オハナのアロハ
ラルムの話では願いを叶える石『アルコンスィエル』を作れる種族はわかっているがどの街にあるかまではわからないらしい。ブルードラゴンは条件によって幻の泪を作り出せるが、それが何かまで知る者は少ないようだ。そのため人間の街では幻の泪が何かわからず高値で売られていた。アルコンスィエルを知っている者も少なく、アルコンスィエルになる石の存在や価値を知らないものも多い。
この旅は砂漠の中で小さなカケラを探すようなもの。
今更だがクエストで幻の泪の依頼をしたのはラルムであった。この依頼の真の目的はチョウチンアンコウの頭部のイリシウムにあり、その御礼として幻の泪を渡すということだったらしい。ラルムなら一人でチョウチンアンコウのモンスターくらい倒せるようだが、力の加減が難しいらしく、最悪洞窟を破壊してしまう。その懸念から冒険者ギルドのクエストとして依頼をしたそうだ。
それで今があると思うとなんだかラッキーというかミラクルというか。これも私の魅力極フリの力なのかはわからないけど、魅力というのがこれからの旅でどう役に立つかドキワクと心配でいっぱいです。
「さて、僕に乗っていく?」とラルムがドラゴンの姿に変身する。「気持ちは嬉しいけど、それだと旅の楽しさが減っちゃう気がするから先ずは歩いてか荷馬車に乗ってはどうだろうか」と提案をしていると「ノアの気持ちはわかった! けど背中を見て」と言われ背中の方に向かうと、全員ラルムの背中の上に乗っている。
「師匠! 師匠が座る場所はここっす」とロゼに案内されラルムの背中に座る。目の前には対面になったエトワール、斜め前の左右にはこちらを向いて座るルヌとロゼ、背中の左右にはアムールとアンジュが座っている。
なんで星型になっているの? それより皆、こっちを向いて座るとか緊張する? というかプレッシャー? うーん、視線がすっごく怖いんだけど? なんでこうなった?
「えっと、皆で同じ方向を向いて座らない?」と聞いてみる。
「これは公平なオハナで決めたのだ。そして一番に勝った私は特等席を手に入れたのだ」とエトワールは目を輝かせて私をみつめている。
「オハナってなんだ?」
そのままの感じだとお鼻かお花だよね?
「オハナを知らないのか?」とエトワールが驚く。
「ああ、すまない」
「オハナの元々の意味はどんなカタチでも家族という意味らしい。そして手で六人の家族を表したりもする」と言って手で家族のカタチを作ってくれる。
「今言っているオハナはジェスチャーのことで、三つの手の形で勝ち負けを決めるものだ。三つの手の形はこうだ」とエトワールはグーの手の形、ルヌはパーの手の形をし、ロゼは親指と小指の二本を挙げてハワイの挨拶であるアロハの手の形をしている。これは私の世界で言うジャンケンなのか!
「オレのこの拳を握る手がゼロ、ルヌの開いた手がサンク、ロゼの小指と親指を出した手がアロハだ!」
ん? アロハって言った? 言ったよね? 他の異世界人がジャンケンを伝えてピースをアロハにしたのかな? ハワイの人だった? ハワイ好きの日本人?
「ゼロはアロハに勝つっす。ゼロはアロハより強度があるからっす。サンクはゼロに勝つっす。ゼロを包み込むからっすね。アロハはサンクに勝つっす。アロハに挟まれたら身動きが取れなくなるっすね」とロゼはジェスチャー劇をしながら教えてくれる。
「勝ち負けの意味は諸説あるから、ロゼが言ったのはその内の一つなんよ! とりあえず意味はいいとしてクジを作るより簡単な決め方なん。皆、これをよく使うんよ」とルヌ。
「そうなんだね! わかったよ! 三人ともありがとう。じゃあ席は、今回はこんな感じで行ってみようかな。改良の余地というか目的地に着いたら今後のことを考えよう」と言うと、皆嬉しそうな表情をみせる。
今日の私はそんなに魅力的なのかしら? にしても居心地がなんとも。それより! ジャンケンがこっちの世界にもあるのね! 他にも色んな共通点があって面白いかも!
「ノアさま!」とアンジュの声がする後ろを振り向くと「私がノアさまのお背中をお守りしますからね」とアンジュはニコニコしながら鉄槌を背負っている。
「後ろは任せろ!」とアムールはロングソードを抱え、アムールの髪である蛇たちはそれぞれが小さい刃物を口に咥えている。
なんだろう。背中がとても安全なんだろうけど……選択肢をミスったら殺されてしまうんじゃないかというプレッシャーを感じるのは気のせい?
お読みいただきありがとうございました!
次回もよろしくお願い致します!




