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じゅうはち。「じゃあ言い訳を聞いてあげます」(ナチカ)

 一緒に食事を摂るのもこれが初めて。

 それはいいのだけれど、なんだかやたらと視線を感じる。そして食べることに集中しているだけなのに、天使が食べている。天使がカトラリーを持っている。天使が……とブツブツ聞こえます。

 だから、人外になったつもりは無いのよ私。

 聞こえない。聞こえない。私は何も聞こえていないの。ポテトの冷製スープとクロワッサン。スクランブルエッグに冷製サラダ。とても美味しい。今日もドカラのご飯は美味しいわ。視線がうるさい、なんて表現を本で読んだことがあるけれど、コレがそうなのね、なんて実感は要らなかったわ。


「ごちそうさま。旦那様、じゃあ言い訳を聞いてあげます」


 視線はうるさいし、天使天使、とずっと聞いていて居た堪れなくなった私は、朝食を終えると同時に旦那様に宣言する。

 チラリと見れば、あれほどブツブツ呟いていたのに綺麗に朝食は食べ終えていて、ちょっと旦那様って変わった方なのかしら、と思ってしまったことは、置いといて。


「天使だ……。私の話を聞いてくれるなんて天使だ」


 とか、またブツブツ言い出した。


「私、人外になったつもりはありません。きちんと話をしてくれないなら許さないままで良い、ということでしょうか」


 だから私を人外にしないで、と否定しながら話をしないのならこれでお仕舞い、とばかりに言えば、旦那様はハッとした顔を見せて頷く。


 朝食の片付けをサッと終わらせたドムとクロエに促されたのは、ずっと手入れをしてきた庭でした。ドムが言うには、天気がいい。つまり太陽の光がマイナスの気持ちも吹き飛ばしてくれますよ、とのことで。


 まぁ確かに鬱鬱とした気持ちで話を聞くよりも、精神面の安定を図るのは良いことかもしれない、と改めて旦那様に向き合ってみた。


 旦那様も神妙な顔をして、私たちの出会いから話し始める。すみません、旦那様。私覚えてません。と、否定したら愕然とした顔をしていて、涙ぐんでる。泣かないで話を進めてください。

 兎に角、旦那様視点でその出会いとやらから結婚に至るまで。そして結婚してから今日までのことを聞かせてもらった。


「言い訳は聞き終わりましたけど。お仕事が忙しかったことは分かりました。特に第二王子殿下の婚約者様が予定をだいぶ前倒しにして、すでにご入国された辺りは、本当にご苦労なされたのでしょうね。お疲れ様です。でもそれはそれとして。前半は正直なところ、気持ち悪いとしか言えないです」


「き、気持ち悪い」


「ええ。だって旦那様にとっては良い出会いだったみたいですが、私にとって覚えてないものですのに、後生大事に抱えるような思い出として美化されていて。そこから交流があったのならまだしも、交流ゼロでその思考って気持ち悪いとしか。引きます。ドン引きです」


 私の辛辣な発言に、旦那様が固まってます。いや、だって此方は覚えてない思い出を大切にしていましたって言われても。だからなに? というか、私は全く記憶にありません、としか言えないわ。


「とはいえ、前半は全くの身勝手な思い込みで気持ち悪い最低なクズ男だ、と思いましたけど。手紙の返事を書けなかった理由すら気持ち悪いものでしたけど。後半というか、前王弟殿下にお会いして色々と視野を広められた話は、納得出来ます。そうですね、ギリギリ及第点でしょうか。前王弟殿下の元で色々と考えられた結果、言い訳をツラツラ述べることなく、ただただ謝るだけだったところは、高評価です」


 バッサリとダメ出しをすると、旦那様はその場にて土下座しようとする。

 止めてください。ここ庭です。お召し物が汚れてしまいます。と宥めて土下座は回避しましたけど。

 仕事の出来る男ってなんでもスマートにこなすのではないのですか。旦那様ってもしや、ポンコツとかって言いませんか?

お読みいただきまして、ありがとうございました。

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