「てへぺろ死」に「てへぺろ転生」ってなんなのよ?!
倒れてからどのくらいの時間が経ったのだろうか。なんだか温泉にでも入っているかのような温かさ。なんだか幸せな気分だ! と思いながらそっと目を開ける。
すると、真っ白な光の中から真っ白な美少女が現れた。
パールのように白く輝く長い髪、差し出された手は絹のように滑らかで透明感があった。バサッと広げた翼からは花々の香りがフワッと広がった。
「あなた、この、世界、には、いられ、ないの。だから、私に、着いて、きて」
私を迎えに来たという白い天使は表情を変えず淡々と言った。
白い天使があまりも美しいので思わず「キレイだね」と言うと、白い天使は表情を変えないまま、いきなり両翼でバシンと私を叩く。叩くとはいったが、羽は柔らかくてフワフワしていた。まるで布団に包まれたような感覚だった。
どうやら私は死んだらしい。寝ずに働けば過労死するのは当然かと思っていたのだけれど……。
私の死因は死神の手違いで死んだという「てへぺろ死」というものらしい。
てへぺろ死⁉ ってなんだよって思ったけど「てへ、間違って死なせちゃった! ので、同じ世界に戻せないからとりあえず別の世界で残りの人生楽しんでちょ(てへぺろ転生)」ということらしい。異世界転生には少し憧れがあったけど、まさかこんな形で死ぬなんて思ってもいなかった。
ということで、死神からバトンタッチされた白い天使とやらに連れられて天国というところに来ている。
天国。どこもかしこも真っ白な世界。壁やドアや窓まで真っ白で眩しすぎて思わず目を細めたくなってしまう。窓の外を見ると青空と雲がみえるのでここが室内ということが認識できる。大広間にはたくさんの半透明な人間たちが真っ白な椅子に座っていた。
天使はこちらを向きながら椅子を指差す。
「えっと、ここに座ればいいの?」と聞くと無表情で白の天使は頷く。
「それでここでどうすればいいの?」と聞くと今度は天井の方を指差す。
すると、雨雲のような灰色のモクモクしたものが天井にあった。その雲をみていると名前に変化した。名前が描かれた者は専属の天使に連れられ、雨雲より上にある天井のドアから出て行った。
「要するに名前が出るまでここにいればいいってことね?」と聞くと白の天使は頷き、奥へと続くまっすぐな廊下を飛んでいった。
しばらくして、私の名前が現れた。と同時に白の天使が目の前に現れる。天使はそのまま俺の腕をそっと掴み天井のドアへと向かう。ドアを出ると空にたくさんのワームホールが見えてくる。色んな世界へと繋がっているのだろうか。どのワームホールも個性的な形をしておりカラフルで大きさも異なっている。
「これ、全部ワームホール? キレイだね」
「キレイ?」と白い天使は立ち止まる。
「え? だって、これ色んな世界への入り口でしょ? そう思うとワクワクするし、色んな世界があると思うとなんか感動しちゃうよ」
「そんな、こと、言われ、たの、はじ、めて」と白い天使は少し微笑んだ。
白い天使は私に景色を見せているようにゆっくりと上昇していく。そして上半分が青、下半分が白のワームホールへ入り込んだ。
ワームホールを抜けると地球のように地面と海があるが、空が海で海が空の世界が見えてきた。海という空、空という海にはドラゴンや魔法使い、天使や妖精などの翼があるものたちが飛んでいる。飛べない者たちは海という空を逆さ船で移動している。私の今までの常識が通じない世界へと辿り着いた。
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