幼馴染の婚約者が真実の愛に生きるんだと言って婚約を破棄しました。真実の愛の相手は私の妹で妊娠していました…。
「真実の愛を僕は見つけたんだ」
「え?」
「すまない婚約を破棄させてくれ」
私は真実の愛とやらを見つけたという幼馴染の言葉を呆然と聞いていました。
刺繍をしながら、結婚式はいつにしましょうという私を見てすまなそうに言う彼。
その真実の愛の相手とやらはなんと……。
「お姉さま、ごめんなさい。私のお腹には彼の赤ちゃんが!」
実の妹でした。泣きながら謝られて、両親には許してやれといわれ、子供がいるからしょうがないの雰囲気となり。
私は黙ってそれを許すしかなかったのです。
でもどうして私が我慢しないとだめなのでしょうか?
真実の愛とやらは、妹が彼を酔わせてベッドインしてから始まったようです。
薄っぺらい愛です。
「さてどうしましょうかねえ」
結婚式は妹と元婚約者、私は出席しろという両親と喧嘩をして、旅行にでることにしたのです。
旅行先で、家に帰りたくないとぼんやりと考えていました。
「お嬢さん、飛び降りるつもりならおやめなさい」
声をかけられましたが、そういえばここは自殺の名所でしたわ、私は崖から海を眺めて呆然としていました。声をかけてきたのは父と同じくらいの年の老紳士。
「いえ、飛び降りはしません、海をみていただけです」
「そうかならよかったが、どうしたんだい? ずっと考え込んで」
私は見ず知らずの人ならいいか、とこれまでの顛末を話しました。すると老紳士がそれはひどいねと私に同情してくれました。そうですよね……ひどいですよね。
「復讐をしたくはないかい?」
「したいですけど、でも一応あれでも身内ですし」
「でも腹は立つよね? 結婚式に出ろなんて」
「そうですわね……」
老紳士は裏切った人たちには復讐をすべきだよとにこりと笑います。
いわれているうちに私だけが悲しい思いをしているのがますます何かおかしいと思い出しました。
いえ、私は何も悪いことをしていないのに、私だけが貧乏くじをひいています。
「いい方法があるよ」
「それは?」
「そうだね」
私は老紳士が提案した復讐方法とやらを聞いて、それなら私にもできそうだと思い、結婚式に出席することにしたのです。
「……かわいそう、妹に婚約者をとられるなんて」
ひそひそひそ、出席者の噂話が聞こえてきます。ああそうですわね面白いですわよね。
人の不幸は蜜の味です。
私は親族席に座りながら、ひたすら復讐の時を待っていました。
「両親と姉に感謝の手紙を……」
妹が言ったとき、私は皆が妹に注目をするのを見ました。そして老紳士からもらったあるアイテムを妹に投げつけたのです。
「お姉さま、何を!」
「……あなたはアベルを愛していますか? ミレ」
「愛してるわけないじゃないですかあ、お姉さまのものをとりたかっただけですわ!」
ペラペラと妹が話し出します。え? という顔で皆が妹を見ます。呆然としているアベル。
私がもらったアイテムは、真実の暴露というアイテムで投げつけることによってその相手の真実を数分のみ引き出すもの。
「あははは、お姉さまのあの顔、とても見ていて愉快でしたわ。アベルを取られて泣きそうな顔をしちゃって、小さいころから、えらそうに私にお説教をして、私が人の彼氏をとるたびにだめじゃなのとか馬鹿じゃないですか!」
そんなことだろうと思ってましたわ。ひとのものをとるのが趣味でしたし。皆が呆然と妹を見る中、私は真実の暴露をあるったけ部屋中にばらまきました。
「皆さんの隠し事ってなんですか?」
真実を話すアイテムですから、心に隠している秘密をみなさん暴露し始めます。
阿鼻叫喚の模様を見て、私はハンカチで口と鼻をふさぎながら、ざまあみろと皆の様子を見ていました。
さて、私はここからおさらばして、どこか遠くへ行きましょう。
また旅行に行くのなら、老紳士と出会った北ではなく南がいいかもしれませんわね。
暖かい気候のところにいったら、寒い心も温かくなるかもしれません。
さて、後日、家族が離散し、妹とアベルが別れたと聞きました。
いい気味ですわ。
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