転生前のお話
私は笑皆愛、二十三歳の社会人一年生。
みんなを笑顔にするっていう名字で、愛し愛される子にとつけられた愛という名前とは真逆の人生を送ってきた。
白い肌に黒い髪、金色の瞳で生まれてきた私は皆を笑顔にするどころかその場にいるだけで怖がられ、私に愛と言う名前をつけた両親は愛の違いで離婚をした。名前負けというより運が悪い名前といってもいいかもね。
私は夢がある。
同性の友達を作ること。
友人とお洒落してお出かけをして
可愛くて美味しいスイーツを食べに行って
お互いの食べ物をシェアして
一緒にショッピングをしてファッションショーして
お揃いのものを買って身につけて
嬉しいことがあったら一緒に喜んで幸せを二倍にしてハグして
悲しいことがあったら一緒に悲しみを半分こしてハグして
喧嘩をする時は思いっきり言い合って仲直りしてハグして
あれ? なんかハグばっか?
海外ドラマのみすぎかしら?
友達を作るのってフツーの人にとっては難しいことじゃない。でも人の目を見て話すのが苦手な私にはとても難しいことだ。親にもよく言われた「話している人の顔見て喋りなさい」と。私にはこれが出来なくて、誰かと話していても目を見る、顔を見るということが出来なかった。子供は純粋だから顔見て笑顔が出来ないと「この人に無視されている。嫌われている」と認識してしまうようで私には仲のいい友達が出来たことがない。
そんな私にも生き甲斐がある。それは推し活をすること。推しのために生き、推しのために仕事をしているといってもいいくらい、私は推しのことだけを考えて推し活を最優先にして生活をしている。推し推しいっているがリア恋勢ではない。
ちなみに推しはたくさんいる。唄を歌う世界中のアーティストたち。時代やジャンルも幅広く聴くけど、最推しはイマドキって感じの音楽。私の世代の音楽は音と歌詞が物語にようになっているモノが多い。だから私はそんな音楽の映像を作る仕事に就いた。私も大好きな音楽の世界を作る一人になりたかったから。そして趣味を仕事にしたら同じ趣味友達が出来るんじゃないかと期待したんだけどね……そうは上手くいかない。
やっぱり現実と理想ってかけ離れていて。噂には聞いていたんだ。この世界がとても忙しくて時間に追われるということを……。美味しいものを食べる時間も寝る時間もないけれど、それでも私は自分の好きを楽しんで仕事が出来ている。それだけで幸せだから自分の体がどうなっているかなんて考えたこともなかったんだ。
会社で二徹をして、もうすぐ起きてから三日目の朝がやってくる。ホットコーヒーを飲みながら二十一階からみる朝日がキレイだなと思っていると突然目の前が真っ暗になり、そのままバタンと大きな音を立てて倒れてしまう。体は動かないのに頭はハッキリしている。落としたコーヒーは茶色の水たまりを作り、頬を温めてくれる。遠くに見える朝日の光はだんだんと広がっていき、ピンクや黄色などの明るい色味も増していく。見えて温度も感じる。だけど体だけが動かない。そうか体が活動限界だったのかな。そんなことを考えていると急に眠気が襲ってきて、そのまま目を閉じた。
お読みいただきありがとうございました!
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