きするもの
*『つないでゆくもの』の後日談の作品になります。ですので『つないでゆくもの』を読んでから、こちらに目を通される事をお勧めします。_(._.)_
*使用している画像・AIの人物画像は作者が作成したものです(商用利用可能な物です)
*「この作品はフィクションです。実在の人物、団体、事件などには一切関係ありません」
愛ちゃんからのお願いはちゃんとこなしたし。冴はベッドに寝転んでSNSのツブヤキーのタイムラインを見る。さすがに昨日配信をし忘れて、沢山のリスナーが心配してくれているようだった。今日も無理だから…みんなにはありがとうだし、申し訳ないけど……風邪を引いたから数日配信を休むことをツブヤキーにて呟く。瞬く間に沢山のリプ(返信)が来て、溢れてきそうな思いが目に溜まっていく。
ガチャ、ドアが開く。
「ただいまじゃ」
冴はベッドから飛び起きてリビングで愛を迎えた。
「愛ちゃん、ありがと、お帰り……」
え?誰?紫のキャミソールにデニムの短パン姿の女性が《まな》の後に着いて来ていた。あっ、そっか、この人が巫女の一人か…
「冴…こちらは帰雲紅さんじゃ、通称べにちゃんじゃ」
「あ、もう、べにでもなんでもいいけど…愛っちさ、本当にこんな所に磐座さんいるの?」
「んにゃ、ここではないのは、べにちゃんさも知っとるだで」
「へへ…マジバレてる、愛っちスゲー、あ、冴っち、あのVTuberなんだって、私見てるよ」
紅は、短パンのポケットから棒付きの飴を出すと差し出してきた。というより愛ちゃん人の事喋り過ぎじゃない…美樹さんにも喋っていたし…
「ありがと」
ビニール袋を取って飴を舐める。イチゴ味で甘い。
「べにちゃん、おいしい」
「でしょ?ていうかさ、こんなにスゴイ部屋に泊ってるって事は、二人ともお金持なんだー」
「そんな事よりじゃ…」
「愛っちせっかち、マジウケる。面白くない?愛っちせっかち…」
紅は両手で銃を撃つようなポーズを取って身をくねらせて笑い、愛が真顔なのに気付いて少し不貞腐れた素振りを見せている。
「もう分かった…磐座さんはね、今日島に帰って来た」
「それで…」
コンコン、部屋がノックされ、愛が対応しに行く。
「冴っちさ、愛っちせっかちだよね」
紅が耳元で囁く。
「うん、それはあるかも…」
「だよねー」
せっかちという訳ではないけど、持っている力のせいで先へ先へと会話を読むところがある。ただ、今回に限ってはそうではなくて、計画の為に気がせってるところがあるのかなとも思う。
愛の後について入って来たのは、鈴と執事のおじさん。今日の鈴は真っ赤なワンピースを着ている。鈴はどんな色でも似合うし服に負けない感じがする。ああ、確かに鈴より鈴と名乗っているのが分かる。すずちゃんより、りんちゃんのがしっくりくる。
「皆様ごきげんよう…あら、新しいお友達?」
「んだ、鈴さに、べにちゃんじゃ」
紅は鈴にも飴をあげている。
「うわ、美味しいじゃない!この飴、べにちゃんどこで売ってるの?」
「でしょ?でしょ?島のスーパーだよ、りんりんの香水いい匂い」
「そう?ありがと」
凄いな…この飴…美味しいだけじゃなくて、誰とでも仲良くなれる秘密道具みたい。口から出して飴を眺めても、何の変哲もない鮮やかなピンク色をしている。
「あら、冴さん髪染めたの?」
「えへへ、まあね」
「黒髪も可愛いわ」
「ありがと」
スゴイ、良く気が付く。昨日会っただけなのに…
「んだば、みんなソファに座ってさ」
愛の号令にみんな従って、それぞれ席に着く。冴は愛の隣に腰かける。テーブルを挟んだ目の前に紅、その隣に鈴。何かのケースを持った執事のおじさんは後ろに控えている。
「んなら、本当さ、もう一人おるんじゃけど、とりあえずここに集まった皆さ巫女の仲間じゃ…本来の世界線であれば、私達さ集まるのはもう少し先であったんじゃが、あの不可思議な記事のお陰でこうして一堂に会しておる。記事の因果はさておきじゃ、説明さ各々にした通りじゃで…これから、力を合わせて私達さの使命さ果たす。まずは、黒い石を取り戻すため古の罪人に会いに行くとする」
執事のおじさん以外、みんなニヤニヤしている。
「加賀美」
鈴が指をパチンと鳴らす。
「はい、ただいま」
執事のおじさんは素早い身のこなしでテーブルの脇に来て、一礼をすると持っていた大きなケースを床に置き、グラスを四つ取り出し、さらに瓶に入ったジュースを手際よくグラスに注ぐと、それを四人の前に置いて回る。
「さあ、みなさん、ワタクシからの景気づけよ」
鈴はグラスを手に持ち掲げ皆を見る。手に取ったグラスを顔に近づけるとリンゴのいい匂いがする。
「それでは、ワタクシ達の出会いと、計画の成功を祈って、チアーズ!」
「え?りんりん何それ?」
「んだ、たぶん乾杯じゃろ」
愛は、すでに一口飲んでいる。
「もう、みなさん、もう一度ね…よろしい?」
「チアーズ!」
みんなでグラスを掲げ、口したジュースは濃厚だが口当たりが良く、冷えていて美味しい。
「鈴さんおいしい」
「旨い…おかわり欲しいじょ」
「りんりん、マジおいしい、これどこで売ってんの?」
「オホホ、ありがと。長野よ」
「ふーん、りんりん長野ってスーパーどこにあるの?」
一瞬、時が止まったようだったが。
「べにちゃんさ、スーパーじゃない長野県じゃ」
「え?ウケるんですけど私」
手を叩いて笑う紅を見て皆も笑う。
「そうしましたら、ぼちぼち行きますの?」
「あっ、磐座さんは、映画村にいると思う」
「んだども、その前に、おかわりじゃ…その後は腹ごしらえじゃ…」
執事のおじさんが愛のグラスにジュースを注ぐのを黙って見つめる。愛は舌なめずりをして、ゴクゴクと一気に飲み干す。
「ん…旨いじょ…もう一杯じゃ」
「愛ちゃん」
「愛さん」
「愛っち」
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