ヲタッキーズ176 霊能者ラプソディ
ある日、聖都アキバに発生した"リアルの裂け目"!
異次元人、時空海賊、科学ギャングの侵略が始まる!
秋葉原の危機に立ち上がる美アラサーのスーパーヒロイン。
ヲタクの聖地、秋葉原を逝くスーパーヒロイン達の叙事詩。
ヲトナのジュブナイル第176話「霊能者ラプソディ」。さて、今回は秋葉原セレブの間で有名な霊能者が殺されます。
覚醒前の旧人類による霊能者の存在を疑う声もある中、捜査線上に浮かんだのは浮気な妻達の愛欲模様と霊媒達の驚異的な"パワー"で…
お楽しみいただければ幸いです。
第1章 霊能者の客達
「ママ!」
タワマンのペントハウス。娘が合鍵で御帰宅。
「ママいる?いないの?」
ママは、実はシングルマザーだ。そんな母娘がタワマンに住めるのは、1冊のベストセラーのお陰。
"my life with the dead"
"死人と歩む人生"?ゾンビかな?扉を開けると、正面の壁に著書の表紙が額に入れて飾ってアルw
「え。何?」
怪しげな壺や彫像が並ぶ広いリビングを横切る。その先の絨毯に赤いシミ?血痕?スマホを抜く娘。
「ママ。出て、お願い!」
スマホが鳴る…ソファの中から?突っ込んだ手が血に染まる。娘はクッションを投げ、ひっくり返す。
転がり出たのは、血染めの息絶えたママ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
"秋葉原マンハッタン"。摩天楼群が朝焼けに染まる。ビルの谷間の日の出は、いつもオレンジ色だ。
で、元カノ会長スピアの朝帰りw
「ミユリ姉様、おはよう!良い朝ね…テリィたん、いたの?」
「おいおい。朝帰りか?ゴマかすな…ってか、呼ぶ順が逆だけど」
「ううん。そんな早い時間だと思わなかっただけ。今朝は色々考えちゃって」
とか逝いながら左手をヒラヒラさせる。
「げ。ダイヤだ。デカいな」
「スピア、プロポーズされたの?」
「ミユリさん、これからはチェトさんと呼ぶんだ」
御屋敷のバックヤードをスチームパンク風に改装したら居心地良くて回転率は急降下、経営を圧迫中w
朝から常連が婚約指輪を見せに寄るしw
「待って。確かにプロポーズされたけど、未だOKしてないわ。私は、少し考えさせて、と答えたの。そうしたら、彼ったら、考えてる間は指輪をつけてねナンて言うのょ困っちゃう」
指輪をつけ困ったフリ。だが、脳内はルンルン120%のお花畑状態でアルのは火を見るより明らか。
「ダイヤは説得力そのもの。今も石のささやき声が聞こえるだろ?私を返さないで、返さないで…」
「テリィたん。でも、コレは決断が迫られてるってコトょ。つまり、私がゲームに参加するか、降りるか。ハッキリさせなきゃ」
「あら?スピアはチェトを愛してないの?」
メイド長のミユリさんがイングリッシュブレックファーストを2皿サーブ。まぁ僕はコーヒーだけどw
「チェトを愛してる。だけど、私にとって大事なのは…毎日のドキドキがなくなるってコト」
「ふーん毎日がドキドキな僕の元カノのママでいたいってコトか?ホンキかょ?」
「…悔しいけど、YES。このドキドキを消したくナイ。この指輪をもらって、確かに10分位はドキドキしたけど」
とか言いながら、またまた薬指に見惚れるスピア。
「やっぱり婚約はヤメようかしら」
「僕ともしなかったしな」←
「いつでも、御帰宅してね。ね、テリィ様?」
あくまで、ミユリさんは優しい。現カノの余裕か。
スピアをハグしながら僕は明後日の方向を見てる←
「テリィ様!」
異口同音で責められたトコロでスマホが鳴る。
「また、スマホに救われたw」
「ラギィからだ…はーいテリィだ」
「何処にいるの?早く来て!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「マジかょ?今度の被害者は、霊能者のビビア・マシャだって?」
"秋葉原マンハッタン"27Fの殺人現場。ソファのクッションが引き出され、その上に死体が寝てるw
「え。テリィたん、知ってるの?」
「うん。アキバのセレブ界隈では、ちょっとした有名人さ。実は、僕も8年前に鑑定してもらって度肝を抜かれた。マジでスゴい」
「テリィたんの度肝を抜いた女…」
ラギィは万世橋の敏腕警部だ。僕とは彼女が前の職場で"新橋鮫"と呼ばれてた頃からのお付き合い。
僕は声を潜める。
「予言が全部当たっててさ。死因は?」
「首をアイスピックで1撃。ただ多分、直後は生きててソファの中に押し込められてから窒息死…って、何で、彼女はソレを予言出来なかったの?」
「え。ソレは…」
僕のリスペクトをアッサリ粉砕したのは、超天才のルイナ。ラボから"リモート鑑識"してくれてる。
いつの間にか僕のスマホをハッキングして参戦w
「ルイナ、死亡時刻は?」
「硬直してるから死んだのは昨日の午後ね」
「ラギィ!午後2時半頃、男が裏口を出るのを見た目撃者がいるンだけど」
ヲタッキーズのエアリが相棒のマリレと登場。因みに2人はメイド服。何しろココはアキバだからね。
「目撃者の特徴は?」
「背の高いアジアン」
「ヲタッキーズ。昨日、ビビアが鑑定した顧客のスケジュールを調べて話を聞いて」
スーパーヒロイン集団"ヲタッキーズ"は民間軍事会社だ。今回の事件は警察と合同捜査になりそうw
「ソレにしても、なぜ死体はソファの中にいたんだろう?」
「テリィたん。入れられた時は、彼女は未だ生きてた。顔に入れられた時に出来た傷がある。ラボで詳しく調べるから」
「昨日の午後3時に"TJ"と約束してるわ」
レトロなカレンダーを見つけるエアリ。指差す先に
"pm TJ"の描き込み。
「ソレだけ?TJって誰だょ?そもそも人なのか?」
「お化けカモ。そーゆーの霊能者は見えルンでしょ?"覚醒"したスーパーヒロインなの?超能力は未来予知?次元可視とか」
「ソレが"blood type RED"。普通の腐女子だった」
アキバに開いた"リアルの裂け目"の影響で、腐女子が超能力に"覚醒"、スーパーヒロイン化する現象が相次いでいる。彼女達の血は"青い"。だが…
「彼女の血は"赤い"のか…でも、昔から未来を予言する"超能力者"は存在スルんだ」
「つまり"超能力者"は、昔からいる詐欺師で、霊能者は詐欺師な上にペテン師でもアルってコトね。どうせ、みーんなニセモノょ」
「ナンで偽物だと言い切れる?」
割り込んで来たラギィに反論スル。
「テリィたん。私、新橋から秋葉原に来たての頃に良く"その手の人達"から事件の手がかりがあるって通報をもらった。でも、どの情報も全部デタラメで、時間を無駄にしたわ。あんなの信じてるなんてバカょ」
ミもフタもナイw
「ラギィ。人は繊細でさえあれば、死者とも話せるのさ。この世に、自分より繊細な人がいても、全然不思議じゃナイだろ?」
「あら?テリィたんより繊細な人?ソレは、全く不思議じゃないわ」
「…テリィたん自爆しちゃったね」
ヲタッキーズにクスクス笑われる。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
現場で通報者のピニィ・マシャの事情聴取。
「お母さんを恨んでる人は?」
「母は"覚醒"するコトなく、超能力を身につけた精神世界を重んじる人でした。敵など、いるハズがありません」
「昨日の2時半頃、背の高い男が目撃されてます。お心当たりはナイですか?」
即答w
「ありません」←
「最後にお母様と話したのは?」
「昨日の13時頃です。その日のセッションが終わったので瞑想スルと言っていました」
瞑想スル度に娘に話すのかなw
「最後の顧客の名前は?」
「母親とその娘さんでした。名前は…予約台帳に載ってると思いますが」
「カレンダーによると、15時にTJさんとお約束があったみたい。どなたかわかりますか?」
ラギィが追い込む間、僕は豪華な億ションのお部屋拝見だ。風景画の横に額に入った新聞の切り抜き。
"psychic delivers messages of hope"
「霊能者が手がかりを?確かコレ、女性が失踪した事件だょね。夫は、悲嘆に暮れたが、実は、愛人がいた奴だ。お母さんが捜査に協力してたの?」
「YES。母はビジョンを見ました。その夫が、バーでアンバという名前の女といるトコロ。ソレを母が警察に伝え、夫の捜査が始まりました」
霊能者って迷惑だな!
「ソレでどうなりました?」
「夫は刑務所送りになり、母は一部始終を本に描いて一躍ベストセラー作家に!」
「その後も捜査に協力を?」
同じベストセラー作家として逝う。君は迷惑!
「YES。全国の警察で10年間に10人以上を刑務所に送っています」
小鼻を膨らます、霊能者の娘ピニィ・マシャ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋に捜査本部が立ち上がる。
「ビビアが刑務所送りした人達のリストょ。ヲタッキーズ、この中に出所して恨みを持ってそうな人がいないか調べて」
「ROG。ラギィ、昨日の最後の顧客が来たわ。霊能者のオフィスで、濃い髪の色の男を見たって言ってる。ポーラとマリナのカシア母娘ょ」
「ありがとう」
ラギィは、エアリからファイルを受け取る。
「カシア?複数形の所有格にするとカシアスズス?カシア達の車はカシアスズスカーか。アウグスツスみたいだな!」
「菓子屋ス。お菓子屋の複数形とは違うの?ラウンジに来てる」
「ROG。ありがとう」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋のラウンジ。
「いつもは私達が最後ですが、その日は男性が待っていました。突然の来院らしく、ビビアも驚いてたわ。男性は怒っているように見えました」
「その男性の特徴は?」
「暗い色のコートを着て、髪はこめかみに白髪混じり。それに顔に傷がありました」
ココで母親のポーラが鷹揚に口を挟む。
「お名前は、アルフとか、アルバとか、呼ばれていたように思います」
「わかりました。ご協力、ありがとうございます」
「いつ頃から、お嬢様とご一緒にビビアの鑑定を受けるようになりましたか?」
僕が母に尋ねると、娘が母の手を握る。
「4ヶ月前です。夫のエミヲが死んでから、どうにもこうにも寂しくなって」
「前に進むためですね。死を乗り越えて」
「そうね、ビビアは最初のセッションの時から、驚くほど夫のエミヲのコトを色々と知っていました」
またかょ。勢いづくラギィ。
「例えば、どんなコトを?」
「エミヲのビタミン剤の事業の内容やチキンライスが大好物であると言うコト。さらに何より正真正銘のワーカホリックであったコトまで」
「ソレに、工場で亡くなったコトも。彼女は、お父様が現世の私達に、何かを伝えたがっている、と言っていました。昨夜、父の霊と交信してみるとも言っていました。でも、もう聞けません。父が何を語ろうとしていたかは、永遠の謎です」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋の捜査本部。エアリが飛び込んで来る。
「ねぇ!ビビアの娘が言ってた、クリニックの待合室にいた男だけど、アルバ・モレノみたいょ」
「マジ?"切り裂きアルバ"?」
「YES。ストリートマフィアの用心棒ょ」
本部のモニターにアルバの画像が出る。
「コイツもビビアの霊性のお導きにより逮捕された口かな?」
「いいえ。その逆。モレノは彼女のクリニックに通ってる優良顧客。乙女ロードの不動産を買えば幸せになれる、と言われたらしい。だが、投資は失敗。彼は全財産を失った」
「凄腕だな。マフィアを身包み剥がしたのか!下手な助言をしちゃダメ。そんなコトして損を出したら報復されるに決まってる」
どーやらビンゴだ。ラギィも小鼻を膨らます。
「アイスピックで刺されるのがヲチね。そして、ソファに押し込められる」
ラギィは、ホワイトボードにモレノの写真を貼る。
第2章 人生台無しでショー
ランクアップのために売りに出したモレノの家を見て口をポカンと開けて驚く。コレは…正しく豪邸w
「アルバ・モレノか。マフィアの下っ端のクセしてゴージャスな生活をしてるなー」
「税金を払ってナイと、こーなるのね」
「ファミリーからの収入もさぞかし使いでがあったでしょうね」
ゲートを抜け花に囲まれた玄関への道を歩く僕達。
「白金にあるハードバンクの損さんの豪邸よりスゴいな。しかし、アルバはもっと稼ごうとしてる。未だ満足してない。欲求は果てしナイな」
やっと玄関に辿り着くと、画板に不動産担当者の顔写真。コレがまたスゲエ美人。ビジュアル系だょ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
オープンハウス、と逝うか、オープン豪邸の階段を降りて来るのは写真どおりの美人。スゲぇ本物だw
「不動産会社のロリン・カータです。きれいな家でしょ。お若いカップルに最適だわ」
「アラ還過ぎた僕に、見え透いた御世辞で普通なら怒るけど、美人だから許す、と逝うかウレしい!」
「…モレノさんはいますか?」
さっさとバッチを出すラギィ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ゴージャスな応接セットにふんぞりカエルのはモレノ。まぁフワフワなので僕達もふんぞりカエルがw
「そうさ。ビビアには3ヶ月前に不動産投資を勧められた。俺はその時、足を洗ったばかりでね。投資をすれば幸せになれると思ったのに…」
「大失敗をして全てを失った?」
「YES。俺は怒った。すると、彼女は面会をキャンセルし、連絡もつかなくなった」
おぉ筋書き通りにサクサク進む(捜査がw)。
「だから、昨夜は会いに行ったのね?」
「ローンが払えなくなって、この家を売るコトになったンだ。ソレを伝えに行ったのさ」
「で、どうなったの?ついカッとなって、手が出たのょね?悪気はなかったのょね?」
ニヤリと笑うモレノ。
「いいや。確かに俺は怒ってはいたが…彼女はビビっちまって泣き出し、ナダメるのに疲れたょ。結局後は"宇宙がなんとかしてくれる"とか言っていた。流行ってんのか宇宙って?それで、彼女はアップタウンでの次の約束に出かけたのさ」
「誰に会うために?」
「さぁな。俺も不動産ブローカーとの約束に遅れていたので、2時半には現場を出た。で、結果がコイツだ。気がついたら、宇宙がなんとかしてくれたのさ!」
いつの間にか、モレノの横には、先程のロリンがウットリするような目で座っている。見つめ合うモレノとロリン。うふと笑うロリン。呆気に取られるw
「え。ごめんなさい。どーゆーコト?」
「だから、不動産ブローカーのトコロで、このロリンと再会したってワケさ。実は、高校の時に初めてヤッた女だった」
「82年に別れた後も私達はズッと思い続けていたの」
見つめ合うモレノとロリン。キス。見てらんないw
「だから、彼女に再会した瞬間から、こうしてズッと一緒にいルンだ。こんなに幸せだったコトは今までの人生の中でなかった」
「じゃビビアは結果として当たってたワケか。不動産に投資して全財産を失ったコトで、代わりにロリンが引き寄せられ、幸せになった?」
「…驚きだわ(貴女がアラ還だナンてw)」
フッと溜め息をつき、全身の力が抜けて逝くw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
豪邸を出てゲートへの長い道を歩く。
「どう思う?」
「うーんモレノが"宇宙に導かれる前"に殺した可能性も否定出来ないわ」
「違うょ。モレノとロリンさ。別れた2人(あの2人、マジでアラ還?)運命で結ばれたって話だょ!」
言下に否定するラギィ。
「何ソレ?単なる偶然でしょ?」
「ラギィは、運命やソウルメイトを信じないのか?」
「信じないわ」
左右に分かれ覆面パトカーに乗る。
「じゃユニコーンや妖精や二重の虹は?夜中になると人形が動き出すとか、怖いとか、昔は思わなかったのか?」
「悪いけどナイわ」
「当てよう。6才の時、ラギィはサンタを信じなくなったろ?人が光よりも早く移動出来ないコトに気がついてさ」
顔色1つ変えないラギィ。
「3才の時、家に煙突が無いコトに気がついたわ」
納得だ。車に乗る。発車。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋に戻る。捜査本部のホワイトボードの前。
「アルバは?」
「私のスカリー的"女の勘"では違う気がスルけど、一応アリバイは調べてみるわ」
「運命は信じないのに"女の勘"は信じるのか?なるほど、スカリーみたいだな」
スカリー?その名前に強烈違和感のラギィ。だって30年も前のTV番組ょ?エアリが駆け込んで来る。
「ビビアが逮捕に追い込んだ住人の件で発見があった。彼女の顧客ファイルには、ネットで色々調べた形跡があった。ウチの検視報告まで残ってたわ」
「ホラね。テリィたん、彼女は予知じゃなくて、リサーチをしてたの。8年前のパーティの時にテリィたんを鑑定した時も、バッチリとリサーチしてたのょ。ポーラ・カシアの夫がやってたビタミン剤だっけ?エナジードリンクの事業についても、当然のコトながら、バッチリ調べ上げてたワケょ」
「でもさ。モレノが破産してロリンと再会するコトもリサーチでワカルのかな?」
フンと鼻で笑うラギィ。
「アレは…単なる偶然ょ」←
「彼女だって霊能力だけで、どうにもならないコトはリサーチをスルだろう。僕だって"妄想力"には自信がアルけど、執筆の時には必ずリサーチをスルからな」
「クスクス」
忍び笑いが聞こえ、ヲタッキーズを振り返ると、メイド達はそれぞれ眉を釣り上げてオドけてみせる。
「みんな疑い深いな。全く警察向きだょ」
僕は両手を上げ、本部から出て逝く。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
夜のアキバ。神田リバーの黒い川面から見上げる摩天楼はまるで光の塔。その最上階に御屋敷はアル。
「偉大なる精霊達ょ教えて。チェトとは別れるべき?YES or NO…」
カウンターでは"コックリさん"の真っ最中。ミユリさんとスピアが蝋燭の火の下で手を取って瞑目w
「あぁミユリ姉様、壊れちゃってるわ。まぁ精霊達に聞かなくても、別れのタイミングは自分でわかっているの。さよならチェト」
薬指のダイヤに別れを告げるスピア。うーん見ようによっては、見せびらかしてるようにも見えるが…
「早まっちゃダメょスピア。愛は努力してつかむものでしょ?」
「姉様。愛は努力じゃない。情熱や相性やロマンスだと思うの」
「うーん彼女に会いたくて、胸がドキドキする現象だと思うな」
それぞれ勝手な持論を述べる。
「でも、ドキドキがなくなり別れて、その後、今になって、あの時早まり過ぎたカモって後悔したコトはナイ?テリィたんは、アチコチの元カノとヨリを戻しまくってるけど…」
「まくってません!でも、確かに編集者のジーナには、とっくにドキドキを失ってたけど、今は復活した…でも、ソレも元に戻ったょ。彼女は、今や復讐に萌える買い物マニアと言う新たな刺激に目覚めたようだ」
「ごめんなさい、ミユリ姉様。悪いんだけど、確実に終わってしまったの」
スピアよりミユリさんの方が悲しそうだw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋の捜査本部。ホワイトボードにセッセと情報を描き込むマリレ。僕は、両手にコーヒーカップ。
「マリレ。ビビアが捕まえた犯罪者は、全部調べ終わったのか?」
「うん。でも、大半は未だ蔵前橋にいるわ」
「ありがとう」
デスクのラギィにコーヒーを届ける。ソレを横目でチラ見して確認するマリレ。彼女は僕を振り返る。
「ソレに、この12人を全員捜査しても、犯人はいなさそうょ」
「何で?」
「担当した刑事達に話を聞いたトコロ、一様にビビアの名前も知らないと言うの」
ラギィがドヤ顔で割り込む。
「やっぱり彼女は、警察に協力している事実を誇張して宣伝してるのょ。自分の評判を上げるために」
「刑事達が、霊能者を頼ったコトを隠してる可能性もアル。だって、どの刑事だって捜査のプロ。素人に捜査を手伝ってもらったとは認めたくないだろ」
「テリィたん。ビビアには霊能力は無い。バッチを賭けても良いわ」
違うモノを賭けろ…と思ったらレトロな封筒を持ってエアリが割り込む。宛名が万世橋警察署らしい。
「みんな。議論はコレを見てからょ。ビビアから、今朝届いた。どうも死んだ日に送ったみたい」
「本人のレターヘッドだ!ラギィ、読んでくれ」
「読むわょ…"ご担当者様…"」
全員でラギィを取り囲む。傾聴!
「"私は、もうじき殺されるようです…"」
全員がのけぞる。思わズ悲鳴が漏れ、慌てて口を塞ぐが全員に睨まれて、拳を噛む。ラギィが続ける。
「"いつ何処で殺されるかは不明ですが、私が死ぬビジョンを見たのです。その中で、私は呼吸が出来ズ、黒い服の男と’7518’の数字が見え、遠くからはドンドンと何かを叩くような音が聞こえました。極めてボンヤリとした情報でごめんなさい。それ以外は、分かりません"だって」
「スゴい!やっぱり彼女は、自分の殺害を予知してたんだ!」
「待って。ソレか、犯人が手紙を偽装したかのどちらかね。指紋がついてるカモ。調べて」
ヲタッキーズもザワザワ。
「ホントにビビアが…」
「絶対にナイわ」
「だょね」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
検視局。ベケットは真っ赤なコート。勝負コート?
「死因は、出血と窒息だとわかった。死亡は、月曜の午後5〜7時の間ょ」
「げ。つまり、モレノ・アルバは犯人じゃナイってコトか。他は?」
「アイスピックには傷がナイ。つまり、新品ね」
助手?の鑑識がビニールに入ったアイスピックを示す。声の主のルイナはモニターをハッキング中だ。
「きっと、殺すために買ったのね。あと彼女は手にスマホを握ってた」
今度はビニールに入ったスマホを示す。
「で、スマホだけど、死ぬ前に助けを呼ぼうとかけようとしたのか、娘の番号が残ってたわ。171855…」
「待てょ?7185?順番は違うけど、例の手紙に描いてあった番号だ。言ってみろょ。コレも偶然だって」
首を振るラギィ。
「だから…偶然ょ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
捜査本部に戻る。エレベーターのドアが開き、僕達を吐き出す。ラギィは赤いコートを手に持ってる。
「な、説明がつかないだろ?」
「そんなコトはナイわ。全て簡単に説明出来る」
「じゃ説明してみて」
何とスタスタ歩きながらペラペラ説明スルw
「多分こうじゃない?ビビアが娘の電話番号をプッシュ中に犯人が来て殺された。犯人は、スマホを見て、その番号やニセの予言を手紙にしたため郵送」
指をパチリと鳴らし僕を振り向く。
「はい。完璧でしょ?」
「今どき電話番号は登録してるだろ。あり得ない」
「例の手紙、ルイナに調べてもらったけど空振り。指紋もDNAも出なかったわ」
エアリが合流スル。
「ソレから、あのビルから手紙が回収されたのは18時頃だって」
「ビビアが死んだ後、犯人が手紙を出す時間は十分にあったわね」
「うーん」
途端にドヤ顔になるラギィ。
「でもさ…犯人が何でソンな手間をかけルンだょ?」
「そりゃ警察の捜査を混乱させるタメょ。良く考えてょ。そもそも、あの手紙はサインもナイのょ」
「実は、娘によると、ビビアはサインしないコトもあったらしいわ。予言が外れたのに手紙が残って、ネットにUPされたりスルとマズいから」
エアリは、自分のコトみたいにエヘヘと苦笑い。
「でも、未だ本人が描いたかは不明のママょ」
「他の予言も当たったら?」
「ちょっと…来て。ビビアが解決した最初の事件ナンだけど」
マリレが割り込んで来る。
「え。あの妻が失踪して愛人のいる夫が犯人の?」
「YES。夫の名前はスティ・ダムズ。結局、奥さんの遺体は見つからズ、7年服役してる。2ヶ月前、仮釈放されたがGPSをつけてて保護観察官に行動は全て記録されてるわ」
「GPSによれば、月曜の午後、ビビアのトコロを訪れてるわ」
資料のファイルを開くベケット。
「カシア母娘のセッションは2時まで。アルバ・モレノが帰ったのが2時半。3時からはTJと会ってる」
「一方、スティは1時36分から2時48分までいて、機会を伺ってたか」
「1人になるまで待って、彼女の首を刺してソファの中に入れた…」
まさに、その時!
「嫌がらせだ!俺は何もしてない!」
制服警官2人に連行されて来る、金髪のスティ・ダムズ。大声で叫びながら、廊下を連行されて来る。
「あれ?!黒い服の男?」
さすがに、唖然とするラギィ。
「…偶然に決まってるわ」
「とにかく、黒ってコトで、奴が犯人カモしれない」
「そ、そーなの?」
同じく唖然としてるマリレの胸にファイルを叩きつけ、顔を見合わせる僕とラギィ。さぁ取り調べだ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「俺は殺してない!」
取調室で吠える黒い服のスティ。ラギィは腕組みをして立つ。僕は、スティの正面の席に座っている。
「貴方が最後にビビアを見た人なの。その足首のGPSが事件の日、1時間以上も彼女のオフィスにいたコトを示してルンだけど」
「あぁ。だが、ソレは誤解だ。先週コディ・ドネリという地上波のプロデューサーから連絡をもらった。こんな俺でも汚名を返上出来るって」
「汚名返上?汚名って返上出来るのか?」
僕の率直な言葉に身を乗り出すスティ。
「あのさ。俺と愛人が一緒にいるビジョンをビビアは見たと言ってたンだろ?」
「事実だろ?」
「確かにバーにはいたさ。でも、次にビビアはこうも言った。俺が妻を殺した、と。俺が犯人と言うのは、彼女の完全なデッチ上げさ。ただ、バーの件は当たってたから、みんなはソレを信じた。警察ってホントにバカ揃いだ。そもそもバーの件は、ビビアのウソだった」
どーゆーコト?
「ウソ?」
「俺が愛人と行ってたバーにビビアも通ってて、その時、彼女は俺を見たんだ。霊視ナンかではなく、ただ俺達を遠くから目撃しただけだ。直視だ。霊視でも何でもナイ」
「まぁ。何てコトでしょ」
手放しで喜ぶラギィ。だが、追求の手は緩めない。
「でもね、スティさん。彼女が詐欺師だと示せば、無実が証明されるとでも思ってるの?」
「あのな、おまわりさん。俺は、そもそも無実だ。あのインチキ霊媒師のせいで、妻殺しの汚名を着ただけだ。彼女のウソで、全国の視聴者は、俺が犯人だと信じた。その結果、彼女は本を出して有名になり、俺は服役した。コレは冤罪だ」
「で、TV局のドネリは、どんなテレビ出演の話をしてるの?」
捜査から外れ出したぞラギィ。でも、聞きたいな。
「実はな…"人生台無しでショー"と言うバラエティに出演しナイかと言うオファだった」
「え。あの番組、僕は大好きだ!出演者が自分を陥れた相手に怒りをぶつける番組だ。でも、大体は最後は涙で終わるんだけど」
「そうだ。俺とカメラマンでビビアのオフィスの前で待ってた。彼女が出て来たのでバンから飛び出し直言してやった。このペテン野郎!って、TV局の指示通り大げさにやってやったさ」
ほとんど視聴者代表の目線でラギィ。
「で、ビビアの反応は?!」
「俺の迫真の追求に、ビビってタクシーで逃げた。俺は、御褒美にコディに家まで送ってもらったぜ。後のコトは知らねぇな。彼女ともソレっきりさ」
「やったな、スティ!」
僕達は、立ち上がりガッチリと握手スル。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
捜査本部。ラギィはヲタッキーズにメモを渡す。
「GPSによると、殺害時刻には彼は帰宅している。証明できる目撃者を探して」
「え。GPSじゃダメなのか。スティは良い奴だ」
「テリィたんは黙って。あと前科のアル重要参考人とガッチリ握手しないで。あとGPSの追跡装置って余りアテにならないの。ソレにビビアは、娘に部屋で瞑想スルとか言ってたハズなのに、14時45分にタクシーで出かけてるし」
ホワイトボードの時系列表に記入するラギィ。
「ソレから、TVプロデューサーのドネリを呼んで。その時の画像を明日の朝1で見たいわ」
ホワイトボードを見上げるラギィ。
第3章 衝撃の死
御屋敷は超高層タワーの最上階にアル。眼下に広がるネオンの海は遠く関東平野の形に広がっている。
スピアが御帰宅。
「おかえり。僕は、今日は信じられない1日だったんだぜ」
「…私もょ」
「どうしたの?婚約指輪、まだつけてるの?」
すると…スピアは立ち尽くす。何?
「あぁテリィたん」
ソファにストンと座るスピア。僕は駆け寄る。
「どーした?」
「チェトが死んだわ」
「ええっ!」
僕の(ミユリさん特製w)カクテルを取り一気飲み。
「どうして?」
「さっき部屋に行ったら、御親族が集まってて…寝ている間に脳卒中を起こしてたの。そんなことってある?まさかと思った。まだ25才なのに…」
「スピア。残念だょ」
作家だが言葉が見つからない。SF作家の限界かw
「彼のお母様は、私の婚約指輪を見て、私達が未だ婚約してると思ったみたい。で、私の心配までしてくださった。それで1日中、お母様と来客の相手をしてたの。お母様は、私といるチェトは、いつも幸せそうだった、貴女は最高の恋人だった、って何度もおっしゃるの」
泣き出しそうになるスピア。息を呑む僕。
「なのに、私は彼を一瞬の恋人として別れようとしてた。お葬式では弔辞を頼まれたけど、私にそんな資格はナイ…とても無理ょ。あぁテリィたん。私はどーしたら良いの?」
とりあえずハグ。こんな時だが…巨乳←
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
捜査本部の大モニターでTVショーが始まる。
"いたぞ。よし、出て来た!逝け!"
モニター画面一杯に、バンの後部ドアから飛び出して逝くスティが映る。実に躍動感あふれる画像だ。
大声で叫ぶスティ。
"ビビア・マシャ!お前、俺を覚えてるか?警察に俺のビジョンを見たとかデタラメを話しやがって!俺の人生を台無しにしたでショー!"
キメ台詞だ。視聴してる全員がのけぞるw
「あら。例の映像?」
マグカップ片手にラギィが本部に入って来る。
「YES。迫力シーンの連続ょ。あとコディも来てるわ。テリィたんは?」
「今日は何か用事だって。で、どう?」
「概ねスティの言ってたとおりね」
画面ではスティとビビアが怒鳴り合い、やがて興奮したビビアが、手のひらでカメラのレンズを覆う。
次のシーンで、ビビアはタクシーに逃げ込む。
「おっと。タクシーのナンバーをゲット。部分的だけど。行き先がワカルかも…」
「消して!早く!」
「え?」
何と、ビビアの娘ピニィが本部に登場w
「ラギィ警部!」
「は、はい。どうもピニィ。どうしたの?」
「2人だけで話がしたい!どーしても!」
タッチの差で母親の画像には気づかない。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋のラウンジ。ドアを閉め鍵をかけるラギィ。
「どうしたの?何か思い出したの?」
「いいえ、そうじゃなくて…実は、この前は全てを正直に話したワケじゃナイ。隠してたコトがアル。実は、私は母の超能力を少しだけ受け継いでいて、タマに意味のある予知夢を見るの。で、昨夜はラギィ警部。貴女の夢を見たの」
「え。私の?ソ、ソレで?」
食いつくラギィ。しかし、ピニィは回りくどいw
「なぜだか、私は貴女に伝えるべきだと思ったの。ねぇ警部さん、良いですか?」
「(この人、ジラしてる?)モ、モチロンょ!決まってるじゃない!」
「警部さんの運命の人の名前は"ヘンリィ"。ただし、ソレが誰なのかは、私にもワカラナイ」
キョトンとするラギィ。
「ねぇ…ソンな知り合いはいないわ。まさか"コンバット"のヘンリー少尉のコトかしら」
「貴女、推しはいる?もし、推しがいるなら、その人が貴女の"ヘンリィ"ょ。今はいなくても、いつか必ず出逢います。その"ヘンリィ"は、貴女にとって、極めて重要な存在となり、恋に落ちたり、人生を共に歩んだりします」
「そ、そう?なるほど。へぇ良かったわ」
何となく混乱してるラギィw
「ありがとう、警部さん!」
突然ピニィに抱きつかれるw
「ど、どうもね。こちらこそょ」
すると、ソレで安心したのか、サッと身を離し、振り返るやスタスタとラウンジから出て逝くピニィ。
何なのょ?
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
一方、TVプロデューサーは、俗物過ぎるw
「テリィたん、ソレ絶対にウケるから。SF作家がリサーチのためにタフな美人刑事と組むリアリティショーだ。企画、立ち上げてょ。俺が仕切るから」
「でも、嫌がるだろーな。ラギィはバカ…」
「どうも、ご足労を。ドネリさん?」
ドアを開けファイル片手に入って来るラギィ。
「あら?テリィたんは、ココで何してるの?」
「いや、待て!僕は…バカに真面目さ、と発音しようとして…未だ事件の話は一切してナイから。な、ドネリ?彼は、僕の新刊が明日出るんだけど、広告を見てくれたンだ。"裸のギャバ子"の広告を褒めてくれたってワケさ。だろ?ドネリ?あはは」
「アレ、君の裸?」
頭を抱える僕←
「い・い・え!ところで、先日ビビアを"直撃"した後、貴方は何をしてました?」
「良い映像が撮れたので、ご褒美にスティを家まで送ってやった。15時半頃だったかな。その直後、ビビアから電話があったンだ」
「内容は?」
ペンを取り出し、メモするラギィ。
「さっきの映像をボツにすれば、もっと良い絵が撮れる情報をあげるってさ。まぁ、あの映像が出れば彼女の評判はガタ落ちだからな」
「どんな情報だった」
「殺人だ」
思わズ、身を乗り出す僕とラギィ。
「彼女は、ある殺人事件を追っていた。遺体は既に出てて、あとは犯人と対決。証拠を上げて激しく罪を追求するシーンがアルんだけど、ソレを撮らせてヤルと言ってきた。最後の確認をしたら、直ぐ絵が撮れるというので、レポーターとカメラクルーをスタンバイさせといて、とまで言われた」
「で、その対決はいつだったの?」
「直ぐだ。クルーや念のためにセキュリティまで用意してスタンバイしてた。2時間後にメールが来たが折電しても誰も出なかった…今にして思えば殺されてたからな」
溜め息をつき、目を瞑るラギィ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋のギャレー。マグ片手のラギィに問いかけ。
「なぁビビアが追ってた殺人犯って誰だろう?」
「うーん彼女はネタ探しも兼ねて、色々と未解決事件の相談に乗ってたみたい。でも、ヲタッキーズに調べてもらったけど、どの話も解決の糸口は見えてないわ」
「ラギィ!ビビアがタクシーで何処に行ったかがわかったわ!」
メイド2人が駆け込んで来る。
「タクシーは、東秋葉原112丁目と神田リバーサイドの角で下ろしたと言ってる。現場は1フロア、1世帯の高級マンション。住人は2Cのニークとトニィのジスタ夫妻」
「トニィ・ジスタ?」
「TJだ」
本部のホワイトボードに描き込むラギィ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
昼下がりの"秋葉原マンハッタン"を望むマンション。昔の歌番組に出て来そうな幅広の階段を登る。
「ビビアがトニィに会ったのは、重要なコトを話すためだ。殺人の事とか。ラギィは、コレも偶然だと逝うンだろ?」
「テリィたん、私が運命とか霊能者とかサンタを信じないのがそんなにダメなの?」
「ダメだ」←
コレまたヤタラ幅広の玄関だ。呼び鈴を鳴らす。
「だって"魔法"だって何だって、信じなきゃ永遠に目にするコトはないンだぜ?」
扉が開く…またまた金髪美人の登場だw
「何か御用?」
「万世橋警察署のラギィ警部です。コチラは国民的SF作家のテリィたん」
「まぁヤダ!大変!どうしよう?どうしよう…」
突然取り乱し、クルリと振り返るや部屋の中に逃げ込む。顔を見合わせて部屋に踏み込む僕とラギィ。
「もう動揺しちゃう!信じられないわ。まさかコンなコトになるナンて!」
「落ち着いて!霊能者のビビア・マシャさんが亡くなったコトですか?」
「昨日、新聞を読んで吐きそうになったわ」
頭が良いのか悪いのかワカラナイ女w
「なぜビビアンは月曜日にココに来たの?」
「おまわりさん。OK?コレはスゴく個人的でプライベートなコトなの。私の性生活が関係していて、必ず内密にスルと約束して」
「もちろんだ」
「出来ないわ」
僕とラギィは、完全シンクロだが異口異音。だが、トニィ・ジスタは、意に介さズ勝手に話し始める。
「じゃ話すわ。私は、今年の初めにイケナいセックスをしちゃったの。つまり、旦那のボスと不倫したワケね。でも、安心して。絶対に大丈夫。誰にもバレてナイから。ところが、どーしたコトかビビアがスマホして来て…」
「(バレてんじゃナイのw)彼女が?」
「突然電話があったの。会社のクリパー…Xmasパーティで出会ったコトも知っていたし"エンペラー"で3回ヤッたコトも知ってたわ」
"秋葉原エンペラー"は丘の上にあるラブホだ。
「またかょ。しかし、毎回スゴい調査力だな!」
「でしょ?超ビックリしちゃった」
「で、ビビアは殺人の話はしてないの?」
早くもドヤ顔のラギィ。気に入らない。
「まさか。夫のニークの性格とか色々聞かれたわ」
「性格?例えば、どんなコト?」
「彼が逆上するコトはないかとか、私が大丈夫かとか。私、絶対ビビアに浮気がバレてると思ったわ」
とか逝いながら、幸せそうなニークとトニィの結婚式の写真を手にスル。何処までが本気ナンだろう?
「しかし、彼女はどうやって君達の不倫を知ったのかな?なぁラギィ。コレは恐ろしくプライベートなコトだから、インターネットをいくら探してもワカラナイ内容だぜ?」
「ソレはそーだけど…」
「ソレは私の不倫相手が全部話したからょ」
平然と応えるトニィ。途端にドヤ顔になるラギィ。一方、さっきまでドヤ顔だった僕は奈落の底へw
「じゃあその人と話したいわ」
「ソレは無理。物理的に不可能。死んだから。だから、不倫は終わったの。心臓発作だったわ」
「その死んだ不倫相手がビビアに話したの?」
僕達は混乱スル。嫌な予感w
「そうょ。エミヲが予知夢に出たンですって」
「え。エミヲ?」
「YES。エミヲ・カシア」
またまた平然と答える。僕達は絶叫だw
「君の不倫相手は…エミヲ・カシアなのか?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋の検視局は地下にアル。死体を前にして、険しい顔をして腕を組むラギィ。
一方、モニター画像の中で抹茶シェイクを美味しそうにチュルチュル飲むルイナ。
飲み終えてから…
「エミヲの検視報告は、非常に興味深いわ」
「で、彼はヤハリ殺人だと思う?」
「検視官のメモによれば、死因は心不全だけど、脱毛症の前兆が見られ、爪が薄くなってる」
モッタイつけるルイナ。シェイクのおかわりか?
「ソレ、つまりどーゆーコト?」
「後で詳しく調べるけど、きっとセレンの過剰摂取だと思うわ」
「ええっ!って、だからセレンって何?」
シェイクを完全に飲み干した超天才の解説。
「セレンは、誰のカラダにもあるミネラル。カラダに良くて、ダイエットサプリやドリンク剤にも入ってるわ。でも、過剰摂取するとカラダには毒なの」
メガサイズのシェイクを手に席を外すルイナ。
「エミヲが作ってたビタミン剤にも入ってたのかな?つまりエミヲの工場にもアルってコト?」
「ビビアによると、ニックは、トニィとカシアの不倫に気がついてたらしいわ」
「彼は、エミヲの会社の従業員だ。セレンが手に入るし、エミヲにも近い」
やはり波長が合うのか推理が進むw
「エミヲが会社で死んだのは、そこでセレンを盛られたからだわ。確か、カシアの娘がそう言ってた」
「じゃニークは、妻と上司の不倫に気づいてエミヲを毒殺したのか」
「そして、犯行に気づいたビビアも殺した」
いつの間にか、ニッコリ微笑み合う僕とラギィ。
「つまり…そーゆーコト?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋の捜査本部。ホワイトボードの前でヲタッキーズも合流スル。
「ラギィ!ソレからテリィたんも…ニーク・ジスタの上司の主任に聞いた。ビビアが殺された日、ニークは17時に早退してる。だけど、家に着いたのは19時だって」
「じゃビビアを殺し、郵便の回収の前に手紙を出すコトは十分に可能だな。でも、ビビアとのつながりは?」
「でも、主任はトニィじゃなくて、ビビアに似た女性が会いに来たと言ってるのょね」
妄想がハレーションを起こすw
「ビビアは、ニークにオフィスに来るよう伝え、コディには撮影の準備をさせた。エミヲ殺害について自白する絵を撮る気だったんだ」
唖然とする僕。
「一方、ビビアは事件を解決して、有名セレブ霊能者としての地位を取り戻そうとしてた」
「実に大胆な計画ね」
「でも、ビビアは良くもまぁエミヲ殺害に気づいたモノね」
此の期に及びホンキで感心してるラギィw
「ラギィ。いったい何度逝えばワカルんだ?彼女は(霊能者)…」
「え。何?聞こえないわ」
「霊・能・者!」
僕の大声に天を仰ぐラギィ。
「単に勘が鋭いだけじゃナイの?」
「カシア母娘を鑑定した時のビビアのメモを見たけど、エミヲは死ぬ前から残業が増えたらしいンだけど、その横に"不倫?"と大きく描いてあったわ」
「テリィたんには悪いけど、こんなメモも見つけちゃったの」
"秋葉原エンペラー"と描かれた付箋を示すマリレ。ヲタッキーズ、僕は君達のPMCのCEOだぞw
「"エンペラー"は、エミヲのオフィスに最も近い時間貸しのホテルょ。ホテルのナイトマネージャに聞いたら、やっぱりビビアが来たんだって。ナイトマネージャの証言だと、2万円くれて、2人がホテルの常連かとか、かなーりしつこく聞いてきたそうょ」
「やーね」
「最低」
揺るぎないドヤ顔のラギィ。
「でもさ!うーん不倫の相手がトニィだと、どうやってわかったんだろう?この飛躍は不思議だ。勘だけでは説明が出来ないぞ!」
「あぁ"女の勘"を甘く見てる!テリィたん、この写真を見てピンと来ないの?男ってダメじゃん」
「ビビアがリサーチしてゲットした写真。2人が出逢った、会社のXmasパーティの時の写真ょ」
何気ないスナップに見えるが…確かに赤い勝負ドレス?のトニィは、お隣のエミヲと見つめ合ってるw
「ホーラ明らかに仲良しでしょ?お互いのカラダが呼び合ってるコトも明白!」
「(そ、そぉかな?しかし)どこでコレを?」
「エミヲのビタミン剤工場の食堂に掲示板があって、ソコに貼ってあった。その写真にビビアはピンと来た。そして、そこから全てが始まったのょ!」
終わったンだろ?死んだンだから!
「ビビアは、その写真を見てエミヲの不倫を疑ったと逝うのか?そして、彼の検視報告を手に入れ、不倫が原因で殺されたと確信、その仮説を証明するため、リサーチを開始した?」
「YES。コレは不倫ハンターの執念の物語、不倫のプロジェクトXなのょ」
「そして、女の勘に基づく地道な調査の結果、いろいろな証拠から犯人がニックだとわかる。ねぇテリィたん。コレは名推理ょ。"女の勘"をナメるな!」
僕は…完璧に打ちのめされる。
「でもさ!結局、自分が殺されてソファに詰め込まれるトコロまでは、わからなかったんだぜ!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋の取調室にニーク召喚w
「浅はかな女の勝手な思い込みだ!俺は、霊能者なんて殺してナイ!」
「でも、貴方はビビアと会った。ソレは認める?」
「トニィの件で2人だけで話したいとビビアに言われた。だから、オフィスまで行っただけだ」
心の中ではニークを応援してる僕。
「え。ソ、ソコで何があったの?」
「何もなかった。ドアを10分ほど叩き続けたが、誰も出ない。だから"女の悪ふざけ"だと思って帰った。女は浅はかだからな!」
「ふん。その話、ずいぶん(男に)都合の良い話ね」
ラギィはラギィで容赦なく攻め立てる。
「何と言われようと、俺は事実しか話さない」
「じゃエミヲについて話しましょ」
「社長か?何だ?」
急に用心深くなるニーク。ヒルむな、頑張れ←
「貴方の奥さんと不倫してた(ドキューン!どーだ驚いたでしょ)」
「…2人はバレてないと思ってたようだが、実は俺は前から知っていた」
「(ええっ知ってたの?)で、どーしたの?」
突っ込むラギィ。淡々と応えるニーク。
「何も」
「何も?マジ?ボスが奥さんを寝取ったのに、それを黙認?そんな話、私が信じると思う?女だと思って私のコト、バカにしてる?」
「おいおい。彼はバカにナンかしてないょ」
加勢したら、ラギィに全力で睨まれ沈黙スル僕。
「エーイ、もーどーでも良いや!確かに、不倫に気づき、エミヲ社長に、もう女房と会わないでくれと言いに行ったさ!」
「え。それで?(コレは僕ですw)」
「断られた。社長は…彼女を愛してた。心の底から」
自虐的に笑うニーク。ある意味、男らしい。
「奥さんのポーラに話すぞ!と脅したが、どうぞと言われた。ソレで決めた。バラすのはヤメようと。社長は30年寄り添ったポーラを捨てる覚悟だったが、ソレは自分で言うべきだ。そして、俺は…俺の方は、女房のトニィと別れるつもりは、ハナからなかった。カラダの相性が抜群だったし。だから、黙ってたんだ。そしたら…2週間後に社長が死んだ」
「つまり、貴方はエミヲの死には加担していない、そーゆーコト?」
「え。加担スルも何も…奴は心臓発作で死んだンだろ?違うのか?」
ラギィはグッと答えに詰まる。ココで、扉が開きエアリが入って来る。ホッと胸を撫で下ろすラギィ。
「ビビアの娘さんが来た。ラギィに急用だって」
一難去ってまた一難?
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
取調室を出た廊下で。
「(ピニィ、この場に限ってはとても助かったンだけど今度は何なの?私の前世が見えたとか?)どうしたの?」
「おまわりさん。とても大事な話がアルの!」
「また?先に言っておくけど、私の周りにはヘンリィなんて人はいないから」
先制パンチをカマすラギィ。僕は少し驚く。
「ヘンリィ?航海王か?」
「テリィたん、後で話すわ…あのね、ピニィ。私、今スゴーく大事なトコロで超忙しいの。OK?」
「おまわりさん!お願いだから聞いて。犯人がわかったの!」
ピニィはラギィの手首をつかむ。
第4章 最後の元カレ
万世橋のラウンジだけど…ナゼか取り調べ?はムーンライトセレナーダーだ。相手はピニィ・マシャ。
ミユリさん、何で変身してるの?
「ピニィさん。もう1度、話を整理させてね。つまり、貴方が見た予知夢の中では、フリーメイソンに謀殺されたと逝うワケね?」
「はい、ムーンライトセレナーダー。予知夢の中で私と母は、フリーメイソンの支部で夕食をしていたのです。母は、心配そうに支部の中を見回し、男を指差してハッキリと言ったのです。殺人事件を解決したいのなら、メイソンに話を聞きなさい。ソレで解決スルと」
「ありがとう、ピニィ。また予知夢を見たら、私の御屋敷に御帰宅して教えてね」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その夜の"潜り酒場"。関係者が集合。
「で、エアリ。状況は?」
「最初の事件で服役したスティは、今回はシロだったわ。アリバイ成立。ラギィ、ニーク・ジスタは結局どーしたの?」
「とりあえず、帰したわ。でも、事件が解決するまで秋葉原から出ないように釘を刺しておいた」
僕からも、極めて大事な補足を行う。
「ソレから、犯人はフリーメイソンだと言う有力な手がかりを得た」
「フリーメイソン?」
「無視してね」
カウンターの中からメイド長のミユリさん。大きくうなずくラギィ。ミユリさんは変身を解いている。
「ポーラとマリナのカシア母娘だけど、夫であり父であるエミヲ・カシアの不倫を知ったら、殺す動機にはなるカモ」
「ビビアのリサーチにも気がつけるし」
「ソレだ!犯人は、霊能者に鑑定してもらいながら犯行を重ねてたワケだね?」
素晴らしい僕のヒラメキ…全員が無視。
「テリィたん。ビビアが殺された当日、2人は17〜19時過ぎまで友達とレストランで食事をしてたのょ」
「もしかして…そのレストランは、ビビアのオフィスの近くかな?」
「YES。流行りのヌーベルB級グルメの"メソズ"だけど。なかなか予約の取れないお店」
ハッとして見つめ合う僕とミユリさん。
"事件を解決したいのならメイソンに話を聞きなさい。ソレで解決スル"だ。
B級グルメ大好きの僕は"メソズ"のポストカードを恭しくメイド長に献呈。
「しかし、何でミユリさんが捜査するコトになったンだ?さっきのピニィの"取り調べ"も変身してまで協力スル必要がアルのか?まぁミユリさんのセパレートタイプのメイド服は"最強眼福"だから、別に構わないけど」
「そのコトで、テリィ様。今までの私の敗北シーンを振り返ると、戦闘時に腹パンチでトドメを刺されるパターンが多くて…ムーンライトセレナーダーのコスチュームですが、出来れば装甲服、せめてボディスーツにしていただけませんか?」
「却下」
ミユリさんは深々と溜め息をつき、スマホを抜く。
「もしもし?南秋葉原条約機構のムーンライトセレナーダーです。オーナー様と話せますか?…メソズさん?もしかして、店名はメイソンズの短縮形?…そうですか。実は、お伺いしたいコトがありまして…」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
南秋葉原条約機構はアキバに開いた"リアルの裂け目"から降臨スル脅威に対抗するための防衛組織。
ミユリさん率いるスーパーヒロイン集団"ヲタッキーズ"はSATO傘下の民間軍事会社で僕がCEOだ。
万世橋の取調室だけど…またまた取り調べはムーンライトセレナーダー。相手はポーラ&マリナ母娘。
「お2人は、なぜビビアの鑑定を受けるコトにしたのですか?」
「ムーンライトセレナーダー。実は、今日はとても長い1日で、私達は疲れているの」
「コレは、警察の取り調べ(の代行)です。答えてください」
フンとソッポを向いた母の代わりに娘が応える。
「ムーンライトセレナーダー、私が誘いました。母は、お金がかかり過ぎるなどと言っていましたが、父が死んだ後、あまりに辛くて、私達母娘は、何にでもすがりたかったのです」
「彼女は、何でも知っていましたか?」
「えぇ。まるで父と話しているようでした」
ぱっと顔を輝かせて語り出すマリナ・カシア。
「ビビア・マシャが殺された夜、"メソズ"でお食事をされてましたね?」
「YES。母がB級グルメで、前から行ってみたいと言っていたので」
「ギャルソンに確認したトコロ、17時から19時半までおられたそうですね?料理は如何でした?ワインは飲みましたか?」
誘いに乗るマリナ。ポーラは黙っている。
「YES。でも、あのお店は開店直後で、実は未だ酒類の販売許可が下りてなかった。だから、持ち込みました」
「ワインは、先に買っていましたか?」
「いいえ。母が20分ほど席を外し買って来ました」
ポーラは黙っている。
「ソレは何時頃ですか?」
「5時15分頃だけど…ムーンライトセレナーダー、何なの?」
「マリナ。そのリカーショップに聞いたトコロ、その時間には、お母様はワインを買ってナイの。レシートによれば、ワインは、3時12分頃に買ってあったわ。アイスピックと一緒に」
何ゴトかを感じ取る娘。母をチラ見。
「どーゆーコトなの?」
「お母さんは、3時12分に買ったワインを何処かに隠し、5時15分に店を出ると、オフィスでビビアを殺した。そして、隠しておいたワインを、さも買って来たフリをして店に戻り、貴女やお友達との食事を再開したのさ」
「そんなコト、あるワケない!なぜ母が霊能者を殺すのょ?」
完全に取り乱して、僕に食ってかかる。
「殺人がバレるからだ。全ては、貴女のお父さんエミヲの殺害を隠すためだ」
「…ポーラさん。御主人から不倫していると直接打ち明けられたのですか?」
「…YES。本人から聞きました、ムーンライトセレナーダー。私の他に、好きな女が出来たと。彼女は若くて綺麗だった。私は、タダの退屈なオバさんですって。私は夫のビタミン剤工場からセレンを取り寄せて、毎朝、少しずつ主人のコーヒーに入れてきました」
茫然となるマリナ。取り乱して叫ぶ。
「ママ…ウソでしょ?!」
「マリナ。貴女に頼まれたから、ビビアの鑑定にも行ったわ。だけど、セッションしている内に、彼女は知ってはいけないコトまで知っているコトに気づいたの」
「そして、既に死んでるビビアが、冥界のエミヲに何かを伝えようとしていると思ったのか?」
さすがに僕も唖然だ。一方、母娘は泣き崩れる。
「あの晩、ビビアは冥界にいるエミヲの霊と交信スル予定だったからな」
「YES。そして、あの不倫男は、私に殺されたとバラす予定だった。あんな仕打ちを私にしたくせに。これ以上、あの不倫男の思い通りになんかさせない。そんなの許せなかった。だから、私がビビアを殺さないと!」
「お母さん、もう黙って。ムーンライトセレナーダー、弁護士を呼んでください!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
取調室から僕達が出ると、入れ違いに、手強そうな大弁護団が飛び込んで逝く。ラギィのお出迎えだ。
「あの弁護士軍団、自白を撤回させようと必死ね」
「え。取り消せるのか?」
「ムリ。全部話してしちゃったモノ」
ラギィは、何処かウキウキしている?
「でもさ、ラギィ。結局あの手紙を描いたのは誰ナンだろーな?」
「聞いてないわ。謎のママね。でも、もぉどーでも良くない」←
「そーでもナイぞ。最後のヒントを覚えてるか?何かを叩く音がしたと描いてあったょな?遠くからのドアを叩く音。ソレはきっと、部屋のドアを叩く音でニーク・ジストだ。しばらくドアを叩いてから、諦めて家に帰ったと言ってた。でも、その時には、もうビビアは死んでたんだぜ?」
ウキウキしてるラギィは反論まで投げ槍だ。
「きっとポーラが未だオフィスにいて、その音を聞いてたのょ。ソレを数字や黒い服の男の情報とかと一緒に手紙に描いただけ」
「でもさ。ホワイトボードにラギィが描いた時系列を見ると、ニークがドアを叩いたのは5時45分だ。その時間には、もうポーラは食事を再開してる。その時、確かにビビアは部屋にいた。ただし、遺体となってね」
「そっか…今度は私が自爆ね」
ケロッとしているラギィw
「そう逝えば、ピニィは"ヘンリィ"が何とかとか話してたね。アレは何?」
「うーんアレは意味不明なコトを言われただけ。何を言ってるのか、ワケがわからなかった。でも、言われた通りに事件の捜査をミユリ姉様にお願いしたら、あっという間に解決したってワケ。なぜ?」
「僕のリアルなネームが"ヘンリィ"だからさ」
え。ラギィの脳内が真っ白にw
「え。テリィが本名じゃなかったの?」
「どーやら、ラギィは僕の"face note"を熟読してくれてるよーだね。Blues Springsteenに因んでSF作家を目指す時に改名したんだけど、リアルでは"ヘンリィ"で、界隈では航海王とか王子と呼ばれてる。偶然だろ?後悔王じゃないぞ」
「そ、そーなの?」
ラギィは、しばし呆然と立ち尽くし、唇を噛んでから…やがて、ゆっくりと微笑が顔に広がって逝く。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その夜の"潜り酒場"。
御帰宅した僕とスピアは喪服だ。ミユリさんが御清め塩を撒く。巨乳トランジスタグラマーの喪服だ。
超眼福←
「良い御葬式だったね。ソレにスピアの弔辞が1番良かったと思う。手前味噌だけど」
「素敵な原稿をありがとう、テリィたん」
「どーいたしまして」
僕はお安い御用のジェスチャ。
「そうね。確かにチェトのホントの良さを上手く伝えてくれてた。彼の御母様も婚約指輪を返すコトに理解を示してくれた。でも…あぁあぁ」
ソファで頭を抱えるスピア。
「私、ヒドい女になった気分ょ」
「スピア。スピアは悪いコトはしてない。自分を責めちゃダメだ」
「テリィたん。ソレは優しいウソ」
仕方なく彼女が見落としてるコトを指摘。
「あのさ。先ず、スピアは彼のプロポーズを断ってはなかった。つまり、彼は希望を持ったまま逝ったのさ」
「でも、もうバレた。冥界で、きっと浅はかでズルい女にプロポーズしてしまった、と後悔してるわ。私は、チェトに愛される資格のナイ女…え。何?ヤメて。痛い」
「やろうょ」
セックスではありません。ミユリさんがカウンターの上に広げたのは"コックリさん"のセットだ。
「ミユリ姉様まで…ねぇソンな気分じゃないの」
「やろう。コレでチェトに聞いてみようょ」
「え。チェトは許してくれるかな?」
(喪服のw)スピアに手を添えて、目を閉じるや、力任せにいきなり"はい"に持って逝くw
「ホラ許してるって」
「ソレはテリィたんが動かしたから」
「そうさ。だってOK?きっとチェトは賢い人だ。スピアのそーゆーコトの全てを知って愛してた。何処にいようともね。きっと、いつも、いつまでも、同じ気持ちだ。スピアを愛してる」
しばらく唇を噛んでいたスピアは吐息を漏らす。
「ありがとう。ミユリ姉様。テリィたん…」
ソレさ、明らかに呼ぶ順が逆だからw
「ミユリ姉様。失敗ばかりの秋葉原の日々だけど、私、元カレ選びだけは失敗しなかったわ」
「でしょ?私のTOだから」
「そして、私の最後の元カレ」
おしまい
今回は、海外ドラマによく登場する"霊能者(霊媒師)"をテーマに、霊能者、その血を継ぐ娘、不倫中の父、母、娘、幸せな元用心棒とその美人な彼女、寝取られ夫と浮気妻SFなどが登場しました。
さらに、主人公の元カノの新恋人騒ぎなどもサイドストーリー的に描いてみました。
海外ドラマでよく舞台となるニューヨークの街並みを、すっかり円安脱却後に真価が問われる国際観光都市、秋葉原に当てはめて展開してみました。
秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。