かわいらしい笑顔を見せた。

「ご住職、そして真一郎のお父さん、お兄さんありがとう、他にも…私を…私達をずっと見守って下さって。ありがとうございます」

深々と頭を下げる。

「でも、もう大丈夫ですから、皆さん、ご自身の人生を歩まれてください。これは祖神たるオホノデヒメの末裔の願いです、どうかお聞き届けください」

逡巡している大人たちをよそに香は続けて、

「もう一つお願いがあります」

そう切り出して口したのは、何んとも面白うそうな話だった。

また、スマホが振動している。

兄からだった。

「ごめんお兄ちゃん」

「ああ、良かった無事か…記事見たか?」

「え?」


お読みくださりありがとうございます_(._.)_

適宜、誤字や表現等変更する場合がございます。予めご了承の程を。

まだまだ文才未熟ですが、もし面白い!と少しでも感じてい頂けましたら、いいねや評価をポチッと押して下さったら、嬉しいですし、喜びます(^^;。モチベーションにも繋がります。よろしくお願いしまし_(._.)_

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