宝の山の匠ドワーフ⑤ 原初の巨人ユミルとその宝
アンジュの声と体が震え、顔は下を向き両手はギュッと握られている。緊張しているというより怯えている様子にみえる。
「おかえり。アンジュよ、良く帰った」
グランは優しい声と笑顔でアンジュをみている。アンジュは顔をあげ涙をポロポロと流す。グランは大粒の涙を流しながらアンジュの元へ向かい、力強く抱きしめる。
私には亡くなっていたと思い込んでいた父が数年ぶりに娘と再会した。そんな光景にみえた。
* * *
アンジュは『ユミルエルデ』で生まれ育った。父は発掘、母は宝石加工の仕事をし、三人で暮らしていた。アンジュの父は五感が鋭く貴重な発掘個所を見つけるのが上手く、母は手先が器用で精巧な巧緻技術も魔力のある宝石の加工も得意であった。ある時、アンジュの父は黒曜石が広がる場所を発見した。そこには魔力がかかった宝石も多く発掘された。
ユミルエルデで魔力のある宝石を加工できる者は数えるしかいなかった。アンジュの母はその中でも一番の加工技術をもっていたため、一人で加工を任された。これが悲劇の始まりであった――。
火山岩の一種でマグマの一部が急速に冷え固まってできたのが黒曜石。なぜその黒曜石の中に多くの魔力のある宝石があったのか。当時のドワーフたちはその状況を知る由もなかった。
* * *
遥か昔、ドワーフ族が生まれる前の話。
巨人族は今のドワーフの国、ユミルエルデとヴァンピールの国、ラミアバオホの地に住んでいた。ラミアバオホを居住区、ユミルエルデを宝物庫としていた。原初の巨人であるユミルは光り輝く宝石が好きで集めていたため、ユミルエルデには宝石が多く眠っているのだ。
巨人たちは乱暴狼藉だったが巨人の王であるユミルは巨人たちの行動を止めようとはしなかった。そのためユミルの子供たちであるオーディン、ヴィリ、ヴェーの三神は巨人の王であるユミルを倒し、ユミルの流れた血により巨人たちを滅ぼした。
ユミルが大切にしていた宝石の一部には他の者に盗まれないようにと呪いがかけられていた。その呪いは強力なもので他者が触れると自我を失い最後には燃え盛るというものであった。ユミルが死んでしまったため呪いは解くことが出来なかったが、魔術に長けていたオーディンが魔術をかけることにより魔力のある宝石へと変化させ、そして誰かの手に渡らないようにとマグマの中に落とした。
そして時が経ち、天変地異が起きたことによりマグマが冷やされ黒曜石となったのだ。それをドワーフたちが発見してしまうこととなる。
お読みいただきありがとうございました!
次回もよろしくお願い致します!




