ブルードラゴンの谷② 想いの力と唄声
◇◇◇
「僕の夢はね、人が暮らす場所で暮らすことなんだ。だから人の姿になれるように頑張って練習するんだ」と小さなドラゴンはドラゴンと人の姿に変身をする練習をしている。
「なんでそんなに人間の世界にこだわるの? ここで暮らしていけばいいじゃない?」
「小鳥たちの囀りで目を覚まして、それから窓を開ける。太陽の光に挨拶をするとそよ風が木々や花々の香りを運んできてくれる。そんな朝を迎えてみたいんだ」
「私たちはドラゴンよ。私たちをみると高く売れる商品としかみない奴らと暮らすなんて危険だわ」
「それでも僕は今いる場所が嫌いだし、いずれ病気で死ぬなんて生き方は嫌だ。せっかく生まれてきたんだ。好きなことして自分にあった仕事というのをやって、たくさんの友人達とお酒を飲んで朝まで語り合う。そんな生活がしてみたいんだよ」
「ドラゴンは長命なのよ。人の世界に行ったら友人たちが死ぬのをたくさん見ることになるのよ。そんなの辛いじゃない」
「それはわかってるよ。それでも天色の空や星空に憧れるんだ。もっとたくさんのことを知りたい。たくさん旅もしたい。ここにいたら何もなくて退屈だから。僕は人の変身が出来るようになったら外の世界で暮らすんだ」
***
「ねぇ、僕に何をしたの? 苦しいよ、苦しいよ……ぐぁぁぁ」
ブルードラゴンが真っ黒な炎に包まれている。そして焼かれ悶え苦しんで倒れる姿が見える。
◇◇◇
これは夢?
「ノア! ノア!」と声が聞こえてくる。
「ラルム?」
「大丈夫? どこか痛い? それとも怖い夢でも見ていたの? 眠っているのに涙が溢れていたよ」とラルムは涙を流しながら私の両手をギュッと握っている。
「どこも痛くないよ、大丈夫」
涙? 顔に触れてみると涙を流した後がある。さっき見た夢のせい? 誰かの記憶? それとも予知夢? もし未来なら私に何かするようにとの暗示だろうか。逆に過去であれば私が見たことにどんな意味があるのだろうか。
「ごめんね、無理をさせて。ごめんね、ごめんね」
ラルムは私に抱きついて泣きじゃくる。よくみると顔は青ざめ目の下にクマがあり目が真っ赤だ。泣いていたから? それともずっと寝ていないとか? 正直、何が起きたかわからないけど倒れてからの記憶はなく、今目覚めたってことね。
「心配させてごめんね。それより唄った後の記憶がないんだけど……」
「多分ね、全身全霊で唄ってくれたんだと思う。だから全ての力を使い果たして唄い終わった瞬間に倒れちゃったみたい。あれから3日も眠り続けたんだよ」
「え? そんなに?」
「そう。おかげでカノアは元気になって飛べるようになったよ、ありがとう。そうだ! 皆に起きたことを報告してくるね」とラルムは立ち上がり走ろうとするが体力の限界なのか足元がフラフラとしてしまう。
「ラルム!」
「大丈夫、ちょっと待っててね。食べ物とかも持ってくるから」
「やっぱり寝ずにずっと側にしてくれたんだね」
「愛に比べたらなんてことないよ」とラルムはフラフラしながら笑顔でウインクとピースをする。
私は想いを込めて唄ってみる。
「ダメだよ、まだ寝ていないと!」
私はそのまま唄い続ける。するとラルムの顔色も良くなっていくのがわかる。きっと誰かを想った時だけ唄声は回復の効果が出るのだろう、そんな気がする。
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