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「第4回下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ大賞」参加作品シリーズ

桃色のランドセル

掲載日:2022/12/09


「まあ聡史君、しばらく見ない間に大きくなったわね」


「しばらくっておばさん……三日前に会ったばかりじゃないですか」


「ふふっ、男子三日会わざればっていうじゃない。どうぞ上がって頂戴。綾香も喜ぶから」


「お邪魔します」




「綾香、入るよ」


 机の上に置かれた桃色のランドセル。 


 ぬいぐるみも全て桃色。埃ひとつ無い見慣れた部屋。


 何も変っていない。あの日からずっと。



 五年前の今日……登校中の小学生の列に軽自動車が突っ込んだ。


 ブレーキとアクセルを踏み間違えたらしい。


 

『聡史、危ない!!』


 それが綾香の最後の言葉。


 俺は突き飛ばされてかすり傷で済んだけれど、綾香は……。



「綾香……俺、四月から高校生になるんだぜ? 嘘みたいだろ」


 

 おじさんの転勤が決まって、この部屋に来れるのは今日が最後。


 この部屋に来ると綾香と一緒に居るような気がしていたから、本当の意味でお別れだ。



「これ……俺があげたヤツじゃん」


 ランドセルに付いていたキーホルダーを手に取ると、ひどい眩暈(めまい)に襲われて……





「あれ……ここは一体……」


 いつの間にか綾香の家の前に居た。


 この違和感はなんだ? 何かがおかしい。


 郵便受けからはみ出した新聞の記事。


「……嘘だろ。五年前って」



『行ってきまーす!!』


 間違いない。この声、もう二度と聞けないと思っていた。


 揺れる桃色のランドセル。


 

 これは夢なのか? 夢でも良い……最後にひと目会えただけで俺は……。



「……違う、綾香を止めないと……」 

 

 夢だろうが関係ない。



『綾香!!』


『おはよう聡史』


 あれは……五年前の俺?


 まずい……あの曲がり角で俺たちは……


「君たち、待ってくれ!!」 


 全力で叫ぶ、頼む、気付いてくれ。



『なんですか?』


 足を止める綾香とちっさい俺。


『綾香、早く行こうぜ。あのお兄さんなんか変だし』


 セルフダメージだからノーカン。気にするな俺。


「これあげるよ。好きだろ、パチモン?」


 当時流行っていたパチモンの激レアカード。お守り代わりに身に付けていて良かった。


 後ろを通り過ぎる軽自動車。その直後、聞こえる激突音。



 良かった……本当に……うっ!?


 酷い頭痛と眩暈。



「聡史!! いつまで寝ているの? 今日綾香ちゃんち引越しでしょ……って、何で泣いてるのよ!?」


「……何でもないよ母さん。ただちょっと……夢をみたんだ」







「聡史、今日からよろしくね!!」


「……綾……香?」


「は? 何泣いてんの? 怖いんだけど!?」


 綾香は転勤に付いて行かず、俺の家から高校に通うってさ。マジかよ。 

  

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― 新着の感想 ―
[一言]  本当にこんな風に過去が変えられたらいいなあって思いました。  きっと聡史くん、これから綾香ちゃんの事めちゃくちゃ大事にするんでしょうね。  短いのに重厚感のある作品でした。  感動の名作、…
[良い点] 神様が素敵な事をしてくれたのだと思います [一言] 読ませて頂き有難うございました。
[良い点] なんとも素敵な終わり方。さすがですね〜(*´꒳`*)
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