通り名は『スライムスウィートゥ』
目の前にいるドラゴンは眠そうに大きなアクビをして後ろ足で頭を掻いている。今のところ攻撃してくる気配はないがその場から動こうとする気もないらしい。ドラゴンを避けて前へ進みたいところだけどドラゴンは洞窟の入り口を塞ぐ形でゴロンと寝転んでいるので前には進めない。そして後ろは洞窟というかダンジョンなので奥に進んでも出口はなくモンスターと戦うことになる。
さて、どうしたものか……。
ちなみになんでダンジョンにいるかというと今はレベルもステータスも多少上がったため冒険者ギルドに登録が出来て、最下位ランクのクエスト攻略をしている最中だったりする。……というかクエストに失敗したので街に帰るところというのが正しい。
今回はルヌ、アンジュ、ロゼと一緒にパーティを組んでいる。何故、前回のメンバーと違うかというと今回は昼間の冒険というのと、私の魅力がどういうわけか通用しない時があり人を集められなかったという二つの理由がある。
エトワールとアムールは夜から朝にかけて仕事をしているので基本昼間は寝ているし、冒険者たちはチップなら弾んでくれるけど一緒に冒険には行ってくれない。なぜなら私には「スライムスウィートゥ」という通り名がつけられている。意味はスライムにも優しい、要するにスライムすら倒せないということ。そのため確実に守るお荷物となるので冒険に一緒に行ってくれるのは前回のメンバーだけなのです。
今回のクエストは『幻の泪』を見つけるというもの。そもそもギルドの人も『幻の泪』というアイテムが何かも知らないらしく「多分、泪ってことはモンスターの泪とかな気がしますー」と結構適当だったし、結局それっぽいモノは見つからず。ある程度まで奥に進めたが、ヒットポイント(HP)がギリギリになってしまったので街へ帰るところだった。やっとのことで洞窟の入り口まで戻ってきたというのにこの現状という訳。
解決策としては!
①ドラゴンを倒す
②他に入り口を探すか、別の入口を作る
③誰かが探しに来るのを待つ
私たちはヒットポイントがほぼなし、回復するアイテムは使い果たしているので②か③の案がよさそうだけど②は体力的に難しいだろうから、そうすると③になるけど当日中に帰る予定だったので食料などはほぼない。モンスターを倒して食べる選択肢もあるけれど料理スキルがないので調理して食べても死んでしまう可能性が高い。
さて、どうしたものか。
皆の視線が痛い。私が誘ったクエストだものね。私の指示待ちになるよね、そうよね。とりあえず無言のままもあれなので。
「僕に力がないばかりにドラゴンを倒せなくて、申し訳ない」と頭を下げて謝ることにする。
「ノアたんは悪くないよん。アタシが弓だけでなく魔法も使えたらよかったのに未熟者でごめんなの」とルヌは涙を流しながら地面にしゃがみ込んでしまう。
「それをいうなら私は魔法が使えないので、こんな私がご一緒して申し訳ありません」とアンジュは泣き崩れる。
「師匠! 今日は攻撃力強化アイテムを持って来てるから、オイラが戦うよ」とロゼはシャドーボクシングをはじめる。
うーん。強化アイテムがあっても体力がなければその効果はないよね、多分。
「いや、それは最後の手段として考えよう。今は外に出れないかを考えよう」と言うと皆も静かに考え出す。
静かに考え事をしていると洞窟の奥からトコトコトコと足音が聞こえてくる。どんどん音が大きくなるので剣を構えながら唄う準備をする。しばらくするとイグアナに羽が生えたような生き物がキョトンとした顔で現れる。少し可愛いなと気を抜いた瞬間、そのイグアナのような生き物を舌でグルグル巻きにしてペロン、ゴクンと飲み込んだ音がする。真っ暗な洞窟の奥からノシノシと二足歩行をする巨大なチョウチンアンコウのモンスターが現れる。
お読みいただきありがとうございました!
次回もよろしくお願い致します!




