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独白
この世界は既に死んでいる。
三千世界の烏を殺し、振り子は揺れ続けている。
とある哲学者は語った。
『単調さは、世界でこのうえなく美しいかこのうえなく醜悪か、そのいずれかだ』
この世界は後者であろう。
動学を模倣する静的な閉じた系にはこれ以上に語る余地がない。
それならば変えて見せよう。
三千世界の烏を殺して続ける夜ではつまらない。
三千世界の烏を空一杯に敷き詰めればもっと愉快な夜になるとは思わないか。
それでは喜劇を開幕しようじゃないか。
[1]ヴェイユ, シモーヌ(2017)『重力と恩寵』冨原眞弓訳, 岩波書店, p.304