Diamond lily
黒い雲に覆われ激しい雨が降り強風が吹き荒れる。至る所に彫刻や金の装飾があり王族や貴族の所有物だったと思われる大型の船が小さな島の中心に鎮座しており、それ以外のものは一切ない。それが海の墓場という場所。
ここへはソレイユの姉のフードルに転移させてもらった。フードルは魔法使いでもあり、研究者でもあるそうだ。この世界でも一握りの者しか使えない転移魔法を使うことが出来るため、私たちはフードルと一緒にここにやって来た。
フードルの母は名のある魔法使いでその血を濃く受け継ぎ魔法使いになったそうだ。そもそもフードルが人魚とのハーフで海での生活が厳しく、人魚以外の者が海でも生活できるような魔法を創ったのがフードル母だそうだ。私がラルムからもらったブレスレットもフードル母が創ったアイテムということだ。
フードルはバリアが張られた部屋のような空間をつくりだし、私たちを守ってくれている。
「ライム、ラルムの居場所はわかる?」
「はいでちゅ。にゅーんにゅん」
「前から気になっていたんだけど、にゅーんにゅんってスライムの鳴き声みたいな感じ?」
「そうでちゅね。そんな感じでちゅ。あ、返事が聞こえたでちゅ。あの船の中にいるみたいでちゅ」
「まあ、それ以外に場所はありませんものね。範囲を広くしますのでラルム様を見つけてきてください。私は何があるかわかりませんので船の外で待機しておりますわ。ソレイユ、あとはお願いいたしますね」
フードルの持っている杖を横に大きく振るとバリアの範囲が広がっていく。
船は外からみると錆びて汚れ、ここに置かれて長い年月が経っている様子だったが、中に入ると音楽が流れ明かりがついている。壊れたとこともなく、今も生活が出来てしまいそうな空間になっていた。
「なにこれ? 幽霊船?」
「そうね、この船は幽霊船と言われているわ。アタシもはじめて入ったけど、この墓場と呼ばれる場所はそもそも時間の流れが違うとも言われているけど、それは出てみないとわからないわ」
「そうなんだ。何も知らずに巻き込んでしまって申し訳ない」
「一緒に行くっていったのはアタシだから。それよりスライム、ラルムはどこ?」
「スライの声がするのはこの先でちゅ」
ライムはドアを指さし、ぴょんぴょんと声がする方へと進んでいくので、私たちはライムを追いかける。
「スライ?」
「もう片方のスライムの名前でちゅ。オイラたちは二つで一つでちゅ。だからお互いの場所がわかるでちゅ。どんなに離れていても会話もできるでちゅ」
ライムは廊下をぴょんぴょんと飛びながらいくつものドアを開けていく。
「そうなんだ」
「でちゅ。変でちゅね。声は聞こえるのにその場所へ行けないでちゅ」
真っすぐに続く廊下のいくつものドアを開けるが部屋らしき場所は見えない。ひたすら真っすぐに進みドアを開けるというのを繰り返す。
何分? 嫌、何十分?
そもそもそんなに船は長くないでしょ?
幽霊船だけあって幻術の中にいるってこと?
ライムもソレイユも現実なの?
「ノア、しっかり意識を保ちなさい。一瞬でも隙を作ったらアタシたちの負けよ」
「ソレイユさん。ありがとうございます」
こんな時は唄を!
私は推しの曲、また会う日を楽しみにという花言葉の意味を持つ「Diamond lily」という曲を唄いはじめる。すると目の前のドアが光りだす。
お読みいただきありがとうございました!
次回もよろしくお願い致します!




