唄の魔法編⑨ ~スライム、ケット・シーとの契約~
「にゅーんにゅーん!」
「にゅーんにゅーん♪」
「にゅーんにゅーん☆」
「青色の子はメール、黄色の子はルミエール、緑色の子はフォレ」
「じゃーじゃー! ざぶーん!」
「キラキラ! ぴかーん!」
「もりもり! のびー!」
「あれ? これは言葉がわかるようになったのか?」
「僕のスライムは言葉を覚えさせたから人の言葉を話すけど、野生のモンスターは人と話さないからこんなもんだよ」
「そういうものなのか」
「そ、気長に見守ってあげてよ」
「わかった」
「次は吾輩の番ですね」
声がする方を向くと、白い猫が腕を組み仁王立ちしていた。まるで長靴を履いた猫のように長靴と袋を持って穏やかな表情で笑っている。
「勿論、献上品もございます」と長靴を履いた猫は袋からふわふわした物を取り出し「こちらはラビットファーのベストになります」と私に差し出してくるが私はどう対応すればいいのかわからずにそのまま動かずにいると「これは気に入りませんか。それではこちらではいかがでしょう?」と今度は小さく透明な石を取り出す。
「これはムーンストーンです。キレイでしょう? といっても近くで見ないとわからないと思うので手に取って石の中心をご覧ください」と長靴を履いた猫は私の手の上に石を乗せる。石をすぐに返すのも悪いと思い石をじっとみると、月で餅つきをしているウサギのようなシルエットがみえてくる。
「月のウサギ?」
「さすがですね、よくお分かりで。それはとても珍しいムーンストーンです。しかも理解できるものが限られている。マスターはこれを持つべき人物だとお見受けしました。なのでこちらを献上させていただきます。そしてついでといいますか、吾輩に新しい名前をいただけると嬉しいのですが」
長靴を履いた猫が丁寧にお辞儀をする。私も日本人の癖のようなものでお辞儀を返していると、ラルムが私が名前を与えないようにと目の前に立ちふさがる。
「ねえ、見た感じ君はケット・シーだよね?」
「はい、吾輩はケット・シーです」
「ということはモンスターではないよね。どちらかというとミネルヴァ様に近い存在のはず。何故ここに? それにノアにしかわからない言葉を話しているようだし、怪しいね」
「ミネルヴァ様に近い存在だなんて失礼極まりない。吾輩はモンスター側の存在です。吾輩は猫としては生きられず、人としても生きられない。だから人の仲間を探して旅をしていたのです。人といれば人に近い扱いを受けられるのでね。それはアナタもおわかりでしょう? マスターにしかわからない言葉はその石をもらった者からの受け売りでしてね。なんにも怪しい所なんかありませんよ」
長靴を履いた猫は持っていた袋を逆さまにして入っていた中身を出し、履いていた長靴を脱ぎ逆さまに置き、真っすぐに立つ。
「ラルム、そこまでしなくても」
「服装も変だったけど、猫というわりには耳の位置が真横過ぎないか?」
「ラルムが個性を否定するのか」
「そういうわけじゃないけど、なにか変な感じがするから……」
「ケット・シーさん、事情はわかりました。とりあえず靴を履いて荷物もしまってください」
「ラルム様のお許しがまだ……」
「シャブラン! この名前はどうだろうか」
「ありがどうございます! 吾輩は今日からシャブランです!」
「ノア!」
私はその時。
名前をつけるということ、人の話を真に受けてしまうことの危うさに気づくことはなかったーー。
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