それぞれの想い(後編)
「私はノアさまに出会って人生が変わりました。私自身も変わりました。だからノアさまの存在、ノアさまの唄を広めるお手伝いをしたいです」とアンジュは真剣な眼差しで私を見つめる。
アンジュは女性だがドワーフ族のためどちらかというと男性に近い見た目をしていた。ヒゲを生やし前髪で顔が隠れ髪はボサボサ、しかも無口。店では大きな音をたて行動し豪快な食べっぷりを披露していた。ある時、アンジュがビアマグを落としたので拾おうとするとお互いの頭がぶつかってしまう。
私は慌ててアンジュの前髪を上げ、怪我がないか確認をする。アンジュは転生前の私と同じ黄色の瞳をしていた。同じ瞳の色だと見つめていると、アンジュが「恥ずかしいです」ととても可愛らしい声で話した。その時はじめて女性だと気が付いた。失礼なこととわかっていたけど身なりを整えたらとてもステキなのにと思った私は「とてもキレイな瞳ですね。前髪で隠しちゃうなんてもったいないです」と言ってしまう。
それから数日経ってヒゲを剃り前髪を切ったアンジュが店を訪れる。アンジュは「あ、あの私、可愛くなりたいんです! もっと可愛くなるアドバイスをください!」と言われ、アンジュの可愛さを引き出そう大作戦ということで色んなアドバイスをして、今のアンジュの外見になった。自分に自信を持ったアンジュはよく喋るようにもなった。
「オレも彼女たちと同じだ。ノアのおかげでオレは人と話せるようになった。感謝している。だからオレに出来ることは何でもしたいと思っている」とエトワールは微笑みながら両手を伸ばし、私の手をギュッと握る。
エトワールはヴァンピールだが人を襲ったり人の生き血を飲むことはない。大量出血など緊急事態の時は許可を取り生き血をもらうことがあるようだが、そんなことは滅多にないそうだ。他の種族にそう説明しても距離を置かれるのが日常で、彼は私と同じで友達を欲しがって色んな人に声をかけていたが避けられていた。
そんな彼を見て私は友人になろうと声をかけた。エトワールが「どうすれば友人ができるのだろう」と言うので、先ずは見た目を変えるように伝えた。絵に描いたようなヴァンピール、黒い服に黒いマントでは怪しさしかない。牙も怖がられるので隠すようにした。怪しい笑い方を自然な笑顔になるように練習したりと雰囲気を変えることで、人と変わらぬ姿となり人と話せるようになった。
「師匠! オイラは師匠と一心同体っす! どこにでも付いていくっす」とロゼはキラキラ笑顔でガッツポーズをする。
ロゼは行き倒れになっているところを助けたら、母親のように慕われ懐かれたという感じ。ウェアタイガーはこの世界では希少な生き物らしく、本来はその種族で暮らす場所から外に出ることはないらしい。ロゼは記憶がないらしいが、常連客から聞いた噂では貴族などがウェアタイガーをペットとして飼うことがあるらしい。もしかしたらそれでロゼは人の世界にいるのかもしれない。彼を探している家族がいる可能性もあると思い、この旅で彼を一度故郷に連れていってあげたいと余計なお世話かもしれないことを考えている。
いつか皆に本当のことを話せるようになりたい。
そう思いながら私たちはこの街を後にした。
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