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にじゅう。「それでは一年、まずはお手並み拝見です」(ナチカ)

 さて。ルス伯爵令嬢にお会いする日が決まったのですが、どうやらもう伯爵令嬢ではないそうです。

 ああかなりやらかしてますのね。まぁ第二王子殿下の婚約者様の侍女だなんて公言しちゃいましたし。そういうのって本当に決まっていても、きちんと発表されるまで公言してはいけないのですが、その辺り、何も考えてなかったのでしょうか。

 それに、嘘ですしね。決まってなかったのに決まったなんて暴走もいいところですから、そりゃあ伯爵位なんて与えておけないですよね。第二王子殿下は結構ご立腹らしいです、旦那様のお話では。


「こちら、アンディー。私の同僚だ。アンディー、ええと」


 そんなことを思い出していた私に、旦那様がやって来て、本日の元・ルス伯爵令嬢との話し合いに立ち会ってくださる同僚の方をご紹介してくださいました。

 ああ、妻と呼びかけようか迷ってますのね。


「よろしくお願いします、アンディー様。旦那様の妻のナチカと申します」


 紹介しにくいのだろう旦那様を慮って自己紹介させてもらいましたわ。


 なにしろ、旦那様は私の条件通り、親しくない婚約者の距離感で接しています。つまりまぁ、お互いの距離感を縮めていく最中ということですわ。結婚が先になってしまいましたけど、まぁ世の中の政略結婚夫婦にはよくあることです。


「奥方、よろしく頼む」


 旦那様から事前に、私と元・ルス伯爵令嬢だけでなく、旦那様ご自身と同僚の方が立ち会うことは聞いておりました。その方はアンディー様ということも聞いておりますので、きちんと情報を共有してくださったことは、良いことですね。


 ちなみに、親しくない婚約者の距離感ってどんな感じなのか、旦那様から尋ねられましたので、私も社交場で耳にした話ですが、と前置きをしましたが。


 幼馴染だの友人同士だのからの婚約という関係の方たちとは違い、先ずはお互いの家名で呼び合うことが多いそうです。そうですよね、いきなり親しく名前など呼べませんよね。お互いに納得しなくては名前を呼ぶなんて出来ませんわ。

 それからその家同士の都合も鑑みてですが、週に一回か二回会って交流をする婚約者同士もあれば、月に一回ほど会って交流をする婚約者同士もあるとか。でも結婚式当日まで、全く顔も合わせたことのない結婚もあるそうです。私たちの場合は、この最後のケースですよね。そういうご夫婦は、名前を呼ぶかどうか話し合うこともそうですけど、手探りの間柄だそう。

 例えば、毎日食事を共にする夫婦もあれば、仕事を一緒に行う夫婦もあれば、週末の一日を共に過ごすというご夫婦もあるとか。


 ということは、それぞれなんだね。と旦那様が仰るので確かに、と頷けば、旦那様が提案したのは。


「私は仕事が忙しくて王城でもらいうけた側近用のへやで寝泊まりすることもある。だから毎日共に食事は出来ない。だから、私が帰れない日は必ず連絡するから、連絡が無い日には夕食を共に摂ろう。あと、休日は君に時間を使いたいから、その日は何がしたい、と教えて欲しい」


 というものでした。

 休日は私に時間を使いたいと望んでくれたのは、良いことだと思いましょう。ということで、私たちなりの距離感で少しずつ交流を深め始め、先日、結婚一周年を迎えました。まぁ一年は無効のようなものなので、改めて新婚生活を送り始めたようなものですが。


 そして、今日です。

 さて、元ルス伯爵令嬢様は、何を考えていらっしゃるのでしょうね。


「はじめまして、私はサンドリン子爵の妻ですわ」


 時間通りにやって来たその女性に、私が挨拶をすると、チラリと視線だけ向けられてフンとそっぽを向かれました。あら、ご挨拶もありませんのね。あなた、今はもう身分は私より下なんですけど。

 あ、爵位名が家名なのは、領地が無いので分かり易く家名にしてある、とドムから教えてもらいました。随分と前にそのような形になっていて、当時の国王陛下もご承知のことなのだそうです。大体爵位名って領地名から来てますものね。サンドリン侯爵家も、侯爵位の名前は領地名です。さておき。


「貴族教育を受けてませんか。それとも平民ですから貴族教育をお忘れになって?」


 あからさまな嫌味を言ってみたら、睨みつけてきましたね。あら怖い。でも平民であることは決まっていることです。直ぐにではなく、時期を見計らって、ですけれど。その辺りのことはきちんとご理解していらっしゃるのね、良かったです。


「なんなのよ、たかが子爵夫人ごときが、わたくしに馴れ馴れしく話しかけてこないで」


 あ、理解してなかったようです。えーと。他国に行くほど語学が出来る才女との前評判ですが、その肩書きは捨てた方が良さそうですね。

 取り敢えず、プライドが高くて立場をきちんと理解出来ないお方だということは分かりました。ついでに煽り耐性も無いお方のようなので、ちょっと刺激を与えれば、口が滑らかになりそうですね。


 という結果。


「はぁ? わたくしは他国の語学も完璧な才女よっ。そのわたくしに似合う男は、この国の王族ではないと他の方では釣り合いませんわ。でも、いきなり王族、王太子殿下や第二王子殿下に取り入ろうとしても、隙がないですからね。先ずはどちらかの側近の妻辺りに収まって、それから側妃を狙えばよいの。王太子妃は既に決まっているし、第二王子殿下の婚約も簡単に解消出来ないから、側妃として寵愛を受けてあげるわ。正妃は諦めてあげるから、側妃として寵愛を得ても正妃は文句を言えないでしょう」


 というものでした。

 わぁ。賢いのではなくて、ただの傲慢なお花畑さんでした。

 旦那様とアンディー様が物凄く迷惑そうな顔をしていますね。でも、あっさりと思惑を話してくれたので私も役に立てたでしょうかね。


 それから程なく。

 王命……本当は王命を出す予定だったそうで、あくまでも内々の打診のみだったそうですが……による旦那様の第二夫人の話は消えました。


「旦那様、それでは一年。まずはお手並み拝見です」


 改めて、旦那様と私の結婚生活のやり直しが始まります。今度は、きちんと私を妻として立ててくださいませね、旦那様。

お読みいただきまして、ありがとうございました。


本編は本日で終了。明日はオマケ話として旦那様視点でやり直しの二人の結婚生活を一話ですがお送りします。

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