レッドドラゴン
私の目の前にいるラルムはいつものラルムの優しい笑顔をしている。見た目は別人だけどラルムだってわかる。
「君、前にどこかで会ったことがある?」
「そんな気がしますね」
今のラルムの状態がわからないのでなんて答えるのが正しいのかわからない。少なくとも私のことを覚えていない気がする? 記憶が一時的に消えているのか削除されているのかどちらなのだろう。
「そうか、事情は理解したよ。今、僕がやることがわかった。ありがとう、お嬢さん。そして君のことを忘れていてごめんね」
ラルムはニコッと微笑むとボウ・アンド・スクレープをする。顔をあげた瞬間に目を光らせ、人の姿のまま竜の翼を広げる。会場全体に大きな風が吹き荒れる。部屋の天井や壁に細かいヒビが入り、パリンと音を立てて剥がれ落ちてくる。この空間は幻影で一度は行ったら出ることが不可能な魔法がかけられていたのだ。
「ははは。こんな狭い場所で暴れないでよぉ」
空間に亀裂が入りワープゲートが開く。そこから真っ赤な髪をツインテールにした子供のような容姿の女の子が現れる。
「そういわれましても、僕にもこの状況が把握できなくて。暴れるのが手っ取り早い解決法かなと思いましてね」
「そうだね。とりあえず話せる状態になってくれたら話をすすめるよぉ、どぉ?」
ラルムは翼を戻し「クライネ・ファンタジー」と唱えると、目を閉じるほどの眩しい光に包まれる。目を開けると私の知っているライブ会場が広がっていた。え? どういうこと?
「ライブ会場? 君の一番好きな場所はそこなんだね。今使った魔法はね、自分の好きな場所がみえるというものなんだ。気に入ってくれた?」
「はぁ? なんだよ、このお菓子の国みたいな場所は? やめろぉ!」
赤髪の少女は小躍りしたかと思うと、両手で顔を隠す。
「何がみえているの?」
「そこら中に甘いお菓子がたくさんあって、なんかお菓子が踊っていたり話しかけてくるよぉ」
「なんだか楽しそうだね」
「うわぁーん。ダイエット中なのにぃー」
「それで話をすすめてくれるんだよね?」
「この空間をどうにかしてよぉ。落ち着かないよぉ」
「でも条件は僕が暴れないことでしょ?」
「うぅ。クソぉ」
「とりあえず、下を見ないで僕を見て話してみたら」
「ふぅ。ちなみにここがどこかわかるぅ?」
「そこからわからないんだけど」
「ここはねぇ、海の墓場だよぉ」
「そうか。となると僕が何かをしたってことかな?」
「そう。ラルムはデュオス様を怒らせたんだよねぇ」
「プラチナドラゴンの長をね。覚えていないので聞くけど、何をしたのかな?」
「デュオス様が封印していた人魚の姉妹たちを解放しちゃったんだよねぇ」
「それは都合が悪かったということなのか」
「そういうことだねぇ。まぁ、あたしは詳しくは知らないけどねぇ」
「詳しく知らないのにデュオスの指示に従っているのか?」
「あたしはレッドドラゴン族だからねぇ、プラチナドラゴン族という自分より強いものに従うのは普通じゃないかなぁ。ラルムはすごいよね、ブルードラゴン族は滅びたいってことなのかなぁ」
「僕にも色々と事情があってね。ライム!」
「はいでちゅ!」
ライムがラルムの胸にくっつくとラルムの姿がいつものピンク髪の姿に変化していく。
お読みいただきありがとうございました!
次回もよろしくお願い致します!




