宝の山の匠ドワーフ⑥ アンジュの過去
アンジュの母、トレフルは呪いがかかった宝石とは知らずに加工を続けた。呪いは目に見えなかったが、魔力は見える者には見えたのだ。魔力がある宝石は魔力増幅や他様々な効果をもたらしていたのでドワーフ族以外からも需要があった。しかもトレフルの細工、加工技術は人気が高く高値で取引が行われていた。そのため多くの呪いがかかった宝石が世に出回ってしまったのだ。
呪いは目に見えなかったがトレフルには少しずつ変化が起きていた。睡眠も食事も忘れ仕事をし続けるようになっていった。最初のうちは話しかけると反応もあったが、日に日に誰の声も聞かなくなっていった。睡眠を取らないため真っ白だった肌も黄色くなっていき、顔つきも別人のようになっていった。食事はその場で見つけた動物や昆虫を食べるようになっていた。
アンジュが話しかけても無視をし、アンジュが手を止めようとするとアンジュを虫のように振り払う。ただ宝石を加工し続ける機械人形のようになっていった。
そんなある時、トレフルの作った装飾品を身に着けた者たちが焼死体で発見されたり、炎で包まれるという事件が多発していく。トレフルが作り出したものは呪いがかかっていると噂になり始めた頃、ユミルエルデでも事件が起きる。
そう、時が経ち過ぎていた。
オーディンの魔術は強力だがユミルの呪いを打ち消すことは出来なかったのだ。
ユミルエルデでもトレフルが作り出した装飾品を身に着けた者たちが突然燃えはじめるということが起きていた。ユミルの『宝石は盗んだ者を』という条件からある程度使用した者に呪いが発動するように変化していた。オーディンのかけた魔術は時が経ち過ぎて効力がほぼ落ちていたのだ。そのためトレフル自身に呪いがすぐに作用することはなかったのだが、ユミルの宝石を四六時中扱っていたため呪いがゆっくりとかかっていた。
ドワーフたちは発掘を中止し、立ち入り禁止区域にしたのだがトレフルは夜な夜なその場に行っては発掘を繰り返していた。発掘現場を埋めようとするとトレフルは炎のモンスターの姿になり、仲間のドワーフたちを次々に燃やしていった。ドワーフ族では手が付けられなくなり、ドラゴン族の助けによりトレフルは凍結されたのだった。
トレフルが魔女と呼ばれた理由はこの世界にいる四大魔女の一人である『フラム・サラマンダー』の全身に炎を纏う姿と似ていることから魔女と名が付いたのだ。
当時まだ子供だったアンジュは自分の両親に起きたことが理解できなかった。表向きはアンジュの両親を責める者はいなかったが、裏では魔女、魔女の一族と呼び忌み嫌っていた。子供のアンジュにも矛先が向き始め、アンジュの祖父母はユミルエルデから離れた場所で暮らすことにした。
アンジュによってユミルエルデは故郷ではあるが辛い過去を思い出してしまう場所でもあったのだ。
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