ほんもの
*『つないでいくもの』の後日談の作品になります。ですので『つないでいくもの』を読んでから、こちらに目を通される事をお勧めします。_(._.)_
*使用している画像・AIの人物画像は作者が作成したものです(商用利用可能な物です)
*「この作品はフィクションです。実在の人物、団体、事件などには一切関係ありません」
何故か知らないけど、何処にいてもジロジロと人の事を見る。
三輪愛は家を出てからずっとそれを感じている。
愛は冴には同じように引きこもっていると話したのは嘘で、普通に生活をしている。ただ、喋り方が独特であるが故に、あまり人と話さない。基本、家にいるのを好み暗いところが大好きだ。冴と知り合ったのは。あの子からの助けてという意識をキャッチしたからだ。話をしているうちに、自分と同じ巫女の系譜に連なる者と確信し、住所を聞くと、本人にはつい先日まで話していなかったが、ある一族に結び付いた。ただ冴以外にこのテレパシーで話せる人間は現れなかった。
愛が人の相を見れるのは。婆様のお陰だった。何でも三輪家は何代か置きに自分のような能力を持った者が現れるという。それを目覚めさせるために婆様に赤ん坊の頃から色々教育を施された。そのお陰で喋り方まで受け継いでしまったが、小学校に上がる頃には、人に意識を向ければそれが分かるようになっていた。愛の力は愛自身が認識した人であれば誰でも見れる。認識というのは名前なり容姿なりで、実際に目の前にいれば名前は知らずとも良い。
婆様は自分が18歳の七月の下弦の月の日。転換がある。大いなる巫女の魂が天に帰り、その後は我ら残りの五人の巫女が人に魂の光を見せるのが課せられた使命だと。ところがその日が過ぎても何も起きない。他の三人の巫女の所在も分からない。そして昨日あのニュース記事が目に入った。天に帰った筈の大いなる巫女の名前がそこにはあった。最初は理解に苦しんだが、婆様が言っていた事を思い出した。「因果が変わることもある。そん時は、自らさ運命を紡ぐのじゃ」別に婆様がこの事例に関して言ったことではないにせよ、疑問に思いながらも、それから香にコンタクトを取るとちゃんと生きている。香は驚きはしていたが、しかもすんなり会話が出来た。という事は既にこのような方法で会話をしたことがあったのだろう。やはり本来はいない筈の人間の未来を見れるはずも無く、愛にもその時、香の未来は見えなかった。だが、何かの力に阻害されているようにも感じた。それと同じ感覚を記事の発信源を調べた時にも感じた、ただその時に何者かの意志に気が付かれ、それ以降その意志に着けられているような気がする。そう気が付いたのは岡山に向かっている新幹線の中で、着けられているというよりは見られている感覚に近かった。このまま夕凪島に行ってもいいのか、香に尋ねると「大丈夫」そう言って笑っていた。
高松駅に着き、人の流れの後をトコトコと付いて行く、改札を出たら、香に似てる美樹という女の子が待ってると香が伝えてきていた。自動改札を無事に潜り抜けると、その子はひょっこり姿を現した。確かに似ている。髪型まで似ている。背格好も…いや…
「あなたが、愛さん?」
頷くと、自分の手を握り。
「うちは、跡部美樹、香から話し聞いてるんやろ、香の友達は、うちの友達や、よろしくね」
眩しい笑顔がこちらを見ている。
フェリーに乗るからと手を引っ張られ、駅舎を出ると大きな広場になっていて、ここも高いビルや人や車が多い、しかも夜だというのに明るい…風は涼しいが。
連れらるままフェリー乗ると、美樹は質問攻めを開始する。
しかし、よくニコニコする子で、それから根ほり葉ほり聞かれ、ついうっかり冴とやっているYouTubeの事を話してしまった。美樹は驚いていたが、チャンネル登録をしてくれていて、内緒にしてくれるよう頼んだら、ゆびきりげんまんして笑っている。
それから意外だったのは趣味がゲームという共通点だった。私らと同じ「原神」というゲームをしていて、共通のフレンドがいる事も知った。
ただフェリーの客室は大きくて眩しい。やはり、小さな暗い部屋が落ち着く。
それから夕凪島の港に着くまでゲームで遊び、どこにいたのか一緒に乗っていた美樹の両親がホテルまで送ってくれ、そこには香と冴と、舞という知らん人がおったけど香が言うには大恩人らしい。それに不思議な威圧感の鈴という子と執事の様なお爺さん。何でもこの人達がホテルを手配してくれたようだ。
「愛さん、ようこそ夕凪島へ、会えて嬉しい」
「ああ、私さも、香さに会えて嬉しい…んと、ありがとう」
夜が遅かったこともあり挨拶だけ済ませると、冴が部屋に案内してくれ、部屋の中も色々説明してくれたが、四畳半の自分の部屋と比べ、広すぎてどこがどこだかわからない。とりあえず一番暗そうだった寝室に落ち着いた。冴は美樹程ではないにせよ終始ニコニコしている。よくよく考えれば冴とも実際会うのは始めてだった。
二つあるベッドに冴と向かい合って座ると、冴はチラチラとこちらを見ている。しかし…
「愛ちゃん…よかった」
「ああ、冴も………」
「ん?愛ちゃんどうしたの?」
付き合いが長いだけあって冴は、爪を噛んでいないのに気が付いたようだ。
「こうやって面と向かって喋る時には流石に爪は噛まんのじゃ」
「ああ、そうなんだ…それだけ?」
「ん…香さの恩人さの…」
「舞さんの事?」
「んだ、舞さん舞さん…あの人さ、一度死んどる…」
「え?」
「それから、あの威風堂々たる…」
「ああ、鈴さん?」
「んにゃ、鈴じゃなくて鈴じゃ」
「え?」
「ほう、冴も気づかんほど、自身で思い込んでいるという事か…それはそれで、すごいの」
「全然分からなかった…騙そうとか、そういう感じしなかったけど…」
「そうじゃろな、悪意はないんじゃろ…んだども鈴が本当の名乗りじゃ、そして、彼女も巫女に連なる者…」
んだども…
「やっぱり…ん?何が気になるの?」
「…んにしても、不思議な場所じゃ…」
「このホテル?」
冴は急にキョロキョロし出す。
「んにゃ、この島じゃ…」
「この島?」
「どういうふに、私にはその愛ちゃんの頭の飾りが不思議なんだけど」
首を傾げながら、指を差している。
「ん?これか…かわいいじゃろ」
「え?ああ、かわいい…ね…でも愛ちゃん、この島に来たら死ななくて済むのと関係があるの」
「んだな…この島に着いた時から、空気がいや気が変わったんじゃろ…多分結界じゃな…この島の結界のお陰…さもなくば……それから…確かに私さの未来が変わった…んだども…何か介在する力があるのは変わっとらんのじゃが…」
「ふーん、でも、愛ちゃんに、こうやって会えたから嬉しい」
自分も嬉しいのだけど、ニコニコしている冴を見ていると、さらに嬉しさが増してくる。
「ああ、私もじゃ」
「でも愛ちゃん、ここにいつまでいるの?」
「んだ…少なくとも…10日迄…そこを過ぎれば…恐らく私さ大丈夫じゃ…」
「そっか…」
「んだども、冴、ありがとう」
「ん?何が?」
「私さの為に、勇気を出したじゃろ…秋田まで来ようとしてくれた…その気持ちと行動が嬉しいんじゃ」
「だって、愛ちゃんに助けて貰ってばっかじゃん…私に出来る事、それしか思い浮かばなかった…愛ちゃんがいなくなったら…私」
「もういいじょ、冴、それ以上言わんのじゃ、私さだって、冴に助けられとるんじゃからお互い様じゃ、ただな冴、今日のこの一歩の勇気を忘れないようにして欲しい…」
「へへ、分かったよ…それにさっき話した大切な事するんでしょ?」
「あ、あと香さとの約束もあるしな」
「ああ、そうだね。でもあれが約束なの?」
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