むきあうもの
*『つないでゆくもの』の後日談の作品になります。ですので『つないでゆくもの』を読んでから、こちらに目を通される事をお勧めします。_(._.)_
*使用している画像・AIの人物画像は作者が作成したものです(商用利用可能な物です)
*「この作品はフィクションです。実在の人物、団体、事件などには一切関係ありません」
ベッドチェストに立て掛けてある美樹が描いた絵を眺めている。宵凪の海を舞台に半月に明かりに照らされた二人の巫女が舞を踊る。これを見る度にあの日の出来事が甦る。
香は、あの日、麻霧山での神舞が終わり、そのあと未来のビジョンが見えた時に、過去のビジョンも見えていた。その中で自分の祖神。つまり双子の神様に起こっていた、悲しい出来事も知っていた。
さっきの風子との話を聞いて、昨日、愛の話を聞いていて、心の奥底にある自身の黒い感情に気づいた。自分というより恐らく眠っている感情だ。
黒い石や例の記事に関係があるか分からないが、恐らくこれに引っ張られる事によって自分が死に誘われる。そんな予感がしている。
思念というか怨念というか、舞が自分の行動で記事が変わるというのもこれに気が付かなかった場合そうなるんだと思っている。
この感情を消化させるには…寄り添い認めて許す事。そうは分かっていても実際どのようにすればいいのか…どうりで、未来のビジョンに自分の姿がない訳だ。
島に来てくれている、冴や舞、愛や啓助、美樹に母…みんなが笑っている未来は見えているのに。
この奥底のどす黒い感情は、大きくなっている。何かをさせようとしているのは分かる。復讐かな…何となく漠然とそんな気がする。
でも、双子の神様が私達の代わりに天に帰ったはずなのに。自分がこの世に残された意味が復讐だなんて……黒い感情の正体……あなたは…ユナの怨念ね…姉をであるユキを殺された復讐……どうしたら……いいんだろう…
10日に神舞を舞うビジョンは消えていない…ああ、なるほど、石は記録している情報を流している。きっと私が気が付かない未来は自分の葛藤が自分を殺しているんだ。飲まれた未来は復讐を遂げる。美樹や母を巻き込んでいるのは分からないけど。ああ、何となく分かる…過ちを犯した自分と運命を共にしてくれている…そんなところか……タイミングが違うのは私の行動という事…その後の事故のニュースは?復讐を遂げないと…何かをしないと行動しないと、忠告、警告…結局、私自身が消される…でも神舞のニュース記事になったのは…私が黒い感情を消化…ううん、克服出来たっていう事になる…どうすればこの感情を浄化してあげる事が出来るのだろうか。
ああ、分かる…黒い石の意志…それとは別にその石の所有者が…ユキを殺した相手?直接その人じゃなくても末裔の様なものかな。
風子から謎のメッセージの話を聞いた時、明らかに心の奥が反応した。「つるぎ、けわしい、そば、つか」この一節を思い返しただけでも、それがグツグツと湧き上がるのを感じる。姉である、ユキを殺めた男に関係する文言なんだ。でも、私は飲まれない……気持ちは理解できるけど…
そうか巫女は神と交信できるはず。どこでも出来るのだろうか…
「香さ」
「ああ、もうビックリするやん」
結局、愛は突然現れる。
「ああ、すまん……まさか……死のうさ思ってる訳じゃないんじゃろ?」
「あ、それはそう、愛さん、どうしたら私の中の感情を消化できると思う」
カチカチ、やっぱり、こうやって話す時は爪を噛んでる。
「ん、許す事…んだども何をどう許すんじゃろ…こびり付いたカビのように…根が深そうじゃ…」
「あ?でも私の事見れるんだ?」
「そうじゃな…何故じゃ…それか因果を断ち切る」
「因果を?どうやって?」
数秒間、カチカチという音だけが聞こえた。
「…私さの婆様から、聞いた言い伝えじゃと、香さあの日に天に召され、残った巫女さが集まり人に光を見せるのが使命じゃと」
「やっぱり…」
「それと、婆様は運命は自分で紡いでゆくとも話しておった。んだから。元の原因である。モノをどうにかするか、その感情に呑まれない自信はあるようじゃが…結果を作るにも原因が必要じゃし…香さだったら大切な人が殺されたらどうするじゃ…」
「え?そんなこと考えてない…確かに辛いし…復讐なんかって今は思うけど……実際そういう状況になったら…してしまうかもしれないし………でもそれは違うと思う」
「じゃな……んでも、それは今の世の価値感じゃろ…その昔であれば、そうしても良かったのかもしれん……私さも自分が死ぬ未来さ見えた時、死に対して恐怖さあったんじゃ………んだども…香さから魂が輪廻する話さ聞いて、私さなりに腑に落ちた時、恐怖さ無くなった。どんな形であれ人に死は訪れる。復讐で殺めようが……そしてまた何処かに生まれ変わる……今の世で誰かが大切な人を殺めれば、ツラいが相手には罰が与えらえるはずじゃからの………ただ罰が与えられてないのじゃろ…そ奴には…」
「ああ、なるほど、輪廻させないようにするのが…罰ってことなんね」
「香さ…知ってることさ教えてさ…その人物…もしかしたらあの介在する意志がそ奴かもしれん」
「いいけど…何するん?」
「ん?安心さして、おかしなことはせんじゃ…」
「うん、年配の白髪頭の男性…恐らく手にケガをしている。ケガじゃないかも…それが私の先祖を殺めて、自身が神となった人物、もしくは末裔…それと…それに似た魂が二つ…ああ、私みたいに存在し得ない人がいるん……三人?二人かな」
「んだ、どうりでどうりで…んにゃ、ありがとう」
あれ?爪を噛む音が止んだ。
「ん?何か分かったん?」
「んー、別の因果を見つけたんじゃ、もうすでに罰が与えられてるやもしれん」
「それって?」
「会った時にさ、話す」
「うん、分かった」
「それと、もう一つ…香さにお願いがあるんじゃ…」
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