火蓋の上下 15~音
『それがね。梁が落ちちまってさ。』
ファルは天井から床をなぞる様にめで追った。
『どうしてッ? 支えている柱も大きくて頑丈そうだし。』
『見てごらん。この切り口。わざわざ切断してある。これがディオマンシの椅子をバアァァンと。』
メッサがそう言うと、ヘレが続けた。
『縄がね、ほら、梁の上を通ってあそこの物見の部屋の床下へと。』
ファルは首を傾けた。
『何かの細工?からくり?』
『ニジェじゃなっ。』
ムル爺が割って入った。
『ニジェはここの荷役をしておったんじゃろ? サニヤに聞いたぞ。他にいないではないか。』
『しかし、この細工は大仕事。一晩でやらねばなりません。』
メッサにそう言われたムルは首を縦に振った。
『話は繋がったようじゃな。ドルンから聞いた話の一味じゃ。』
ファルも大きく頷いた。
『しかしメッサ殿は感が鋭い。梁が落ちただけでそこまで読み取るとは。』
ハラが口を挟んだ。
『メッサ殿にはアンテナとやらが付いておるからの。』
『ムル。なんだい?あんな手とは?』
メッサは聞いた
『あんな手ではない、ア・ン・テ・ナ』
『一つ聞いてよろしいか?』
ムルはメッサに尋ねた。
『何をだい?』
『メッサ殿は、風の音も水の流れる音も聞こえるであろう?』
『もちろん。』
『では、月の音は? ガラクシアが流れる音は?』
『もちろん聞こえますとも!耳をこうしてすませば』
メッサは右の耳たぶに手をあてた。
『サラサラと星の流れる音が、、皆には聞こえておらぬのかい? 私は毎晩それを聞きながら眠りにつくよ。』
『流石じゃ。そう、ガラクシアという天の川は流れておるのじゃ。太陽が真上に来た時には次の夜へと向かって流れておるのじゃ。』
トントン!
ファルがムルの肩を叩いた。
『爺、その話はまたくわしく聞こう。今は急ぎだ。ディオマンシのいる宮殿から一刻も早くコリ様を戻さねば。』
『そうであったな。』
『男衆は皆ここで女衆を見守っていてくれ。宮殿に行くのはオレとハラ、それからドルンも。すでにフランス軍が来ていたら大変だ。様子を見ながら少ない人数でゆこう。あッ、それと、、マンサもゆけるか? コリ様をここまでお連れして欲しい。』
『ガッテン!』
『えッ、お姉ちゃんもゆくの? 心配。』
妹のアフィが下を向いた。
『おい!ファル!わしもついて行くぞ!』
『えっ、ムルはここにいてゆっくりしていてくれよー。』
『ファル、わしはディオマンシとはここの誰より長い付き合いじゃ。とくとこの目で奴のさまを見たい。』
『わかったよ。爺にそう言われたんでは、、
では、5人で。』
『マンサぁ、またいつか一緒にベリー狩りにゆけるかなぁ?』
『ゆけるとも!メッサ様のように、たわわのベリーにも音があるか確かめにゆこう!アフィ。』




