まようもの
*『つないでいくもの』の後日談の作品になります。ですので『つないでいくもの』を読んでから、こちらに目を通される事をお勧めします。_(._.)_
*使用している画像・AIの人物画像は作者が作成したものです(商用利用可能な物です)
*「この作品はフィクションです。実在の人物、団体、事件などには一切関係ありません」
「ただいま」
部屋に入った途端。煙草の匂いが充満している。
「お帰り、どうだった?」
兄は煙草を吹かしながらソファに凭れていて、陶器の灰皿には吸い殻が溢れている。
「もうちょっと煙草吸い過ぎじゃない?」
窓を開けると、夏とは思えない淡い潮の香りを含んだ涼しい風が入って来る。
「ああ、ごめん」
兄はそそくさと吸い殻をビニール袋に入れゴミ箱に捨てた。
冷蔵庫から缶ビールと水を取り、テーブルに置いて兄の向かいのソファに座り水を一口飲む。
「ありがとう、それで何か分かった?」
ビールのプルタブを開け急かす様にこちらを見ている。どこから話せばいいかな…
「うん、何かまた不思議な事が…」
舞は巫女の血統の人物が続々島に集まってきている事、その皆が例の記事を見ている事を伝え、その記事の発信源が黒い石で京都にあるという報告をした。兄は煙草の煙を吐いた。
「いやいや、ちょっと待って。一つ一ついい?その巫女の血筋が集まっている……それも全員が記事を見ているってことでいいんだよね?」
「うん」
「それがもしかしたら記事が変わった要因?」
「うん、その可能性は大いにあると思うよ」
「でも、そういう人達が集まって来た…何か起こるのか?」
「うーんどうなんだろう…たぶん例の記事をきっかけに集まって来ているのは確かでしょ?でも良くわかんないな…あれから記事は変わってないし、もしかしたら関係ないかもしれないし…ああ、でもその中の愛さんって記事の発信源の黒い石の所在を見つけた人は、それを調べている時に何かの意志にバレて、その後、自分がその……死ぬ未来を見たんだって」
「え?逆探知みたいなことか?黒い石自体に意識というかそういう力があるって事なの?」
「分からないけど、黒い石に介在する何かの意志があるとも言っていたかな…香ちゃんが愛さんを見た時にも、邪魔をするような意志を感じがしたって言っていたから、それが石によるものなのか何か別の意志によるものなのか、それとも全く関係ないものなのか…私にはさっぱり…でも、香ちゃんは意に介していないみたいで、大丈夫って笑っていたけど」
「そうか…黒い石…邪魔をする意志……京都ね…」
自分で話していて悪寒を感じる。記事は変わっていないないし、大丈夫だと思う反面、何も起きなければいいんだけどとも思ってしまう…
「それから愛さんの未来を見た香ちゃんが、あなたは生きるから夕凪島に来てって愛さん呼んだみたい」
「未来が変わる?って事か……ん?ちょっと待って、この島にくる事によって生きる未来がある、それは原因なの結果なのか…その両方って事もある訳か」
「因果の両方…ああでも香ちゃんこんなことも言っていたかな、自分の見えるビジョンだと愛さんも冴さんも夕凪島に来るって、どういうことなんだろう?」
「香さんが呼ばなくても、二人は島に来ることになっていたってこと?」
「たぶん…」
「じゃあ、まさに今、因果が変わっている最中なのか…でもそうしたら記事が変わってないのはどうしてだ」
「やっぱりそうなるよね…発信源の黒い石とか、邪魔をする意志?それとも純粋に香ちゃんの意識や行動なのかな…」
「まあ、記事が変わっていないのを幸いと取るしかないか…ああそうだ、明日も俺は動けそうにないんだ、ごめん」
兄は申し訳なそうに首を振る。
「ううん、しょうがないよ…」
「でも、話を聞く限り…香さんの力は無くなっていないという事だよな?神様が嘘を言っていたって事?」
「うーんどうなんだろう?嘘をつくとは思えないし……」
「その事が因果の原因だったり、力を失わずにいる事が…本来はこの島の巫女の血筋が絶えるはずだった。ところが双子の神様が香さんと美樹さんの代わりとなり天に召喚された。それによって香さんも一人の人間として生きていくはずが…理由は分からないけど香さんは力を失ってはいない。だから天に戻させようという因果が起こるんじゃないかな…」
「でもそうだとしたら、香さんのお母さんや、美樹ちゃんが巻き込まれてるのはどうしてなんだろう?お母さんは、まあ巫女の血筋だから分からなくもないけど。美樹ちゃんは?力はないし…魂は確かに神様の物が下りているけど…」
「それか、全く違う原因が及ぼしているのか…………」
「別の?」
「だって、世の中の色んな事が絡んでくる訳でしょ?うーん例えば高松に来るのだって、電力会社が電気を供給してるから電車が動く、電車は運転手や整備してくれている人達がいるから動く、公共交通機関にはすべて当てはまる事だけど、フェリーだって電気じゃないけどそうでしょ関わる人達がいるから。そのどこかが欠けても自分達は高松に着けなかったかもしれない。だから香さん直接じゃなくても関わってきている何かがあるのかもしれない」
「石…黒い石?…邪魔をする意志…」
「うん、ただ、京都でしょ…場所が分からないし、その愛さん、みたいに所在を調べて、おかしなことになりかねないというのも怖い…そもそもどういう類の石なのか……ああ、そうだ、全然関係ないかもしれないけど、行方不明だった女性ついて公開捜査番組を見てたって話したでしょ、気になることを思い出して調べてみたんだ…」
兄は、それを見た当初は何気なく聞き流していたらしいんだけど、女性は謎の言葉を残して失踪していたらしい。それをネットから拾って来てメモ用紙に書いてあるものを見せて来た。「つるぎ、けわしい、そば、つか」「てんたかく、あわきほしふる、あまてらし」これらは本人が書いていた日記の失踪前日のページに記されていたものだそうだ。
「最初のは…単語が並ぶだけ、次のは歌みたいだよね…しかも…あの麻霧山での「神舞」の最後の光景みたい」
「ああ、確かに…そう言われたら、うん確かにそうだな……という事は預言?の類なのかな?」
「つるぎ、けわしい…漢字で書いてみようか…剣、険しい、傍、側、蕎麦、塚、束、柄」
何だろう?刀とかかな?でも険しいとそばの意味が分からない。
「この、世良さんって人も巫女に関係あるのかな?」
世良?
「お兄ちゃん、世良って言った?」
「ん?ああ、この行方不明だった女性の名前だけど?」
「西龍寺のご住職に記事を見たって連絡してきた人も世良っていう女性だった…」
「え?じゃあ、もしかして、同一人物?この人も巫女?」
「可能性はあると思う、今読んでる巫女の本も世良家の蔵書だったの、同じ家かどうかは分からないけど……今日はもう遅いから、明日、ご住職に聞いてみる」
「そうか、そうだな、もしかしたら島に来てるかもしれないし」
「確かに…」
それから、同じような会話を堂々巡りし、兄はシャワーを浴びに行った。
舞はスマホをチェックして例の記事が変わっていないに安堵のため息をつき、そのまま世良という女性のニュース記事を検索してみた。3年前の8月2日に当時、高校三年生の世良風子さんが昼間に家を出た切り失踪したというものだった。ん?風子……どっかで見た名前だけど…え?どこで見たんだろう?
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