火蓋の上下 22~コリとファル。そしてムル
『はよ!食べ!まだお前を死なすわけにはいかんのじゃ!』
『赤子扱いしおって‼』
コリはディオマンシに、砕いた木の実を匙で口にふくませていた。
『いらん!いらん!こんなもの!』
ドン!ドン!
『コリはおるかい?』
『おっ、その声は?ファル?』
『扉を開けな!』
コリは付き人の一人に扉の錠をはずすよう促した。
『コリ様、申し訳ございませんでした。ただいま戻りました。』
後ろから、マンサ、ムルそれにハラとドルンが入って来た。
そこには椅子に縛られた王ディオマンシがいた。
木の実を口の中でモゴモゴと動かしながらこちらを睨みつけていた。
『おーおー、可哀そうにディオマンシ。口の中のもんは美味しいか?』
ムルがそばに寄ってディオマンシの頭を撫でた。
ぺッ!
ディオマンシは更に砕かれた口の中の木の実をムルの顔に吐き出した。
『ほー、勇ましい。さすが、元王じゃ!』
『元だとぅ‼』
ムルはもう一度頭を撫でた。
『バカにしおって!!』
コリはファルを耳元まで呼び寄せた。
『ファル、カマラは?』
『殺った。』
『あとは小奴だけか。殺っちまわないのかい?』
『まだ、待ってください。』
『何か理由でもあるのかい?』
『ディオマンシはフランス軍が近くまで来ている事を知っていますか?』
『いや、小奴にはまだ何も。』
『ありがとうございます。コリ様。では、ここからは、わたくし一人がフランス軍と対峙しますので、
このままディオマンシの隠れ家の方へ。マンサがご案内します。』
『隠れ家はいいが、一人でフランス軍と戦うというのか!?』
『左様です。ですので、コリ様はゆっくりと隠れ家でお寛ぎ下さい。』
『意味がわからん。正気か?』
『いつ現れるかわかりませんので、急ぎ隠れ家へ。』
『コリ、ファル、もう少し時間をくれ。』
ムルが二人に声をかけた。
『何でしょう?』
『よく聞いてくれ。わしはディオマンシなぞどうでもよい。見に来たわけでもない。』
『??』
『もう、小奴は王でもなければ、ましてやジョラの民にも相応しん。』
『確かにそうだが。』
コリは大きく頷いた。
『そこでだ、、』
ムルはハラとドルン、それにマンサの方に顔を向けニコとした。
3人も頷きながらニコとした。
『おい!お前ら!さっきから何をコソコソしておる‼ 早く縄を解け‼』
『あら、ディオマンシのおじ様、それは縄ではなく、腰ひもですことよ。』
ディオマンシはコリの付き人にも頭を撫でられた。




