宝の山の匠ドワーフ⑩ アンジュの想いと選択
アンジュは泣きながら氷の塊となった母の元へと走っていき、背負っていた鉄槌を手に持ち空高く投げ、それをジャンプしながら手に持ち母の氷に向けて思い切り投げ込む。
「えーーーーーーーー」とアンジュ以外の者たちが声をそろえる。
アンジュは私たちの驚きに反応もせずに何度も母を砕こうと試みているが傷一つもつかずにただ叩く音だけが鳴り響く。
「娘よ、私がやる。少し離れていろ」
「わかりました、サニー様」とアンジュは私の所まで戻ってくる。
「サニー様、申し上げにくいのですが現在使用中の魔法を解かれますと彼らが危険になるかと」
「わかっている。だからこのままを保つが、これは攻撃に耐えられるかがなんとも言えなくてな」
「ああ、それは、吾輩に彼らを守れということですね」
「うむ」
「ちなみにどのくらいの火力でいかれますか?」
「最初は軽めに、様子見で全力を出す可能性が無きにしも非ずだ」
「また曖昧な答えですね」
「契約をしている以上、死なれては困るからな。それにアレが必要であれば出来ることをやるしかないだろう」
「承知致しました」
シャブランはそういうとウインクをしながら口元で人差し指を立て内緒だよというポーズをみせる。シャブランがクルリと一回転すると白い煙が竜巻のようにあがり、そこから現れたのは人の姿に角のような固そうな耳とドラゴンのような尻尾をつけたシャブランであった。
「サニー様、吾輩の方は準備が出来ました」
「うむ。ではいくぞ」
シャブランが指をパチンと鳴らすと目の前にシャボン玉のようなシールドが現れる。触れると割れてしまいそうな見た目をしているが、サニー様が魔法を放つことで舞う土埃も爆風も視界に入るのに振動や匂いも何一つ感じない。まるでミュートにしたテレビで映像をみているように。
「ノア様、安心してください。ここは安全です。鉄壁紳士猫と呼ばれる吾輩の力があればサニー様の力でさえ及びません」
「今更聞くのもあれだけど、周りの氷を壊すのではなくアンジュのお母さんを破壊しようとしている?」
「うむ? そうだが? アレだけ必要であれば、他は必要なかろう」とサニー様が瞬間移動でシールド内に入ってくる。
「あの者は非常に危険な人物なので非人道的かもしれませんが破壊という選択肢が最も良い方法かなと吾輩も思います」
「アンジュはそれでいいの?」
「はい、それが良い方法であればそれでかまいません」
「もし他にも方法があったとしたら」
「母を元に戻せるのですか? 私が知っている優しい母が帰ってくるんですか?」
その言葉が返ってくるのをわかっているのに無責任なことをいってしまった。きっとそれは私には出来ない。けどアンジュの母を戻す方法はないのだろうか。もしかしたらラルムなら何か方法を考えていないだろうか。
「あるよ」と声が聞こえてくる。
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