火蓋の上下 10~麻袋
ニジェは、その小窓からエイッとフランス兵のいる部屋に麻の袋を放り込んだ。
重い袋は小窓の寸先に仰向けに寝ていたフランス兵のお腹の上にドシと落ちた。
『ぅギュぅ~』
『うあ!臭せ~‼』
『なんだッ!なんだぁ!?』
他の二つの小窓からも一斉に麻袋が投げ込まれた。
『かせ!』
ニジェは梯子を支えていた二人からすぐさま火の着いた矢を受け取ると、
ギリリり~!
シュッ~!
麻袋を目掛けて矢を射った。
薄闇の部屋に火柱を上げたその矢は見事袋に突き刺さった。
ボンッ‼ ‼
一瞬青い閃光が小窓の外を焚いた。
獣の死骸を詰め込んだメタンガスの塊りの麻袋は、暴発した。
パラパラパラッ
爆発は部屋の壁を崩す程度だったが、火の着いた麻袋はメタンガスと共にメラメラと燃え上がった。 白煙は黒煙にと変わりながら天井まで一気に登っていった。
『うわ~!ギャあぉ~‼ 』
『ゴホゴホッ、ゲボッ~』
さっきまでのフランス兵達の宴は地獄の宴に変わった。
瞬く間に小窓からも黒煙が吹き上がり、中の様子は外からは見えなくなるほどだった。
ニジェは煙にまかれぬ様すぐさま梯子から飛び降りた。
その時であった。
ボンッ‼ バーン‼ バッターン‼
ニジェの隣の窓から投げ入れた5つ目の袋の爆発が、入り口の扉をぶっ放した。
ガタと崩れた扉の上を這い出した黒煙は、溶岩の流れの様に外に漏れだした。
『うあー!苦しいぃ!息が出来~ん!』
その煙の中から一人のフランス兵が口を塞ぎながら、勢いよく飛び出して来た。
『あ~‼』
ゴンッ!
スッテンころりん
その兵は勢いそのまま、頭から一回転して転んだ。
バッターン‼
そして次に飛び出して来た兵も転んだ兵に躓き、その兵に覆いかぶさるようにスッテ~ン!と転んだ。
次から次へと出て来た兵は、ダンゴ虫さながらにクルクルと転がりながら、ドミノ倒しさながらに倒れ、もんどり打った。
ニジェはこうなる事も予測していたのか、塀伝いにあったレンズ豆を、入り口の前に全て敷き詰めていたのだ。
『撃て~‼ 放て~‼ 』
ガーラは入り口の両側に控えていたフラミンゴ兵に一斉に矢を放つよう号令した。
ギギギギギぃ~
シュルルㇽルㇽ~‼
シュル~‼
徐々に黒煙に包まれていくフランス兵目掛け、弾丸の様に矢が放たれた。




