みつけたもの
*『つないでいくもの』の後日談の作品になります。ですので『つないでいくもの』を読んでから、こちらに目を通される事をお勧めします。_(._.)_
*使用している画像・AIの人物画像は作者が作成したものです(商用利用可能な物です)
*「この作品はフィクションです。実在の人物、団体、事件などには一切関係ありません」
自信が人を成長させるという事を香を通して舞は間近で見ている。香はただ信じている。自分が見えた未来の事を、自分自身を。香のビジョンの内容がどのような物か聞いた訳ではないけれど、振る舞いを見聞きしていたら、良い物なのだろうと思えてくる。ただ、ニュースの記事を見た者としては、そこが常に頭の中にあるのも事実で、こと歴史関しては予備知識があるから、こうじゃない、ああじゃないと考察する事、人に言わせると自由な発想が出来るのだが…これに関してはお手上げに近い。
しかし、テレパシーって使える人間いるんだね、後部座席の二人は。突然笑い出す。仲間に入りたいが、こればかりはどうにもならない。
逆に運転に集中していて気が付いたことはステーションワゴンを運転しているのは川勝龍一郎で、その後ろにホテルのロビーで京一郎とぶつかった紳士が運転している軽自動車がいる、その紳士と一緒にいたのは鈴だった。みんなで付けていたって事?
福田港から信号のない道を走り続け、内海町に入って初めてのそれに捕まり、ニュース記事を確認する。変わっていない大丈夫。
でも、あの記事がきっかけで鈴や冴、愛、三人の巫女の末裔が島に惹き寄せられた。もしかしたら、あの世良さんという女性も来てるのかもしれない。いやでも死によって集うのはどこか違う気がする。それが無くても集っていたのではないだろうか?そんなニュアンスを香ちゃんは話していたし…そうにしてもあの記事の因果は何なのだろう?こうして巫女の関係ある人達が島に集まって来ていても何も変わらない。まあ、今の記事の内容が、香ちゃんの安否に関わるような事でないから良しとすればいいのだろうけど…やはり香ちゃん自身の何かが関わっているのだろうか?そうなってくるといくら考えた所でどうしようもない。距離を縮め傍にいて、実際に顔を見て話をしているから、助けが必要な時に対処するしかないのかもしれない。ぐるぐると同じ思考が巡る。
車は内海湾沿いの海岸線を走っている、傾いて来た陽射しが眩しいのでサンバイザーを下ろす。バッグミラー越しの香は、相変わらず冴と”会話”をしている。
「え?石?」
香が突然声を上げて、舞は危うくブレーキを踏みそうになった。
「どうしたの香ちゃん?」
「え、あの愛さんが、記事の発信場所突き止めたんて、それが向こうにバレて、その…自分が死んでしまう未来が見えたんやって」
「ちょっと、どこかに車止めるね」
海岸線の道が右にカーブする外側に大きな路側帯のスペースがあり、そこに車を寄せて止める。
「えーと、あの記事の発信源ってどういうこと?」
「愛さんが言うには、石から発信されているみたいやって、それは今京都にあるみたいで。山の中の大きな家までは見えたんやけど、邪な意志が邪魔をしてきて逆に突き止められたって…」
「京都…石が二つあるの?」
「ああ、ややこしいんやけど、記事は石自体が発進してるんやけど、そこに邪な何かの意志が介在しているって」
「石が発信源で、何かの意志が働いているって事ね……その石ってどんな石なのか分かるのかな?」
「黒い石やって」
「黒い石……」
舞の頭には自然と黒曜石が浮かんだ。黒曜石は切れ味の良さから石器時代の昔からナイフや矢じりとして広く使われたはず。知っている範疇の産地としては長野県、島根県の隠岐島、大分県の姫島。他に黒い石って何だろう?
それが何故、邪な意志の介在があったとしても、発信源になるのだろうか?
「舞さん?」
「ああ、ごめん、京都…黒い石……なんの関係があるんだろう…」
やっと出て来たヒントにも関わらず、黒い石が何なのかも、石から記事が発信される仕組みもさっぱり見当もつかない。そこに関連付くものも思い浮かばない。
ん?いつのまにか、前にステーションワゴン、後ろに紳士が運転する車が止まっている。ああ、私には気づかれても良いって事なのね。
「じゃあ、出発するね」
アクセルを踏んでステーションワゴンをゆっくりと追い越す。運転席の龍一郎と目が合うと軽く笑みを浮かべサングラスを掛けていた。
まさかとは思うが…本堂の横の岩肌伝いにある赤い社の下に脚立を立てる、宝樹院の龍順住職から、気になることがあるので磐座を確認して欲しいと連絡があった。龍順にしては珍しく焦っているようで、こちらに来るとも話していた。
この社の中には、遥か昔の御代に麻霧山にあったと伝わる磐座の名残であるという石の欠片が三つお祀りされている。梯子を上り、社の扉に付けてある錠前を外し、手を合わせ扉を開けると、一目瞭然である筈の物が一つないのが分かる。中央に祀られていた黒曜石が無くなっていた。
いや、でもどうやって錠前を外したんだ……ここの鍵は…奥座敷の金庫の中…錠前を確認すると、鍵穴に傷が付いている…ピッキングの類か!…そもそも昔の磐座の欠片と言ってもそんな価値が有ろうこともないと、一般的な倉庫に使用されるような錠前を用いていた。
しかし、この磐座の欠片に何の意味が………社の扉を閉めた途端、身震いと共に頭に湧いた記憶が結び付く。まさか………しばらくそのままの姿勢で項垂れる。
我に返り、急いで母屋に戻り地下室の書庫で古伝に目を通して、自身の記憶が裏付けられて肩を落とす。我々が見落としていた、奴らの別の狙いはこれだったという事か……
居間へと戻る頃、程なくして龍順がやって来た。こちらを一目見た龍順は察したのか沈痛な面持ちなる。
「そのご様子…もしや」
「ええ、カラスめにしてやられました…」
「そう…ですか…しかし、磐座の欠片…石の欠片を盗んでどうするつもりなのでしょう?」
龍順に古伝の記録を掻い摘んで説明する。その昔、石や岩、水に記憶持たせる事が行われていた事を。
「そんな事が出来ていたんですか…いやでもそれを奪ったとしても、どうやってそれを取り出すのでしょう?」
「そこは、確かに分かりません…が、術を知っている可能性はあるでしょう?」
「なるほど………」
「まさか…これが、例のニュース記事と関係しているのか?」
「あの、仰っていた、我々には見えない記事と…ですか?」
「いや、全くもって根拠も何もないですが…分からない事があるというのは何とも不安になりますね…何事もなければよいのだが」
姫巫女様は無事だ…例え磐座の欠片が、至高の叡智を持っていたとしても我々の使命は姫巫女様を守ることが責務。
「姫巫女様には侍りが付いていますし、ああ、関りがあるか分かりませんが、先程話した、恐らく奪われた石を探している子がいるのですが…」
今朝の女性の姿が思い浮かぶ。容姿を龍順に問うと、頷き近所の帰雲紅という高校三年生だと教えてくれた。彼女は何故、磐座を探しているのだ?
思わず笑ってしまう。
「どうされました?」
心配そうな龍順の顔が窺っている。
「いや、人間分からないことに突き当たると笑ってしまうものなのでしょうか」
後頭部を叩きながら、首を振った。
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