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2不毛な恋はもうやめたい

いったいこれのどこが軽い運動なのだろう・・・屋敷を出てからかれこれ1時間。


とっくに屋敷は見えなくなり、森の中まで入ってきた。


ふつうは貴族の男女が二人で外出なと有り得ないのだろうけれど、レイノルド様は


「近所を回るだけだから私だけで十分、護衛は必要ないよ。」


といって、困惑する我が家の護衛達を置いてきてしまったのだ。


レイノルド様はドンドン歩いて行ってしまい、先の方で止まって私を待つ。


私が何とか追いつこうと必死で近づくとまたさっさと歩いて行ってしまう。


だいたい足のリーチが違うのだから、歩幅を合わせてくれれば先に待ってなくてもいいと思うのに、

私がゼーゼーハァハァいいながら追いつく様子を嬉しそうに見ている。


「レッ レイノルド様、この軽い運動はいつまで続くんでしょうか。」


「いつまで続けようかなぁ。上気した顔に疲れ切って緩んだ顔がまた可愛いね。


必死に追いかけてくれてるような様子もたまらな・・・フフフなんてね。そんな状態で森に入ったら狼さんに食べられちゃいますよ。」


そんな恐ろしい事をいいながら、さっさと歩いて行ってしまう。


これだけ疲れ切っていて護衛もいないのに、もし、狼なんて現れたら絶対食べられてしまう。


これは、姉さまの婚約者とか顔が赤くなることなんか気にしている場合ではない、命の危機だっっ!!


私はもてる気力を振り絞って猛ダッシュしてレイノルド様の腕に縋りついた。


「おっおいてかないでっっ。」


涙目になって縋りつけば、何故だろうものすごく嬉しそうというか恍惚としたような表情で私を見てくる。


「私が大事な君を置いていくはずが無いじゃありませんか。さぁ、この先に泉がありますよ。

そこで休憩いたしましょう。」


そういって、ひょいと私をお姫様抱っこすると優雅なんだけど驚異的なスピードで歩き出した。


私は恥ずかしいやら速すぎて怖いやらで必死に首に手をまわしてしがみついてしまった。


泉は常に地下から天然水が湧き出ていていつも澄んでいて、冬も凍らないので妖精の泉と呼ばれている。


この森は領主の私有地なので無許可での狩猟は禁止されている。


狩猟小屋と森の番人が父によって雇われているが、父が狩猟嫌いなのもあってあまり使われることはない。


それゆえ動物たちがよく繁殖し、人間の手のついてない部分は多い。


泉にはシカなども良く水を飲みに来るのだが今日はいないみたい。


森の木々が水に映り、木漏れ日もキラキラと輝いていて幻想的な雰囲気を醸し出している。


泉のところどころに岩場があり、小鳥が休んだりしている姿もとても綺麗だ。


泉につくとレイノルド様は服が濡れるのも構わずにじゃぶじゃぶと水の中に入っていく。

そして、上部が平らになっていて座れそうな岩の上に私を下ろしてくれた。


「足を水につけると、疲れが取れますよ。」


そういうと私の靴と薄い靴下を脱がし始める。


「レイノルド様、じっ自分で出来ます。」


「あぁ、こんなにカカトが硬くなってしまって、傷もありますね。私の治癒魔法とマッサージで直しますから安心してくださいね。」


そういうと、自分は水の中に入ったまま、エリザベスの足を優しく水につけ、マッサージし始めた。


「誰かに見られましたら、誤解されます。レイノルド様、おやめください。」


いくら、私有地とはいえ見回り役の猟番もいるし、子供たちがこっそり遊びに来てるとも限らない。


「フフフっ誤解されたら私は責任取らなければならいでしょうね。最近、我慢も限界だったのです。

それも悪くないでしょうね。」


そういって、治癒魔法で治してくださった、私の足の甲にそっと口づけをするではないですか。


「ひやぁぁぁああああ。」


あまりの事に驚きまくって這いずって逃げる私。当然足場の悪い岩の上ですから、そのまま体勢を崩して湖に落ちてしまう。


ばっっちゃーん!!


私っ泳げないんだった。しっ沈む・・・しぬぅ。


「  エリザベス・・・ここら辺はそんなに深くないですよ。私が立ってるんだから気づこうよ。」


ばちゃばちゃ必死の私をひょいっと助けるレイノルド様。


よっ呼び捨て!!初めて呼び捨てされた!でもそれよりなにより恥ずかしすぎる。あぁ穴があったら入りたい。


「そんなに必死になって・・・他の人がやってくるのがそんなに心配だったの?でも大丈夫だよ、泉に入るときに泉全体に結界魔法張っておいたから、我々の様子が見れるのは純粋な動物ぐらいだよ」


「そっそういうことは先に教えてください。もうぅ。」


でも泉全体に結界なんて、どんだけ凄い魔力なんだろう。私はやっとこ自分の周りに結界が張れるぐらいなのに。


レイノルド様はナイトの称号を賜るぐらいだから剣技がすごいのかと思っていたけれど、魔法の力も凄いんだなぁ。


カッコよすぎてまた、あきらめるのが難しくなっちゃうよ。


濡れネズミでしょんぼりしている何かをジーっと見ているレイノルド様。

そんなに熱心にどこをと目線をたどれば胸元?はっ濡れて透けてる。


今は運動の時間だからとコルセット外してきたんだった!!


ギャーっと声にならない悲鳴を上げて肩まで水に沈めば、レイノルド様は何事もなかったようにニッコリ笑って


「エリザベス嬢は泳ぎの鍛錬が必要なようですね。カリキュラムに水泳を取り入れましょう。」


と有無を言わせない雰囲気で決定されるのであった。

泉から上がるとレイノルド様の風魔法で服と髪を乾かしてもらい、森の外にでると我が家の紋章が付いてる馬車が止まっていた。


中からからすごい勢いで扉が開くとジェイン姉様が慌てて降りてきて私を抱きしめて下さる。


「エリザベスっ無事だったのね。変態に何もされてない?」


「ジェインお姉様ったら、レイノルド様が付いてくださってるんですよ、変態なんて出るはずないじゃありませんか。

森まで歩いたのでレイノルド様が疲れた足を治癒魔法で治してくださったり、泉に落ちた時は助けてくださいましたよ。


そうだ、今度から泳ぎも教えて下さるんですよ。」

安心させようと微笑むと、ジェインお姉様は複雑そうなお顔で、


「二人っきりで出かけたって聞いたときは心臓止まるかと思ったわ。


レイノルドがついにご乱心かと・・・

まぁ、いいわ、詳しくは馬車の中で教えて頂戴。さぁ帰るわよ。」

と馬車に乗せてくれたので帰りは楽に帰宅できました。


馬車の中ではジェインお姉様とレイノルド様の妹指導について熱い議論が交わされた。


「なんで令嬢に水泳指導が必要なのよ。あんたの欲望丸出しじゃない却下よ却下。」


「失礼な、君は泳ぎの重要性を認識していないな。エリザベス嬢が誘拐されて川やら海やらに投げ込まれたらどうするんだい。

新婚旅行で船に乗った時に転覆の危険だってあるかもしれないだろう。


勿論、私が助けるだけだが・・・不必要な技術なんてないんだ。」


「ドレスが水に透けた姿が見たいだけでしょ・・・。」


「私の教育方針に文句をつけるなら、君との約束を反故にさせてもらうぞ。私の本心はいつも一つなんだ・・・」


「痛いところを・・・わかったわ、確かに水の事故は怖いし、エリザベスに水泳の指導を受けさせましょう。

でも私も付きそう事と、服装は私がデザインした水着を用意させるわ、水着の完成まで森に入るのは禁止よ。」


「水着とはなんだ?まぁいいだろう。暖かい時期に訓練したいの早めに完成させてくれ。」


小声で怒鳴りあうという器用なことをしているジェインお姉様とレイノルド様。

いくら、婚約者とはいえ本当に仲が良くないとここまで言い合えないだろう。


私をダシに言葉の応酬を繰り広げるお姉様達はやっぱりお似合いで、胸がチクチクしてくる。

こんな風に二人の仲の良さを水泳指導のたびに見せつけられるのはだいぶつらいんですけど。


せめて3人きりにならないようにしなくちゃ。


屋敷につき、馬車から降りても二人はなにやらコソコソ話を続けていた。


「婚約してからそろそろ6年だ・・・いい加減  ごにょごにょ。」


「わかってるわ、私も焦ってはいるのよ。でもごにょごにょ。」


「あいつもグダグダ何やってるんだか、私がいっそのこと」


「それはやめて。彼の意志を尊重したいの。」


「だが・・・ごにょごにょごにょ」


きっとレイノルド様は結婚を急ぎたいんだと思う。

だってこんなに仲がいいのに6年も婚約中なんて長すぎだ。


多分、王宮の仕事に侯爵様のお手伝い、さらに私の家庭教師なんかしているんだもの、

時間が取れないことが原因なのかもしれない。


私が早くひとり立ちしなければいけないんだと思う。

もうすぐ私は社交界デビューだし、そうすれば私も他に好きな人を見つけて諦められるかもしれないし、

結婚式には笑顔で祝福できるかもしれない。


そうしたら、レイノルド様とこのように頻繁に会えなくなるし、ジェインお姉様も家を出てしまうのね。

とやっぱり悲しくなってしまうのだった。

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