ブルードラゴンの谷① 私の唄声にそんな力が!?
気がつくと辺りが暗くなってきて、強風と雨、時々雷が鳴る音が聞こえてくる。ラルムのスピードがどんどん落ちていき、景色がみえるようになる。目の前に広がる景色は火山に囲まれた岩場で辺り一面が灰色の荒れ地。草木は全く生えておらず空は雨雲のような黒い雲に覆われている。
目的地に着いたようでラウムはゆっくりと地上に降りていく。
ここが同じ世界の何処かと思うと世界は広いんだなと思い知らされる。私にとっての普通は通用する訳ないのにね。
「ビックリしたよね? ここが僕の住む『ブルードラゴンの谷』だよ。普通の谷だと水が流れていたりするけどここは溶岩が流れちゃってるね。なんだか見た目は怖い感じかもだけど僕らは人に好かれない生き物だから人が来ない場所があることが幸せに暮らせる場所だったりするんだよ」とラルムは悲しそうな顔をする。
「なんていっていいかわからないけど、ラルムたちが幸せで安全に暮らせるなら悪いところではないってことだね。本当は人と共存できるといいんだろうけど」
「まぁそうなんだけど、ドラゴンの中には変身が苦手なのもいるから難しいんだよね。僕みたいに人のようになれるのは滅多にいないかも。ほとんどがリザードマンに近い感じにしか変身できないんだよね。だから僕らの力不足とも言う感じで」
「そうなんだね」
「それで愛にというかノアだね。ノアにお願いしたいことなんだけど、僕の家族を助けてほしいんだ」
「助ける? 私が?」
「そうそう! ノアが! ノアの唄声が必要なんだ!」
「唄声? でも私が人以外に唄うと攻撃しちゃうよ?」
「よく考えて、僕に唄った時は攻撃にならなかったでしょ?」
「そういえば」
「それは僕に敵意がなくて、敵として攻撃対象にならなかったということなんだよ」
「言われてみれば、そうかも。私もラルムを見た時に敵だとは思っていなかった。可能ならそこをどいてほしいなという気持ちで唄ってた!」
「そういうこと。相手に敵意がある場合、もしくはノアが敵と認識されなければ攻撃にはならない! 多分、気付いていないと思うけどノアの唄声は癒やしの唄声なんだよ」
「癒やしの唄声?」
「ノアの唄声の噂を聞いて食事処にいったんだ。そしてノアが唄いはじめたら皆のココロが癒やされて回復していっていたんだ。もちろん食事処だから飲食で快復はするんだけど、それとは比べ物にならないくらいの回復力だったんだよ。僕は人のココロを読めるだけでなくステータスも見えるからね、これは事実だよ」
「私にそんな能力があったなんて!」
「ということで僕の家族を助けてくれるよね?」
「うん! 私にできるなら是非!」
再びドラゴンの状態のラルムに乗って火山の近くまで飛んでいく。そこにはラルムより大きなドラゴンが全身に大小の斑点をつけ倒れていた。そのドラゴンの横には奥さんと思われる一回り小さなドラゴンと子供らしき小さなドラゴンが寄り添っていた。
「ちょっと待ってね。敵意がある仲間がいないとも限らないから結界を張るね」とラルムは私たちとドラゴン親子を囲うようにドーム型の結界を張る。
「カノア。この人が話していた癒やしの声を持つ人だよ。僕がノアの声で回復したからきっとカノアの怪我ももしかしたら……」
「ラルム、こんな老いぼれのために色々とありがとう。ノアさんもこんな場所に来てもらって申し訳ない」
カノアさんは小さなかすれた声をし、口や体から異臭を放っている。臭いもだけど声だけでも体調がよくないのがわかる。
「ボクに出来るかわかりませんが唄わせてください」と言って私は推しの曲で『虹の架け橋』という、愛する人を想うバラード曲を唄いはじめる。推しを思い浮かべながら推しになりきって魅力の力を最大限に上げるイメージをする。そして想いを込めて歌い上げる。
唄い終わり、カノアさんを見ると斑点が消えていた。私はよかったと安心したのか力が抜けて、そのまま倒れてしまう。
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