不思議な街・エトランジュ⑤ 人魚の唄
次の日の朝。リルとルイと一緒にソレイユの元へ行くことになった。
「ノア、これをつけてみて」とリルからメガネとワイヤレスイヤホンのような耳につける物を渡される。
「これはメガネとイヤホン?」と聞くと「見た目はね。でもそれを付けて周りをよーく見て聞いて」と言われる。
メガネを通してみる世界は私に見えている世界とは違っていた。人々の本来の姿と表情が見え、本当に言っている言葉が聞こえてくる。メガネをかけずにみるとここの人たちはなんでいつも笑顔なんだ? というくらいに笑っている印象だった。しかしメガネを通してみると人々は笑ってはいなかった。言葉もお世辞や都合の良い言葉だけが聞こえていたがそうではなかった。誰もが不満でいっぱいなのにそれに気が付かないという人々。それが魔法のせいだと思うととても怖くなった。
「どう? ヤバくない?」
「これが本来の街の姿なんです」
双子は悲しそうな顔をして、手をギュッと繋いだ。
「これが魔法の力なのか」
「そうだよ」
「これが人魚の唄の力です」
「人魚はね、人のココロを惑わす力を持っている」
「でも本当はその効果は唄っている時だけのはずなんですが」
「ソレイユは人魚の国の六人娘の末っ子なんだけど」
「他の人魚より能力が高かったのです」
「だから一度、ソレイユの唄を聞くとね」
「幻覚の世界に入ったままになってしまうのです」
「事情はわかったよ。ボクに出来るかわからないけどソレイユのところへ行ってみよう」
「ありがとう。ノアにしかお願いできないんだ」
「ありがとうございます。星たちがノア様ならと言っております。是非、お力を」
双子はそう言って深々と頭を下げる。
***
雲の上なのに山が聳え立ち、その山々の中に湖がある。湖の一角が入江になっており、その半分が大きな洞窟がえぐられたような形でドーム状のホールのような形になっている。湖の唯一の日陰になる場所。そこにソレイユは住んでいるという。ソレイユは太陽に憧れて太陽の近くに行ったが日差しが強すぎて太陽の下で暮らせず、この日陰になっている場所に常にいるらしい。私たちはそんなソレイユがいるという湖の入江近くまでやって来た。
「じゃあ、はじめよう!(はじめましょう)」と双子は声を合わせる。
リルは人魚がいる入江に行き「シエルエトワール・グランデ・フラム」と呪文を唱える。すると湖の表面に大きな炎が上がる。炎に気がついたソレイユは「あー」と大きな声を出し、炎を消し去る。
「アタシにこんな魔法は効かないわよ!」と言いながら入江から湖が広がる場所へと逃げようとする。ソレイユが湖の中から出てきたところにルイが「シエルエトワール・メリュジーヌ」と呪文を唱えると竜の精霊が現れ、ソレイユを拘束し身動きを取れなくする。
「見習い魔女のおチビさんたちは甘ちゃんね! アタシを捕らえたいなら体ではなく口を抑えるべきだったわね」とソレイユは高い声を出し、ルイを真っ白な球体に閉じ込める。そして低い声を出し、リルを真っ黒な球体に閉じ込める。そして、ソレイユは余裕の笑みを浮かべる。
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