今の俺と運命の日
俺の名は空野和也、去年大人の仲間入りを果たしたわりに、お酒をめったに飲まない控えめなオタク野郎である。(インキャ)
年齢は21歳で役職は大学生兼ネットカフェ店員 (アルバイト)で、好きなネット小説が漫画化されたときにはそれをお店に入荷されるようにアンケート用紙の捏造をしたり、店長にさり気なくおすすめしたりなど、好きな作品の普及活動を裏で行っている悪いヤツである。
店長だけでなく他のバイト仲間にも恵まれていて、そこで人生2人目の彼女もできた。
ただ、悩みもある。就活が一向に進んでいないことと彼女との将来についてである。
俺ももう3年生、今のバイト先は楽しいが就職しても給料は微妙だし、彼女がここに就職している以上休みを合わせやすくする為にも俺が別の職場を探すべきなのは理解しているんだが、居心地のよさなどもあってかどうも身体が動かない。
(昔はこうじゃなかったけどなーー。)
今もそれなりに充実しているとは思うものの、逆に言いかえればただ日々を過ごしている感じもする。一言でいえば惰性というやつだと思う。
実際、3年前にサッカーをやっていた頃は逆境の中にいても当時の彼女の支えもあってか、頑張り続けられる根性があり、なんとか結果を残そうともがき続けた毎日だった。
ただ、その結果身についたのはチーム1番と思えるサッカーの実力とのちに不当な理由から、俺の心を毒のように蝕む悔しさだけで、、今尚こうして幸せの中にいるのにも関わらず今からでも、、いや3年、もしくは喧嘩した5年前にさえ戻れれば……。
(京香には言いづらいことだけどな……。)
少なくとも、3年前なら悔しさや憎悪などで大学受験を失敗しないように歴史的瞬間かもしれないけど意地でも試合を観にいかなかった。当時は安全圏内だったし、そこさえよければまだ問題なかったと思う_。
こんな感じで、、俺のサッカー人生は未練や後悔、悔しさで満ちているといえる…。
甲子園で失敗した高校球児とか強豪に行ったりで選ばれなくとも選ばれなかったなりの悔しさで後悔する人は俺と似た想いをしたと思っていい、実際はそのどっちも体感しているからだ_。
観にいった試合は6−0の大敗で、自分より上を誇張するメンバーたちがかつては自分の中学生時代のチームメイトだった奴等が主体のチームに無惨にボコボコにされるという内容で、俺はあのとき引率も兼ねていたのでメガホンを
もった後輩たちといた一方、ライバルだと思って目標にしていた高瀬龍が全国に行ったはずだったのになぜか地元にいて、喧嘩別れして辞めた学校の俺等の前で予想以上の実力を発揮したりして無双するなど、俺からしたらとにかく散々な結果だったわけだが、、
結局、龍はその後1敗も負けることなく勝ち進んだあと、全国優勝を果たし、1度は別の強豪にいったもののやるサッカーが似たような形でありながらも、チームの雰囲気を重視し地元に戻ったという話、古巣を相手にボコボコにして倒した際にはチーム全体として大きく自信を深めたという話や、全国大会のあとは海外には挑戦するななな
人生においてタラレバ論について考え過ぎることは無駄に近く、そこには今だからこそわかる話も多くあるがそこに救いは恐らくないんだと思っている_。
人生、時間を元に戻せたのならこんなに苦労はしない。
今、居場所がなくサッカーをやれない俺が人生のルート1つ間違えた結果であり、そのときもう片方を選んでいただけで大親友の幼馴染みと一緒に日本サッカー界に金字塔を建てたり、あの日本代表の青いユニフォームに袖をとおせてたと思ったらどうなる?
正直、極力サッカーを観ないのは今でも間に合うかも…、、と思ってやる気になりすぎたくないからである。
実際、今からであったって応援してくれたりお金を貸してくれる人がちゃんといれば努力はし続けられるわけだし、英会話はだって大丈夫だから日本よりレベルの低い海外にいったっていい、スコットランドなんて中村俊輔もいたし下のチームにいけば給料ももらえるし、上のステージを目指すステップにもなるしちょうどいいだろう。
結局、、子供がほしいからで龍ぐらいからお金を借りるハメになると思うんだけど、今の幸せを切ってまでやることかもわからんし何となく
経歴的なピークは中学時代で県のトレセンに選ばれていたからというのが大きくあ、るが、要因としてはこのとき今プレミアリーグで優勝争いをしているアーレナルで活躍中の幼馴染みであり3年前までは親友だった高瀬龍がいたからだ。
最後の年こそあいつだけ一個上の関東トレセンに選ばれてしまってからは会う機会を1つ減らしたものの、その頃には親のケータイとかでちょくちょく連絡をとりあう仲になっており、中学卒業後はつるもうということで同じ、地元の強豪校に一緒に入学した。
むこうの監督からのオファーがお互い届いており、入学次から2人して2軍のレギュラーとして抜擢されたし、俺には中学生時代から彼女の心晴もいてこのときが人生の1番のピークだったと思う_。
むこうは俺が当時精神的に病んでいたこともわかっていたので半年程の間、部活をやりながら待っていてくれたりなどもあったがむこうは今度は念願叶ってプレイヤーとして部活に参加しており、
どうしても共通の話題がサッカーになることや俺もその頃には今の彼女と良い関係が築けていたということもあって半ば無理矢理に距離を離したが、とにかくサッカーをやっているときが1番かっこいいと言われていた身からしたら、心配ばかりかけていたし、全然カッコつけることもできなくなっていたし、仕方がないの話だったと今でも思っている_。
が……、全く後悔がないわけではない。むしろあるほうだと感じている_。サッカーの話題になったりするとなんとなく考えてしまうことがあったりと我ながら浮気性なのかと思ってしまうくらいだ。
最終的にサッカーを辞めたのが高校3年の最後の冬の高校選手権のメンバー選出から漏れてからである。
その内容もメンバー選考にすら選ばれない完全な空振り具合、心晴は一軍のマネージャーでこそあったものの、試合さえでればそれなりの結果をさししめしすことが出来たと思うし、話をきかせることで自分への誇りをなんとか保ててたと思う。
当時の俺はよくしてくれる仲間こそいたものの、数はなんとなく少なく半ば日常的につまはじかれており、後輩達からも一定の評価は得ていたものの感覚としては美人マネージャーの心晴となぜか付き合えている、ルックスもまぁまぁのサッカー上手いのに何故か上やコーチたちに嫌われている、謎の先輩くらいの評価だったと思う·_。
後輩たちも、なんとなく気に入られたやつとか仲良いやつはコーチや上のチームにいる奴らがそれっぽく注意して距離を置くよう言われたりなどがあったが、
なんとなく大会で結果がでなくなり目立たなくなったチームのトップがこんな感じなのかいまいちわかっていなかったり、接している半分くらいのメンバーが最後にチャンスくらい与えるだろうと思っていたみたいだが結果はかなりの惨敗…、、三軍のメンバーにすら選ばれず、(試合をする。)
悔しい思いをしながら受験勉強を名目にすこし早めの引退をし、黙々と勉強している俺に対しある日履歴書にかかせるのだから後輩たちの引率にこいとわざわざ地区予選で呼び出しの連絡……。
俺からしたら、なんでお前等無能を応援しなきゃならねえんだよ引退までいたでいいだろと思いながらも、声出しをやらなくていいというのと心晴への顔見せにとの口実も含めての呼び出しに嫌々参加した俺だが、、
試合結果のスコアは 衝撃の 6-0 ····。
俺は唯一の親友の話を聞かずに俺は求められる以上のプレーができるはずなのにも関わらず、嫌われていたことや身長を含めたフィジカル的な問題も含めて三軍落ちを味わっており、応援になんぞ行きたくはないものの、内申書のために泣く泣く頑張ると
他県の強豪校に転校したはずのあいつが俺の中学時代の仲間が多く集まる地元の普通校に再度転校しており、県大会を賭けた
龍は高校生活最後の高校総体で、全くの無名校を全国大会優勝に導くと同時にその大会で得点王とMVPを同時獲得したのち、アーレナルと3年契約を結びいきなりの海外挑戦を慣行。
その年こそはチームが優勝争いに参加することもなかったものの、年の後半からはレギュラーの温存要員として徐々に出場し存在感を示すと、2年目の今年は優勝争いに加わるチームの新しい原動力としてほとんどの試合でスタメン出場し輝き続けている、今の日本サッカー界の新エース候補No.1である。
思えば、同じ埼玉のトレセンで出会って10年になる。
一緒に過ごした時間なんて他所からしたらあんまり長い時間ではなかったと思うが、小学校、中学校時代はともに別のチームのライバルとして過ごし、一緒にオファーをもらっていった高校では5ヶ月間もの間柄しか一緒に過ごせなかったものの宝物のような時間だったと思う_。
当時は学校生活も練習も死ぬほど楽しかったし、監督にも気に入られていたため2軍スタートで練習に参加しあらゆることが順風満帆だったが、高校1年の夏の終わり、俺達のことを勧誘してくれた監督が成績不振で突如退任してし
監督に不満を抱いていたもののスタイルの修正について考える俺と、やるサッカーのちがいから数名の主力が流出することも含めて転校を決意した龍と俺の意見は真っ向からぶつかってしまい、喧嘩別れに近い形で離れたこともあってかお互い連絡をとることもなくなったその2年後、
具体的にいえば、彼女との学校生活や意地を捨てでも龍の意見を聞き入れるべきだっただろう。家庭環境的にどのみちだったとは思うが、相談の1つやっておけば大学に落ちたのちにでも活きたかもしれない。
あのあと以降もまちがった選択を多くしてきたため、あの頃の彼女とは距離を置いて別の今の彼女と付き合っているが、決定的なミスをしてから3年。
未だにひょっとしたらまだやれるじゃないのかと思ってしまう自分がいる_。
サッカーを辞めて3年、最後の公式試合は更に3年も前の話である。
(こんなとこにいなきゃな。)
この学校に入学する前まで通っていた高校では、まともな評価なんか一切されなくともいずれプロになるため、喧嘩別れになった親友を見返すため、期待している彼女兼マネージャーの為にも再び一軍にあがってレギュラーになろうと一心不乱でサッカーに打ち込んでいた。
ただ、その努力はぜゆ功を成さなかった。実際なほうは本来今通っている大学とは全然別のある学校に進学にする予定だった_。
ただ、最後の選手権のメンバーから落ちてなお引退ができず応援に行かされた俺は、
勝手に俺の代表になった奴らが地区大会の3回戦、中学時代の仲間が多くいる高校相手に5-1の惨敗、当時は俺がキャプテンで1番上手く、前監督からのスカウトに応じる形で皆の輪の中から飛びだしたにも関わらずこの結果である。
むこうには喧嘩別れした親友の高瀬龍が合流していたこともあっての負けだが、応援にきたチームメイトのあまりの不甲斐なさや高瀬を除いたかつての仲間の笑顔と成長こそしていたものの皆大したレベルではなく、ただただ高瀬龍の実力が俺の実力より一回り上手くなっていただけに過ぎなかったようにみえたことだけが救いであり地獄だったように思う。
(簡単にやられておいて二度と威張るなよ。クソっ)
考えるサッカースタイルの不一致で
彼女と同じ学校生活を送れないどころか、自分にプレッシャーをかける為、(実は既に一杯一杯だったが)ろくな滑り止めを用意していなかった俺は、以前よりも明らかに劣るメンバーが揃うことが予想される中、一度は部活の練習に参加したもののやはり上手くいかず、部活動への参加を断念することにした。
俺はその後も、地元のサッカーチームへの参加を試みたりもしたが、練習場所が遠かったこともあって両親の反対も強く、練習への参加すら実現には至らないまま、夢を諦め学校に通いながら夢を追う生活ではなくバイトをしながらお金を稼ぐ日々を送ることになった。
バイトをはじめたことがきっかけで新たな友達も増えたが、同じ大学に通う予定だった元マネージャーの彼女とは疎遠になり、そのとき一方的にプロになった親友の連絡先も一緒に消した。
もちろん生半可な関係などではなく、俺の家の場所を把握していたあいつらは俺の家を訪ねてきて考えなおすようにいってくれたものの、俺は彼女やあいつを目の前に悔しい気持ちを抑えられる自信がなく、恨んではいないものの関係の修復が難しいことを伝えたうえで俺たちは離れた。
サッカーを諦めた分、俺は漫画喫茶でのバイトに精をだすようになり、時間をかけてオタクになった俺は、友達の紹介もあってみるみるうちにアニオタへと切り替わっていった。
サッカーの試合みになに消した俺はまた将来の進路で頭を悩ませているが数時間後、バイト帰りに配られていた新聞記事を目にしたことがきっかけで人生の歯車が大きく変わることに俺はまだ
知るよしもなかった。
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ワールドカップ機会中なだけに今、日本ではサッカーがとても人気である!!と言いたいが、、監督の人選や起用法をみるに無能なんじゃないかとの声が多く、ネット上には批判の声ばかりが目につくし、さほど盛りあがりをみせてはいないのが現状である。
ただ、今回の対戦相手はサッカー王国ブラジル。。
想いが振り切れていないせいかたまにサッカーをみると虫唾が走ったりして、あまりサッカーを楽しめなくなっているのが現状だが、、
かつてのライバルにして親友のあいつのA代表デビュー戦、しかもそれがブラジル相手に戦うなら興味も沸くし、こんなに面白い試合もなかなかないだろう。
いずれお互いがなると思っていた日本代表の座。浪人でもなんでもやれたら俺もわからなかったんじゃないかと思うが、今は素直に見守ることに集中しようと思う。
あの頃とは少しちがう熱量で……。
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まず正直、みてよかったのか悪かったのかわからない。
龍は実力を示して活躍したし、他の選手もそれなりに実力を発揮していたように思える。
今の調子であれば、クジ運とか怪我人がでたりしなければワールドカップ本戦で勝ち上がり、べスト8まで残れるんじゃないかとも思うが、、
それでも今日の日本代表の試合結果は……
日本2-5ブラジル
ワントップで試合にでた龍がサイドに流れて起点になったりで1得点1アシストを記録したが、結局守備のところで5点をとられ大敗もいいところといった試合だった。
今は試合も完全に終わりテレビの中継では解説者が得点シーンの解説をしながら日本代表の未来についてポジティブに語っている…。
強豪ブラジル相手に2得点と日本は意外と戦えていた!というが、システム4−5−1で、しかも守備的なメンバーばかりをチョイスして5点も取られたことを半ば放置状態で伝えている。
日本のイメージのよいほうが人気もでてなにかと都合がいいのだろう。
ただ、俺からしてみればそんなことより失点シーンの解説をしたほうが日本を応援している子供や大人のためになると思うんだが、、
まー、にしても5−2である。ぶっちゃけた話をするなら俺がサッカーを続けていてピッチ上にいたのならこっちのほうが4−2ぐらいで戦って
熱中してみてたからか部屋は熱気で充満している。蒸し熱いしアイスもきれてるのでコンビニにでも行くか……。
この10分後、俺は運命の出会いを果たすのだが、、今は夜風が気持ちいいくらいにしか考えていなかった。